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2005.1.12
2005年森田実政治日誌[12](1月12日)
カール・マルクスは蘇るか?!
――的場昭弘著『マルクスだったらこう考える』は大変興味深い本である
「歴史は大詰めを欠いたドラマだ。結末は全て、いつのまにか同じ筋書きの繰り返しをたどっている」(ピーター・ガイル『歴史との遭遇』)
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/
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年末、十数冊の新刊書を買い込み、この正月に読みました。なかに『マルクスだったらこう考える』(光文社新書)がありました。著者は的場昭弘神奈川大学経済学部教授。面白い本です。それも飛び抜けた面白さです。同時に大切な内容を含んでいます。
私にとってとくに面白かったのは、的場教授がカール・マルクスを丸裸にしてしまったことです。私がマルクス主義を勉強し、マルクスの著作と格闘したのは昭和20年代から30年代前半でした。10代から20台前半のことでした。いまから50年ほど前のことです。
その頃はマルクスは神でした。神格化されていました。伝記にもマルクスの個人的欠点は見当たりませんでした。的場教授のようにマルクスに好意的な立場をとっている研究者が欠点を含めて丸裸にしたのは、50年前にはなかったことです。
第二に、感心したことがあります。第二次大戦後のマルクスを軸とする思想史を、きわめてわかりやすく、しかもコンパクトに解説していることです。見事だと感じました。
第三に、現在のアメリカ的グローバリズムが横行している世界におけるマルクスの役割と可能性を論じていることです。マルクス主義の現実的可能性について「当面進展する資本のグローバリゼーションに対する抵抗戦線としてマルクスの思想の再構築でなければなりません」と著者は述べています。この記述には説得力があります。日本では、マルクスといえば過去のものという感じがありますが、西欧ではマルクスの再評価が始まっています。マルクス再評価の波は、やがて日本にも上陸することになるでしょう。
とにかく的場教授のこの本、一読に値する本です。
マルクス再評価には論理的根拠があります。一つは18世紀から1930年代までの資本主義の歴史が、21世紀に繰り返される可能性があるからです。18世紀末にアダム・スミスはレッセ・フェール(自由放任主義)を提唱しました。資本主義の自由競争は弱肉強食そのものでした。強者が勝ち、弱者は滅びていきました。自由競争はごく少数の大富豪と大多数の貧困層を生み出しました。資本家階級と労働者階級とが階級対立を始めた時に登場したのがマルクスに代表される社会主義・共産主義でした。西欧における階級闘争はロシアに波及し、第一次大戦中にロシア革命が起きました。ロシア革命の指導者レーニンはマルクス主義をロシア革命に使いました。
アダム・スミスとカール・マルクスの次に登場するのがケインズです。1930年代の大不況に際し、第三の道を提示します。修正資本主義です。
スミスを「正」とすると、マルクスが「反」、ケインズが「合」という形で、修正主義または社会民主主義に収斂したのです。
しかし、1991年にソ連共産主義体制が崩壊し、資本主義対共産主義の戦いに決着がつきました。唯一の超大国となった米国がグローバリズムを掲げて全世界に自由競争主義を輸出します。超大国・米国の圧力は抗し難いものです。全世界に自由主義、競争主義の波が起きました。再び社会主義以前の競争的資本主義が戻ってきました。歯止めなき自由競争は、少数の勝者と膨大な敗者をつくり出します。敗者の数はどんどん増えていきます。人口の圧倒的多数が敗者になります。やがて彼らは、勝者への復讐の戦いを始めます。
このとき、マルクスが蘇生する可能性があります。もちろんレーニン主義、スターリン主義、毛沢東主義の復活は困難でしょう。しかし、純粋のマルクスなら、21世紀の新たな被支配階級の抵抗の思想と理論として蘇る可能性はあるかもしれないと思います。
ニュー・スミス(ブッシュ主義)に対するニュー・マルクスの登場です。この次に、ニュー・ケインズが登場しますと、文字どおり歴史は繰り返すことになります。
ドイツの哲学者ヘーゲル(1770−1831)は「歴史は一度目は悲劇だが二度目は茶番」と言いましたが、ブッシュ主義に始まる抑制なき市場経済→貧困層の反撃→修正資本主義の循環は、文字どおり歴史の茶番ということになるでしょう。茶番の繰り返しを防ぐためには、早期にブッシュ主義を止めることが必要です。人類は悲劇と茶番の繰り返しに終止符を打つべきです。米国民はブッシュ政治の危うさに目覚めるべきです。日本国民は小泉政治の危険性を知るべきです。一日も早く。