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江川詔子ジャーナル (2005/02/10)
「新聞・テレビを殺します」 〜ライブドアのメディア戦略
意図的に無視をしているのか。それとも、大したことはないと高をくくっているのか……。
ライブドアのニッポン放送株買収を巡る大手メディアの報道を見ていると、堀江貴文社長のメディア戦略について、「既存メディアとの融合」というだけで、私が見た限りでは、どこもまともに取り上げていない。株取得の経緯など企業のM&A(合併と買収)という側面ばかりに焦点が当てられ、”あのライブドア”が新たな”騒ぎ”を起こしたという点にばかり興味が集中している。中には、堀江氏の目的を、売名行為や株価つり上げによる利益というふうに矮小化して印象づけるような論調もなされている。
堀江社長の真の狙い
買収時の裏話も興味深い。が、メディアにとってもっと大事な問題を忘れてはいないか。堀江氏の狙いは、「既存メディアとの融合」などという生やさしいものではない。
私が昨年12月6日に堀江氏にインタビューをした際、彼は次のように断言している。
「新聞とかテレビを、我々は殺していくんですけど、自分たちが(新聞やテレビを)持ちながら殺していった方が、効率がいいかなと思って」
彼は、意識的に「殺す」という刺激的な言葉を選んでいた。40分ほどのインタビューの中で、同じ言葉はもう一度出てきた。
「(新聞・テレビなどの既存メディアが)殺されるのは間違いない。どうやって延命しようかってことばっかり考えているんですよ」
堀江氏によれば、報道はいずれ、新聞・テレビからインターネットの世界に移行していく。しかし日本の場合、そのスピードが遅い。インターネットより、まだまだ既存メディアが信用されてもいる。
ならば、今まだ信頼度が高いとされているメディアを持つことで、ライブドアの会社としての「信頼度」「格」を上げていく。それによって、本来の事業でもある金融関係のビジネスに活用していきたい。同時に、インターネットのメディアとしての信用度や利用を高めていく。そうすれば、新聞などの既存の媒体は"死んで"いくことになる。ただ漫然と"死"を待つのではなく、新聞・テレビなどを自ら持つことによって、そのノウハウや影響力を吸収し、そのうえで既存メディアの"臨終"を早めていく。
これが、堀江氏の基本的な考え方だ。
だから、既存メディアとの「融合」も、共に永く繁栄していこうという発想ではない。最初の時点では、自分が既存メディアに「浸透」していきながら、最終的には既存メディアを「吸収」していこうという考え方だ。
堀江氏のメディア界への挑戦は、今のメディアのあり方そのものを、根底から崩そうとする試みだ。その第一歩が、ニッポン放送株の取得で、ここを足がかりにフジテレビという大メディアへの「浸透」を図っているに違いない。
人気が全てを決める
では、彼はどういうメディアを作ろうとしているのか。
インタビューが行われた時点では、今回の株取得の話はかなり進んでいたのだろう。放送局を持つ構想については、聞いても「言えません」と繰り返すばかりだった。
私自身が紙媒体に親しんでいるところもあって、話は主に新聞を題材にして進んだ。
ライブドアは、「市民記者」を募集し、自らのサイトのニュースに自前の記事を載せ始めている。その規模を拡大し、既存メディアの情報も取り込みつつ、ニュースサイトを充実させていくつもりだという。そして、新聞を発行し、そこでアクセス数が多い記事を紙面に載せていく。人気のある記事は大きく扱い、そうでないものは載らない。その扱いは、もっぱらサイトの読者の人気ランキングにより、新聞社の価値判断は一切入れない。
「人気がなければ消えていく、人気が上がれば大きく扱われる。完全に市場原理。我々は、操作をせずに、読み手と書き手をマッチングさせるだけ」
そうなれば、確かに新聞社の意図的な情報操作はできなくなる。その一方で、埋もれていた記事の発掘、少数者の声などは表に出てこない。が、堀江氏は「いいじゃないですか、それで。そういうもんじゃないですか、情報って」「読者の関心が低いゴミみたいな記事を無理矢理載せたってしょうがない」と頓着しない。
ただ彼は、そのメディアで流される報道の内容には興味はない。メディアを持ちたいのも、金融など本来のビジネスに必要だ、という考えから出発している。
「報道の使命」など、報道に携わるものの"志"に関しても、それが「思い上がり」「自意識過剰」につながると、バッサリ切り捨てる。
ユーザーの関心度だけが、掲載の基準となる。彼が作ろうとしているのは、そういうメディアだ。
"志"の功罪
堀江氏は、既存の新聞が、見出しや記事の扱いの大小による「情報操作」「価値の押しつけ」をしている、と批判する。
自身に対する報道にも、その点で相当に不満を感じているらしい。
確かに私も、私自身や、自分がかかわった事柄に関する新聞報道に不満を感じることはしばしばある。
最近では、法務省が発表した監獄法改正に関する報道がそうだった。私は、法務省に提言を行う行刑改革会議の一員を務めていた。今回の改正案は私たちの提言をも踏まえて行われている。そこでは、受刑者の人間性回復と行刑の透明化に主眼が置かれ、そうすることで再犯防止など社会の安全・秩序維持に貢献していこうという観点から議論がなされた。
なのに、朝日新聞が一面トップで、他社より一日早く載せた記事(こういうのを、果たして"スクープ"と呼べるのだろうか?)にデカデカ書かれた見出しは、こうだった。
<刑務所で子育て容認>
あたかも刑務所が母子寮と化すかのようなこの記事は、読者に今回の改革の本質を見誤らせ、単に「受刑者に甘くなる」という印象を与えてしまったようで、私はその影響を危惧する。
また、堀江氏のメディア戦略を載せないことも、何かメディアの特別の意図が反映されているのかもしれない。
上に記したような彼のメディア構想は、私だけが特別に教えてもらったものではない。私のインタビューの後、彼はメディアの団体(確か新聞協会といっていたと思うのだが……)に呼ばれて講演を行い、同じような話をする予定だと言っていた。
あまりにも大きな話なので、こんな若造(あるいは新興企業)にできっこないと思っているのか、それとも、既存メディアにとって好ましくない情報なので無視をしているのだろうか。
が、いずれにしても、現実にニッポン放送株の35%がライブドアによって取得され、既存メディアへの「浸透」が始まっているのだ。彼が何を考えているのかは、むしろ積極的に報じるべきではないのか。
こういうことがあると、堀江氏が言うように、新聞社の"情報操作"を許さないシステムというのは魅力的に思える。
ただ、堀江氏が"ゴミ記事"と呼ぶような、人々があまり関心を示さない記事の中に、実は重要な情報も含まれていることはある。
例えば、政治記事。最近の週刊誌は、政治関連でスクープを載せても、売り上げには結びつかない。テレビや新聞が発売前に報じてしまうからでもあるのだが、総理大臣がどれほど国会で無責任な答弁をしても国民の中からさほど怒りの声が湧き上がってこないところを見ると、政治に対する関心そのものが低下している。
堀江もインタビューの中で、こう述べている。
「韓国のオーマイニュースなんかは政治ネタが多いけど、日本は政治はダメですよ。経済が一番売れる。政治にはあまり興味がないみたい。それはそれで、いいんじゃないですか」
果たして、それでいいのだろうか。
メディアがあえて報じていくことで、曲がりなりにも(現実にそれが十分にできているかは疑問だが)政治を監視する機会は保たれる。
それがなければ、一般の人たちがなんだか分からないうちに、大事なことが次々に決められていく、ということになりはしないか。
あるいは、イラク、アフガニスタン、アフリカ諸国といった外国の情報は、普段は気にもとめずに生活しているけれど、そういうことは知らなくてもいい、のだろうか。
普段、気がつかなかった事柄を、新聞で読んで知るという機会もなくなる。それで、生活するには困らないかもしれないが、人間性や心を豊かにする機会を減らしてしまうことになりはしないか。
また、"志"や"矜持"といったものを、すべて否定してしまうのには、私は抵抗を感じる。確かにそれは、「思い上がり」や「自意識過剰」に結びつく危険性がある
けれど、様々な圧力、障害、誘惑などに直面することの多いこの仕事の中で、報道する者の"良心"が、そういう困難中でも真実を明らかにする原動力になることだって、少なくないのだ。
先般のNHKの"政治家の圧力"問題を内部告発したプロデューサーも、報道する者として黙っていることは許されない、という"良心"が、不利益な取り扱いへの恐怖を乗り越えたのだと思う。
イラクなど戦地の取材をするフリージャーナリストも、もちろん本人の興味があるからこそ危険な場所にも乗り込んでいくわけだが、そこにはやはり「伝えたい」「伝えなければ」という、ある種の"使命感"がある。もちろん、人によってその強弱は違うけれど。
新聞社の中にだって、例えば事件取材をする際、被害者報道をどうするべきなのか、一生懸命考え、悩み、そして勉強している人たちもいる。被害者に話をしてもらってそれを元にいろいろ考えたり討論をする、という勉強会に参加をしている記者たちもいる(それが、最近『<犯罪被害者>が報道を変える』(岩波書店)という本にまとまった)。もちろん、そうした勉強をする時に、会社から手当が出るわけではない。その動機は、やはり報道する者としての"良心"だろう。
普段、人々が気づかない、でも大事な話を掘り起こして提供するのも、そういう"良心"が原動力になる。
そのような記者は、少数に見えるかもしれない。"報道の使命"を盾にして、強引な取材や報道は、今でもある。が、それは"使命"の受け止め方を間違っている。少数であっても、"志"を持ち、ジャーナリストとしての"矜持"を忘れない記者たちは、いい仕事をしている。間違った受け止め方をしている人がたくさんいるからといって、"良心"を否定するのは違う。本来の、"志"が広がっていくことに、私はまだ期待をしたいと思っている。
堀江氏の強みと弱点
ところで、堀江氏の戦略は、成功するのだろうか。
その鍵を握るのは、彼の「若さ」だと思う。
発想が柔軟で新しく、野心があり、行動力が抜群で、エネルギッシュ。
もちろん彼の個性や能力が寄与するところも大きいだろうが、年齢的な若さゆえに、長所を最大限に生かすことができている、と言えるだろうし、若い世代にも受け入れられる。
そのうえ、若い彼には、政財界のドロドロしたしがらみがない。
西武グループの一件など、既存の企業の様々な問題があぶり出されている。読売新聞・日本テレビなどのメディアでも、株の虚偽報告が行われていたことが発覚。
メディアに限らず、既存の大企業はたいてい叩けば何かホコリが出てくる、という印象を持たれている。
けれど、新しい企業にはそれがない。
しかも堀江氏は率直で、つまらないウソをつかない人のようだ。
インタビューの間、何度か放送メディアを持つことについて尋ねたのが、彼は、「言えません」を繰り返した。プロ野球問題の時にも、不利益な話でも、変にごまかしたり、ウソをついたりはしなかった。どうせバレることにウソをついてもしょうがない、という彼の発想は、危機管理という点でも実に理に適っている。が、これを実行するのは案外難しい。
今回の株取得が明らかになって、堀江氏が出演していたフジテレビの番組が放送延期(中止?)になった。フジテレビ側は、「当日の視聴率強化のため」として、ニッポン放送株取得との関連性は否定した。関連がないわけがない。「当社の経営にダメージを与える行為をした人物は出すことに躊躇がある」というのが率直なところだろう。それを隠して、妙に取り繕う。端から見ていると、少々滑稽だが、そういう表と裏、本音と建て前を使い分ける面倒臭さが、堀江氏にはない(ように見える)。
今の時代、新聞をとっていない一人暮らしの若者はかなりいるようだが、インターネットもメールもやりません、という人は数えるほどしかいないのではないか。
これからの社会を担う世代には、表でいいことを言っていても、裏では何をしているか分からない旧世代の大企業より、既存の価値観を突破して新しいことをやろうとしている堀江氏のような存在は支持されるのではないか、と思う。
プロ野球問題でも、若いファン層では、圧倒的にライブドア支持が多かったという印象だ。
そのうえ、若さゆえもあって、学習能力が高い。
近鉄球団の買収は、まずは堂々と名乗りを上げたのに、旧世代のしぶとい抵抗に遭い、理不尽な形でつぶされた。
今回は、情報管理を行い、重要事項に関する拒否権を取得する量の株を取得してから、発表を行った。
このやり方への批判も出ている。
<フジ側の意向を確認しないまま、一方的に株を買い集め、「提携」を求める性急とも言える手法に、ネット業界や株式市場関係者の間でも疑問の声があがる>(2月9日付読売朝刊)
さらに10日付の読売社説では「大株主にのし上がった」「ハゲタカの目」「餌食」などといった強い言葉を使って、ライブドアが用いたような手法を非難し、大企業への警戒を呼びかけている。
では、フジテレビ側の意向を確認したら、スムーズに「提携」の運びになったのか。
ありえない。
旧勢力の抵抗をプロ野球問題で思い知らされた堀江氏は、同じ轍を踏まないために、合法的な別の手段を用いたのだろう。
その一方で、彼の「若さ」が彼自身の障壁になりかもしれない。
彼の行動力やスピード、率直さは、旧世代にとっては、強引、傲慢と映り、必要以上の抵抗や反発を招く可能性がある。
プロ野球問題でも、そうだった。
堀江氏は、ライブドアによる買収は近鉄にとっても悪い話ではないのに、なぜ乗ってこないのか理解できない様子だった。1企業の損得を考えれば、おそらく買収に応じた方が近鉄にとってもよかったのではないか。それをさせなかったものは、何だったのだろうか。
一時、堀江氏の服装のこともあれこれ言われた。堀江氏にしてみれば、清潔なものを着ているし、迷惑がかかるわけではないのに、なぜ文句を言われるのか分からなかったようだ。
彼の価値基準はあくまで「利益」。他者への礼儀、配慮といった心配りには、必要性を感じておらず、むしろ無駄なものと考えているらしい。
そうした発想は、会社全体にも浸透している。私がたった一回インタビューをするまでにも、何度かそれを感じた。例えば、ライブドアが入っている六本木ヒルズは、テナント企業を訪問するのに、当該企業が約束のある人の氏名をあらかじめビルの受付に登録しておかなけれ入れてもらえない。けれど、広報担当者が忘れたらしく、私の名前は登録されていなかった。受付の方から、企業の方に問い合わせもしてもらえないシステム。私は広報に電話をしたが担当者は不在だった。それでも事情を説明して、なんとか入れてもらえたのだが、後からやってきた担当者も含め、ただの一人もこの不手際について「申し訳ない」と言う人はいなかった。おそらく、自分の方から頼んで来てもらったわけでもなく、話を聞きたいというので時間を割いてやる立場なのだから、そんなことを言う必要がない、ということなのだろう。別に謝ってくれないからどうということはないのだが、ずいぶんとドライな人たちだな、という印象を受けた。
一口に「謝罪」といっても、非を認めて謝るという重いものから、軽い挨拶程度までいろいろある。「ごめんなさい」「すみません」「申し訳ない」は、ある種人間関係の潤滑油としても働く。
人によっては、そうした挨拶がなかったり、自分より若い人間が自分よりカジュアルな格好で現れたりすることを、非常に重く受け止めたり、反感を持つ人もいる。
直接、目に見える形で利益は生まないかもしれないが、人間の感情というものは案外バカにできないものである。好感を抱けば損得ぬきに応援したくなることもある。不快感を持つ相手の成功は、たとえこちらが損をしたとしても妨害しよう、という意地悪心がわいたりする。
メディアに関しても、「殺す」とあからさまに言われれば、警戒心を持つだろう。フジテレビだけではなく、既存のメディアが一致団結する可能性もある。そうなれば、堀江氏がやりたいことを実現する障害は、より大きくなるだろう。
プロ野球の参入を果たした楽天の三木谷社長は、相手に警戒心を持たせず、感情を使い方がうまかったのだと思う。彼は、スーツを着、ひげも剃り、言葉遣いも選んだ。自分の目的を達成するためには、それくらいの譲歩はどうということはない、という「大人」の考えだろう。そして、彼は首尾よく参入を果たした。
堀江氏のメディアへの挑戦は、場合によってはメディアのあり方に大きな変化をもたらす。いい影響もあるだろうし、心配な面も大きい。彼の言動が、既存メディアにとっていい刺激になればいいのだが、逆に、新旧勢力の戦争の様相を呈してしまうかもしれない。
彼の「若さ」が、彼にとって吉と出るか、再び凶と出るのか……
今後、堀江氏の動きにも既存メディアの対応にも、当面目が離せない。
堀江貴文・ライブドア社長インタビュー要旨
2004.12.6 am11:00 ライブドア本社にて
――「市民記者」を募集したりして、新しいメディア作りに乗り出しているが、何をやろうとしているのかを伺いたい
「あんまりそんな、肩肘張ってないんですけどね」
――規制メディアのどういう点が物足りなくて、新しいメディアを作ろうと考えたのか
「物足りないってこともないんです。元々は、商売で金融系事業をやっているわけですよ、うちは。消費者金融とか証券会社とか。そこで重要なのは、メディアを持つことですよ。
何故かって言うと、ロイターだってそうじゃないですか。ロイターは元々通信社ですけど、証券取引のシステムを作ったところで大きく伸びたんですよ。それは、ニュースだけ出している日本の通信社との大きな違い。ロイターの収益の9割がロイター・モニター――今はその進化版みたいなヤツになってますが――それが各金融機関にあって、もちろんニュースも流れているんですけど、そこで為替取引もできるわけですよ。
元々為替は相対でヨーロッパの銀行間で取り引きしていたんですね。今の為替取引の原形を作ったのはロイターなんですね。
――ロイターというと、私は戦争の現場などでの取材活動が思い浮かぶが
あそこはコスト・センター。プロフィット・センターは為替部門なんです、実は。
うちもインターネットのロイターとか……(金融情報サービス会社の)ブルームバーグも、債権のリーディングシステムが一番の収益の柱なんですね。マイケル・ブルームバーグは元々メリル・リンチ(ママ )にいた人で、そこのプログラマー(江川注=実際はソロモン・ブラザース証券のディーラー)。彼はシステムを作っているところから、そのシステムを広めるためにはニュースが必要だと、メディアの重要性を認識して、(新しいメディアを)作ったんです。
――経済、金融関係のニュースを発信していく、と。
インターネット時代の金融会社を大きくしていくためにはどうしたらいいのかっていう流れの中で、メディアを持たなきゃいけないっていう話になったわけですよ。発想はブルームバーグさんと全く一緒。
ロイターもブルームバーグも、企業内に情報配信システムをまず設置して、取り引きをそこでしてもらってサヤを抜くみたいなビジネスがメインになっているのは確か。それをやりたくて。
ライブドアはポータルサイトの会社なんだけど、証券もやってる。ユーザーが自然と、証券をやるならライブドア証券で、という流れを作っていきたい。
その中で、さらに信用とか格を上げていくためには、もっとメディア寄りのイメージをつけるのが得策だろう、と。
――では、政治や社会、文化のニュースも扱う?
まあ、おまけなんですけどね。別にそこで儲けようとは思っていない。トントンでやれればいいな、と。
――今までのメディアとの違いが見えてくるのは、もう少し先になりそうか。
う〜ん、まあ。それ(=違い)がメインなんじゃなくて、我々がメディアを作ることがメインなんです。やりたいのは、そこ。
――プロ野球の一件でメディアにいろいろ取り上げられた。そこで不満を感じたことが動機付けになってはいないのか。
全然なってないです。そういうことじゃないんです。
――テレビの買収とか新聞などの紙媒体を持つことに関心は?
それはもちろん関心はありますよ。なぜかっていうと、最終的にはみんなインターネットになっていくんですけど、特に日本は(それが)遅くなるだろうなと思っている。日本人は、未だに新聞やテレビを信じちゃってるんで。ウソばっかり書いてあるんですけど、ハハハハ……
――それを身もって体験したと?
身をもってというわけじゃないけど、他の人の話を聞いていても、やっぱりそうですからね。かなりバイアスがかかっている。
別にバイアスかかってようと、かかってまいと、どうでもいいんですけど、(人々が)信用してるってことは確かじゃないですか、新聞とかテレビを。だから、インターネットに全部いくまでの過程は何年もかかるワケですよ。その間、新聞とかテレビを我々は殺していくんですけど、自分たちが持ちながら殺していった方が効率いいかな、と思って。そういう話ですよ。
今は力を持っているから、それをどんどんインターネットに置きかえていって、これからはインターネットを信用しなさいよ、と。どんどん誘導していくわけですよ。啓蒙していくわけですよ。
――となると、地上波テレビの買収から?
まあ、それはどうなるか、分からんですね。免許とるかも分かんないし。それは分からない。
――具体的に動き出しているんですか。
それは言えない。
――新聞は?
どうなるか分からない。
――新聞を持つことも考えているのか
その(=新聞を持つ)方が信頼度が増すと思うんですよ。バンバン拡販して部数を何十万にするとかは考えてなくて、出してるってことで(信頼を)感じると思う。
――市民記者の位置づけは?
まあ、普通に記事集めて書くだけですね
――せっかく新しいメディアを作るのだから、今までにないものをと思わない?
思わないですね
――今までにないものを作るからこそ意味があるのでは?
ベルに意味なんてかくてもいいんですよ(笑)。意味なんてどうでもいいんですよ。我々の目的は、意味あることじゃないんですよ。新しいものを作ること、意味のあることが重要なんじゃない、我々にとっては。
――市民記者を募集するのは、新しいやり方では?
それも単なるコスト削減策なんですけどね(笑)。
――でも信頼度を上げようというのなら、それなりの質の人を集めないと。
紙(=新聞)を出してりゃ、みんな信用しますよ。そんなもんですよ。
(既存メディアの)記者のことなんて、誰も知らないでしょう?読売新聞も、みんなナベツネくらいしか知らないでしょう?
紙を出して、それが今の紙とそっくりで、例えばうちなんか「東京経済新聞」とかっていう名前にしようかと思ってるんですけど、日経と同じようなロゴで「東京経済新聞」って書いてあって、全く同じような体裁で出ていたら、分かんないじゃないですか。ああなんか格がありそうだな、とか思うでしょ?
――今までにない内容の報道をやりたいというのもない?
ないですね(笑)。いいんでよ、別に。内容が(今までのメディアと)違うかどうかは。それが目的じゃない。内容も、もしかして違ったモノになるかもしれない。ですがそれはどっちでもいい。
――堀江さんの日記には、「メディアのあり方が変わる」と書いていたが、そういう意図はないのか。
そうやって煽った方が、みんな期待感を生むじゃないですか。僕はどっちでも……
――今のメディアではあまり報道されていないことも、インターネットを通じて伝えてういこうというのだと思っていたが。
それは副産物的にそうなるかもしれないですけど、それはどうでもいい。僕にとってはどうでもいい。
――メディアを持つということは、情報を通じて人の考え方を左右する可能性がある。
そうですね。
――そういうことに関心は?
全然ないですね。
今の記者の人は、大マスコミ的な意識っていうか、悪く言うと思い上がって、自意識過剰なところがありますね。
うちに来る人も、大層なことを考えていて、「堀江さんはどう考えているんですか」「ライブドアにとって悪いことも記事にしますよ」と言うんですけど、そんなの勝手にやってよ。わざわざ報道しなくても、2ちゃんねるとかでうちに悪いことは書かれているわけで、見りゃ分かるわけですから。そこにはウソもホントも書かれていて、(ユーザーは)それを自己責任で判断すると。それを新聞に書かれたから本当なのかっていうと、別に本当ではないかもしれない。ある意味、歪曲して、脚色して記事にしているわけだから。
――歪曲?
そうじゃないですか。僕の行っていることだって歪曲されていると思う。私は自分自身にストーリーがない人間なのに、何か無理矢理ストーリーを作ろうとする。私はこういう少年時代を送ってきたから今こうなんたおいうストーリーを作りたがるでしょう? そんなもん、ないんですよ。
――それは、(歪曲というより)書く側の分析でしょう?事実を伝えるのに、話の一部だけを取り上げられて歪曲されたとか、そういうことはあるのか。
ありますね。見出しの付け方ですべてが変わっちゃうじゃないですか。全部読んだら事実なんだろうけど、見出しがそうなっていると、(読者は)なんかそこばっかり見ちゃう。
――2ちゃんねるに書かれていることは、全部本当とは誰も思いませんね
でも新聞に書いてあることは本当だと思うじゃないですか。でも、ほとんど……とは言わないけど、かなりウソが入っているんですよ、見出しとかで。間違ったことは書いてなくても、書き方で読者の受け取り方は変わるわけでしょ。それを分かって書いているわけじゃないですか、記者も。ライブドアはこういう会社なんだ、と記者が思い込んだら、事実を書きながら、そこに思いを込めることが可能じゃないですか。新聞って、みんなそうなんですよ。それって、思い上がりじゃないのっていうことです。
――新聞も、いくつか比較してみれば……
みんな見比べたりしないじゃないですか。そんなことするのは一部のマニア。一般市民のほとんどは、朝日新聞の一面に書いてあることは本当だと思っている。ウソじゃないけど、歪曲されているのに。
――では、朝日新聞をとっている人は朝日新聞をやめて、ライブドアの新聞を見て欲しい、ということか。
それはない。うちはただ新聞を出すだけ、好きな人は読んでね、と。
紙を出していると、それっぽいじゃないですか。紙を出しているのとないのでは、全然違う。
今、インターネットのニュースって、あまり信用しないのに、紙の新聞のニュースって、発行部数がしょぼい新聞でも本当かなって思っちゃう。
――出すからには、こういうモノを出していきたいというのはないのか。
そういうのは、おせっかいですよ。読者は別にそんなもの求めていない。そんなもの押しつけたくもないし。
――編集方針とかはどうするのか。
そんなもん、何もないですよ。
――何もないと……
そう思うのが既成概念。ありのままを出せばいいんじゃないですか。
――ありのままを出すというのも方針ですよ。
方針って言われると、ちょっとアレですけど……
――ありのまま出すといっても、客観報道だって主観が入る。
うん
――じゃあ、ライブドアの報道は、どういう主観が入るんですか?
それぞれじゃないですか。だって市民記者が書くんだから。
――でも、デスクがチェックをするでしょう?
チェックするといってもそれはウソを書いてないかとか、そういうレベルのチェックですから。ウソを書かないというのが重要で、確かめたのかとか、裏を取ったのか、とか。あとは、?てにおは?を直すとか。そういうレベルの話ですから。
――事実が確認されれば、あとはどんな話も載せる、と?
紙面が許す限りですけどね。あとは人気ランキングだけですよ。
――人気?
インターネット(のニュースに)アクセスするじゃないですか。そこで何が注目されているか、と。だいたいの記事は、先にネットに出ちゃうわけですよ。注目度が高い記事はアクセス数が多くなる。それを紙にする時に、見出しを大きくする。紙は一日一回くらいしか出せませんからね。
――新聞はいつ発行する?
まだ決めてない。焦ってもしょうがない、ここまで来ると。紙を出すタイミングは慎重にやらないと。
――新聞を出してもずっと維持するつもりはない、と?
インターネットに置き換わってくれれば。でも、ずっと続けるかもしれないし、それは分からない。
――規制の媒体やフリージャーナリストなどとの連携は?
(同席のメディア担当役員が、フリージャーナリストはある程度使うことを考えているが、規制の媒体の記者とは関係がない、と説明)
やっかいですね、大マスコミ意識があるので構えちゃう。もっと気楽にやろうよって。
悪く言うと思い上がり、自意識過剰なんですね。報道の使命とか言っちゃったりしますものね。
――「報道の使命」というのは思い上がりかもしれないが、そういうのがあるから正確な記事を書こうとか、意味のある報道をしようとかいう動機にもなっている。
それで暴走しちゃう。読売なんて特にそうじゃないですか。平気で個人攻撃するわけですよ。でもみんな信用してるでしょ?あんなひどいヤツが主筆をやってるのに。
絶対にバイアスがかかってますよね。そういうのが、報道の使命なのか……分かんないな。どういう気持ちなんですかね。
野球問題では、どこも明らかにバイアスがかかっていた。読売はうちを潰そうとするし、朝日は盛り上げようとする。明らかに論調っはそうです。で、野球問題が一段落すると、今度は全員で叩きに来ます。来てますよ、朝日なんか特に。
――でも、先日の朝日で大きく紹介されたりもしていた。
中も一枚岩ではないようですね。
権力争いで、何年か後に社長を目指そうとする人は、(うちを)潰そうとする。
――「殺される」警戒感か?
そうでしょうね。殺されるのは間違いない。どうやって延命しようかってことばっかり考えているんですよ。あと10年勤めたら定年だとかいう人は、そうなる人が多い。
そういうのは、下らなすぎて相手にしたくない。お前ら、そろそろ気づけよって感じ。気づかせようとは思わないですけどね。自分で気づきなさいよ、と。押しつけは嫌なんですよ。僕も押しつけられたくないし。
――ある程度の方向性がないと、何でも載せますというわけにはいかない。
いいんじゃないですか。自分で判断して下さい、と。それで、世の中の意向はアクセルランキングという形で出てくるんですから、その通りに順番並べればいいだけでしょ。
――みんなが注目すると大きく扱われるが、埋もれている話を発掘できないのでは?
埋もれていることを発掘しようなんて、これっぽっちも思ってないんですってば。そういうのは情報の受け手、興味を示す人が少ないわけですから。ニッチな情報なわけですから、いいじゃないですか。一応ネットには載せておきますから、(興味のある人が)勝手にアクセスして下さい、と。
――例えば、イラクのこととか、新聞ではもうあまり載らない。でも……
いいんですよ、(そういうことは)みんな興味ないんですから。興味ないことをわざわざ大きく扱おうとすること自体が思い上がりだと思うんです。
――でも、提供されなければ興味もわかないのでは?
そうじゃないと思う。興味がないことを無理矢理教えてもらってどうするんですか? 何の価値があるんですか、そこに。気づかせたら、何かいいことあるんですか、ユーザーの人たちに。気づかせることによって、新聞をとっている人に、何かメリットあります?
――知らないより、知っていた方がいいこともある。
そうですかね。知らないのと知ることで、何か差異がありますか?
――情報を提供しなければ、興味を持つきっかけにもない。
いいんじゃないですか、別に興味を持たなくても。興味持たないと、いけないんですか?
――いけないと言っているのではないが……
じゃあ、いいじゃないですか、それで。そういうもんじゃないですか、情報って。それこそ、押しつけじゃないですか。
――「提供」と「押しつけ」は違う
みなさん「提供」と言うが、(ニュースの)重みづけはユーザーが判断するもので、押しつけられるものじゃないと思いますけどね。それが暴走につながると思うんですよ。思い上がりにつながって。
――ランキングが悪いとは言わない。確かに一面に何をもってくるかは新聞社の判断で、それが押しつけといえば押しつけでもある。
うん。
――そうした記事の大小ではなく、今では記事として提供されないものをランキングは低くてもいいから入れていこうとか、そういうことはないのか?
なるべく入れていこう、とは思わない。操作しようとは思わない。ゴミみたいな記事を無理矢理載せたってしょうがない、ユーザーニーズもないし。
――「ゴミみたいな」とは?
ランキングで読者の関心が低い、関心がない記事をゴミ記事と言った。価値は相対的に低い、ニッチな情報なんですよ。
――フリージャーナリストでイラクなどを取材している人がいても、今ではなかなか大きなメディアには載らない。そういうのを入れていこうとは思わないのか
(この話は)重要だといって、あえて能動的に吸い上げようと? それって、メディアの意思が入っているじゃないですか。意思なんて入れる必要ないって言ってるんですよ。載せたいなら、読者の関心が低い記事にはお金は払えないけど、勝手にウェッブサイトに載せる分にはいいですよ。お金は払えないけど、来るモノは拒まずだから。
ただ、それを紙に挙げる時にはランキングによる。そこのところで情報操作をする気はない。ランキングが一番になれば原稿もありますから、チャンスはありますよ。(そうした記事は)ウェルカムですけど、あえて収集するつもりはない。
人気がなければ消えていく、人気が上がれば大きく扱われる。完全に市場原理。我々は、操作をせずに、読み手と書き手をマッチングさせるだけだから。
――インターネットでは、まだ既存のメディアからの情報を中心に流しているようだが、いずれそういうものはなくして、自前ですべてやるつもりか。
既存のものも残る。でも他は全部配信してくれるのに、読売が載らないのは、あそこはうちに配信してくれないから。すごいでしょう? よくそういうモチベーションが湧くな。
――ラジオに関しては?
……やってますよ。
――新聞はまだ?
何が起るか分からない。
韓国のオーマイニュースなんかは政治ネタが多いけど、日本は政治はダメですよ。経済が一番売れる。政治にはあまり興味がないみたい。それはそれで、いいんじゃないですか。
――役所など、記者クラブに入らないと取材がしにくいところもあるが。
ゲリラ的にやっていく。どうせ入れてくれませんから。そこで(入るための)努力をしようとは思わない。入れてくれれば入りますけどね。でも、任意団体にはあまり入りたくないんですよ。ここに入らないと免許をくれないという所には入りますが。
――放送免許に関しては、動き出しているのか。
それは言えません。
http://www.egawashoko.com/menu4/contents/02_1_data_40.html
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