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Re: 人間行動学の本質的な部分 如往さんへ
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投稿者 如往 日時 2005 年 4 月 12 日 05:31:45: yYpAQC0AqSUqI
 

(回答先: 人間行動学の本質的な部分 如往さんへ 投稿者 乃依 日時 2005 年 4 月 06 日 23:34:23)


 乃衣さん、こんにちは。
 先ず、レスすることが遅くなりましたことをお詫び申し上げます。ここ5日ほど、体調を崩してふてっておりました。


 >問題解決の糸口は、人間行動学の本質的な部分にあるということに同意いたします。

 いつか時をとらえて乃衣さんが同意される旨を語っていただければ嬉しく思います。

 >つきましては、貴殿のおっしゃるところの「人間行動学」とは、どのような理論に基づくものなのか、お示しいただきたく思います。

 乃衣さんの知的欲求レベルを満たすような回答になるか心配ですが、以下に触りのようなものについて述べてみたいと考えます。

 現在「人間行動学」という名の学問が体系化された学際的な一分野を確立しているのか、寡聞にして知り得ません。私が人間行動学と語ったときの心性は、人間の行動に関わる動機性一般といった漠然としたもので、「学」としての体系的な基盤を意識したものではなく、したがって、ある一定の理論に基づくものではありません。ですから、むしろ“人間行動論”もしくは“人間行動の動機性に関する探究”といった方が適切かも知れません。
 雑談板12にてCarry That Weightさんにカミングアウトしています通り、私の学部時代の専攻は実存(主義)系の哲学で、一年で辞めることになった専修(修士)課程は社会心理学だったのですが、今日では「行動科学」といった心理学の分野があり、その基礎的部分を構成する実験心理学の科学的なMethodを習得してはおりません。また、分子生物学の知識はじめ現代思潮に関するものは、70年前半以降の学問と離れて後は主に書物等から得たものを基材に世過ぎ見過ぎの傍ら思考実験を繰り返してきましたが、未だに体系化ができ得ずにいます。ですから、かなり限局的でコメントすることで済まされるアジェンダならばまだしも、自身の中で理論的に纏まっていないものを断片的に開陳することはたとえインターネット上であっても憚れると感じています。
 しかしながら、「人間行動に関わる動機性」という観点では、私自身ここ阿修羅で今までに何人かの方と交信して来た内容を振り返ってみますと、かなりのものがそこに収斂していると感じています。尚、今回ワヤクチャさんとの交信でも話題に上りました、「生産諸手段の構成員による分有」=「生産諸手段の協同体(協働体)所有」が「人間行動に関わる動機性」にどの程度寄与するのか明確ではないと感じていますし、労働者の意識調査に反映させること等によって検証していかなければならぬ課題だと思っています。

 ところで、私がこの様な問題意識を懐くことになった内的な契機は、サルトルの著作によって人間存在の被投性という問題を自覚したときでした。サルトルにはアンガージュマン[engagement]に見られるように直ちに投性に転換でき得るとし、それを受けとめる情況を社会主義社会に見出そうとする楽観主義がありました。一方、後に触れることになるハイデガーは被投性に拘るあまり、投性ついては慎重であったように見受けられました。ハデガーは人間が投げかけていく先に、そうした人間の当為を受けとめるものとしてdie Heimat(故郷、郷土、故国)なるものを想定していたようです。私は、それをやや生物学的あるいは生態学的に“Matrix”と措定して、阿修羅では主に愚民党さんやマルハナバチさん宛に持論を展開していきました。
 さらに最近では、人間(人類)の生存の動機性に係わるものとして、対称性[Symmetric=Matrix]の視点から反対称性[Anti‐symmetric=人工]という非対称性[Non‐symmetric=一神教]を捉える場合、如何なる反対称性[Anti‐symmetric=人工]がこの非対称性[Non‐symmetric=一神教]が有するダイナミズムを受けとめることができるのか、究極的には対称性[Matrix]の大いさが反対称性[人工]のダイナミズムをどこまで受けとめることが可能かと云ったものが本質的な部分としてあると想像しています。けれども、乃衣さんもおそらくお気づきのように、私の非才ではその先になかなか進めていけないのが実情です。
 最早ある一定のプロトタイプ的なコンテストに倣って物事を読み解く時代ではないと語ったことがあります。それよりも、各人が自ら出合ったParameter(事、モノ、人)を基材に自らをFunctionにして思考や試行を繰り返しつつ、事象を捉えようとする営為こそ枢要なことであろうと考えています。インターネット上では自らが馴染んできたコンテクストの転換を図ることは容易ではないでしょうし、またParameterの総てを精査することも難しいでしょうが、他者の応答関係によって自身が用いているParameterの再点検は可能だと考えています。その点において、私も乃衣さんの何か役に立つことがあれば嬉しく思います。
 以上、体調不良を言い訳にしつつ、また断片的なものでお恥ずかしい限りです。

 また、会いましょう。

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