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米国中西部ネブラスカ州。地平線までトウモロコシ畑が広がる世界有数の穀倉地帯で、今夏以降、「金融」をめぐって大騒動が起きている。
ネブラスカを本部に中西部四州を営業範囲とする農業協同銀行「FCSアメリカ」が突然、外資への身売りを表明したのがきっかけだ。同行は連邦農業信用制度(FCS)傘下にある。日本でいえば、有力農協が系統から一つだけ抽出されて外資に買収されるのに等しい。「前代未聞」の買収に名乗りを上げたのはオランダの農業系統の中央金融機関ラボバンク・ネーデルランドだ。
買収総額14億ドル
ラボバンクとFCSアメリカが七月に合意した買収総額は十四億ドル(千五百億円)。ラボバンクの子会社になる代わりにFCSアメリカの出資者である農家に六億ドルを分配。さらにFCSアメリカに資金支援し、預金も保証してきたFCSからの「脱退金」として八億ドルを提示した。
一人当たり百五十万円の臨時ボーナスを手にする五万人の出資者は大喜び。腰を抜かしたのはほかのFCS傘下の農業銀行と政治家たちだ。これが先例になれば、百年近くにわたって農業セクターへの資金供給の要となってきたFCSが空洞化しかねないためだ。
ラボバンクによる買収を阻止しようと、隣接するほかの農業銀行が対抗買収提案を出し、民主党のダシュル上院院内総務(サウスダコタ州選出)が「外資による買収承認には慎重な検討が必要だ」と議会で主張、事態は混とんとしてきた。しかしラボバンクも一歩も引かない構え。B・ヘムスカーク会長は十月ワシントンに乗り込み「米国事業の強化は我々の戦略の柱だ」と訴えた。
傘下農協は黒字
民間銀行から融資を受けにくい自国農業を支援するため主要国には農林中央金庫や仏クレディ・アグリコルといった有力な系統金融機関が存在する。だが、ラボバンクの戦略は異色だ。米国のみならず、オーストラリアやニュージーランドなど海外の有力農業国で積極的なリテール事業を展開しているのだ。
ラボバンクの海外戦略強化には理由がある。ラボバンクは傘下に地方農協(現在、三百二十)を抱える。原則として地方農協が百万ユーロ(一億三千万円)を超える融資をする際にはラボバンクが承認する。またオランダ中央銀行から委嘱を受け、地方農協の検査もしており、事実上の支店網に近い。酪農や園芸で有名なオランダ農業は近代化・合理化が進み、先進国には珍しく競争力を維持しているため、傘下の地方農協はすべて黒字経営だ。足元が強固なので、海外に目を向ける余裕がある。
105期連続増益
ラボバンク・グループはオランダ国内で農業金融の八五%のシェアを握るだけでなく、中小企業金融で三九%、住宅金融で二六%と最大手。市場規模が小さいオランダにとどまっていては、同行が誇る「百五期連続増収増益」という記録の更新はいずれおぼつかなくなる。
「系統金融機関として新しい国際決済銀行(BIS)規制にどう対応すべきか」「格付けを高める秘けつは何か」――。今年四月、農林中金の上野博史理事長は、オランダ・ユトレヒト市のラボバンク本部を訪れ、助言を求めた。
ラボバンクにはもう一つ、知られた特徴がある。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とムーディーズの双方からトリプルA格を得ている、世界で唯一の民間銀行であることだ。自己資本比率はティア1だけで一〇%を超える。
ラボバンクの債券は、特に投資先の格付けを重視する日本の年金や生命保険会社の人気が高い。高格付けを背景に低利で資金を調達できる。一方、株式会社ではないので配当負担はない。目標に掲げる「世界一の農業銀行」に向けてラボバンクは着々と歩みを進めている。
(ロンドン=佐藤大和)
=おわり