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生き残りかける欧米地域金融(3)独貯蓄銀行――州立銀、核に再編へ。2004/10/19,
支払い保証撤廃、引き金に
ドイツの金融再編の行方が注目を集めている。最大の焦点は国内に数多く存在するシュパーカッセ(貯蓄銀行)や協同組合型の地域金融機関。
「政治依存」色が強いのが特徴だが、「過剰」といわれるだけに、再編・統合は「待ったなし」の状態だ。
2003年末でドイツの金融機関は2465。1995年には3785あり、再編は進んでいる。しかし、なお「供給過剰」の状態に変わりはない。
預貯金50%以上
全体の57%に当たる1396が日本の農協にあたる「ライファイゼンバンク」や、信用組合にあたる「フォルクスバンク」などの協同組合型金融機関。
これに地域密着で顧客を抱える貯蓄銀行を合わせると全体の67%を占める。
貯蓄銀行は州など地方自治体や州立銀行が直接間接に出資しており、「絶対につぶれない」という安心感で地域住民に広く受け入れられている。
例えば預貯金。ドイツ連邦銀行の調べでは、全体の50.8%が貯蓄銀行で、協同組合型が30.0%とこれに次ぐ。預貯金のほとんどは地域金融に向いている。
貸し出しの面でも、地域金融の強さは際立つ。住宅ローンのシェアは貯蓄銀行が29.3%と最大。
これに商業銀行の21.7%が次ぐが、協同組合型も18.4%。貯蓄銀行や協同組合型は全国に合計3万カ所近い本支店を持つ。
強力な店舗網を武器に、ドイツのリテールで圧倒的な影響力を持ち続けている。
来年の7月以降
「リテールの雄」ともいえる地域金融機関を揺さぶっているのが、州立銀行に対する州政府保証の撤廃問題だ。
現在、全国に13ある州立銀行(ランデスバンク)に対して州政府が支払い保証しているが、この保証制度が欧州連合(EU)との申し合わせで2005年7月19日以降撤廃されるのだ。
民間金融機関と競争条件を一定にするのが狙いだが、保証を背景にぬるま湯につかってきた公的金融機関、とくに貯蓄銀行や協同組合型金融機関にとっては試練となる可能性が強まっている。
すでに貯蓄銀行同士、ライファイゼンバンク同士の合併は相次いでいる。合併で顧客ベースを拡大する一方、支店の削減や人員の圧縮で効率化を狙っている。
破たん時の責任分担など共同で保証する組合組織を、責任分担に応じた「出資」に切り替え、株式会社化するケースも増えている。
貯蓄銀行四位のフランクフルト貯蓄銀行は民営化を終えた一例だが、財政難に苦しむフランクフルト市は、保有する株式の売却を検討している。多くの州で、州立銀行を核に地域の貯蓄銀行を吸収する案などが検討されている。
保証撤廃の影響を真っ先に受ける州立銀行の改革も動き出した。
州内の金融機関の吸収で州立銀行最大手にのし上がったバーデン・ヴュルテンベルク州立銀行(LBBW)は、州立銀行9位のラインラント・プファルツ州立銀行(LRP)の買収で基本的に合意。
2003年にはハンブルク州立銀行とシュレスウィヒ・ホルシュタイン州立銀行が合併、HSHノルトバンクが誕生した。
大手も国内重視
これまでは投資銀行業務にウエートをかけてきた大手銀行も、ドイツ国内のリテール重視に重心を移し始めた。
ドイツ銀行も2004年9月の機構改革で「ドイツ経営委員会」を新設、ドイツ国内でのリテール強化を打ち出した。
支店閉鎖や人員削減など合理化が進んだことで、リテール事業の損益分岐点が大きく下がり、リテール事業を巡る収益環境は大きく変化した。
ドイツ政府は再編を強く後押ししている。シュレーダー首相は金融界の大会などで、繰り返し再編の重要性を強調している。ここ数年の間にドイツ国内の金融地図が大きく塗り替わるのは間違いなさそうだ。
(フランクフルト
=磯山友幸)
【表】ドイツの主な州立銀行
順位 銀行名 総資産
1 バーデン・ヴュルテンベルク州立銀行 3233
2 バイエルン州立銀行 3134
3 ウエストLB※ 2562
4 北ドイツ州立銀行 1936
5 HSHノルトバンク 1716
6 ヘッセン・チューリンゲン州立銀行 1394
7 ノルトライン・ウエストファーレン州立銀行 1050
8 ベルリン州立銀行 926
9 ラインラント・プファルツ州立銀行 656
10 ザクセン州立銀行 552
11 ブレーメン州立銀行 324
12 ザール州立銀行 165
(注)ドイツ銀行協会作成の銀行ランキングから州立銀を抽出。総資産は2003年末、単位億ユーロ。※はノルトライン・ウエストファーレン州立銀行から分離