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マイケル・T・クレア(著)「血と油―アメリカの石油獲得戦争」アメリカが軍事力で世界の石油を支配することは可能か?
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投稿者 TORA 日時 2005 年 1 月 13 日 16:48:47:CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu86.htm
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マイケル・T・クレア(著)「血と油―アメリカの石油獲得戦争」
アメリカが軍事力で世界の石油を支配することは可能か?

2005年1月13日 木曜日

◆血と油―アメリカの石油獲得戦争 マイケル・T・クレア(著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140810114/250-5534774-8249837

◆経済と安全保障のおおもと

「石油はこれまで発見されたうちでもっとも用途の広い燃料源であり、現代の産業経済の核心を成す」とエネルギー専門家のエドワード・L・モースは言う。これは、まさにアメリカにあてはまる。アメリカでは石油は主要なエネルギー源だし、経済成長の原動力でもある。石油は、アメリカの全エネルギーの約四〇パーセントを提供しており、これはほかのどんな資源より多い(天然ガスは二四パーセント、石炭は二三パーセント、原子カは八パーセント、その他が五パーセントを供給している)。

石油は、産業の動力源を提供し、家庭や学校を暖房し、プラスチツクをはじめとする多様な製品の原料となるなど、多くの機能を果たすが、もっとも重要な役割は交通・運輸の領域にある。現在、アメリカの膨大な数の自動車、トラック、バス、飛行機、列車、船に使われる燃料の九七パーセントが石油製品だ。

大多数のアナリストによれぱ、今後も長年にわたって石油はアメリカの主要エネルギー源でありつづけるという。なぜなら、それ以外のエネルギー源は、あまりに乏しかったり(天然ガス、水力)、高価だったり(風力、太陽熱)、副産物が有害だったりする(石炭の場合は二酸化炭素、原子力の場合は放射性廃棄物が出る)からだ。

それに引き換え、石油は比較的豊富で、費用もそれほどかからず、石炭よりも二酸化炭素の発生量が少ない。そこで、しばらくはアメリカの諸産業や地域社会や交通機関にとって主要なエネルギー源でありつづけるだろう。事実、合衆国エネルギー省の予測では、二〇二五年になってもアメリカの全エネルギー供給量に占める石油の割合は四一パーセントで、今日とほぼ同じままだという。

アメリカは世界に先駆けて大規模な石油産業を築きあげた。ペンシルヴェニア州タイタスヴィルで開発者が石油を見つけた一八五九年に産声を上げたこの産業は、過去百四十五年間にわたり、アメリカの経済成長を維持するのに中心的な役割を果たしてきた。国内の豊富な石油生産のおかげで、ジョン・D・ロツクフェラーの伝説的なスタンダードオイル社などの初期の多国籍大企業が誕生し、エクソン・モービル、シェブロン(現在はテキサコと合併)、アモコ(現在はブリティツシュ・ペトロリアムの一部)、コノコ(現在はフィリツプス・ペトロリアムと合併)、アトランティツク・リツチフィールド(これも現在はブリティツシュ・ペトロリアムの一部)といった巨大企業がそれに続いた。

豊富で比較的安価な石油は、ゼネラルモーターズとフォードとクライスラーの三大自動車メーカーや、デュポンなどの化学企業、大型の航空会社や貨物会社の台頭にも不可欠だった。この手の企業は、過去一世紀にわたって、アメリカの富の多くを生みだし、多数の労働者を雇用してきた。

石油がアメリカ経済の活性化にどのように寄与しているかを余すところなく述べるのは不可能に近い。事実上すべての産業や事業にとって、高速で信頼できる交通・運輸は命綱であるため、手ごろな値段の石油の豊富な供給は、経済の成長と拡大を促す一大要因となってきた。自家用車と安いガソリンのおかげで、住宅団地やショツピングセンター、ビジネスパーク〔オフィスビルや公園、駐車場、飲食店、娯楽施設などからなる複合施設〕と関連インフラをともなうアメリカの郊外生活が実現した。

石油は塗料やプラスチック製品、医薬、繊維をはじめ、多種多様な製品の基本原料を提供してくれる。アメリカの非常に生産性の高い農業も、農機具の動力源や農薬そのほかの重要物資の原料として石油に頼っている。さらに、隆盛を極める観光・娯楽産業も、自動車やバスや飛行機による手ごろな価格の輸送なしでは考えられない。

アメリカ経済で石油がどれほど重大な役割を担っているかは、第二次世界大戦以後の景気後退がすべて、世界的な石油不足とそれにともなう価格高騰に続いて起きていることを思い返せば痛感できる。一九七三年から七四年にかけてのアラブ諸国の石油禁輸措置と石油輸出国機構(0PEC)による値上げを記憶している読者も多いだろう。あのときは、ガソリンスタンドには長蛇の列ができ、アメリカは深刻な経済不況に陥った。

七九年のイラン革命のあとにも、長い行列と経済の減退が見られ、九〇年にイラクがクウェートに侵攻したときにも、短期間ではあったが、同じような現象が起きた。最近では、世界的な石油不足がきっかけで、二〇〇一年から二〇〇二年にかけてずるずると景気が後退したし、二〇〇四年の景気回復が遅れたり中断したりしかねなかった。こうした出来事には、ほかの要因も作用していたことはまちがいないが、どの場合にも経済の減速を誘発したのは石油の不足だった。

経済を活性化させるのが石油なら、アメリカの国家安全保障の上で重大な役割を果たすのもまた石油だ。アメリカ軍は戦場へ兵員を輸送し、敵を攻撃するために、ほかのどの国よりも、石油を燃料とする艦船や飛行機、ヘリコプター、装甲車両に依存している。国防総省は、コンピュータなどのハイテク機器をより進んだ形で利用していると自慢するが、アメリカ軍の根幹を成す兵器は完全に石油頼みだ。豊富で確実な石油供給がなければ、国防総省は遠方の戦場へ兵力を急派することも、その後、補給線を維持することもできない。

これらの要因が絡みあい、石油はアメリカの経済力と軍事力の中核を成している。戦略国際研究所のロバート・E・エベルは二〇〇二年四月、国務省で次のように語った。「石油は自動車や飛行機を動かしているだけではなく、軍事力も国庫も国際政治も動かす」石油は国際市場で売買されるたんなる商品にとどまらず、「幸福や国家の安全保障の決定要素であり、この重要な資源をもつ者には国際的なカを、もたざる者にはその逆を意味する」

石油時代の大半にわたって、アメリカはこの貴重な資源を所有する幸運な国ぐにの列に伍してきた。一八六〇年から第二次世界大戦まで、アメリカは世界最大の石油生産量を誇り、国内の需要を楽らくとまかなうばかりか、しぱしぱ余剰まで出し、それを輸出していた。石油の自給は、アメリカが経済成長を遂げ、しだいに軍事的優位を確立していくうえで、重要な役割を果たした。たとえば、第二次世界大戦中、国内の油田から十分な量の石油を採掘し、自国と主要同盟国の軍隊の膨大な需要を満たすことができた。戦争中に運合国側が便った石油の七分の六をアメリカの油井が供給した。

戦後アメリカは石油を増産することで、自国に大きな繁栄をもたらし、ヨーロッパと日本の経済復興を開始させた。エネルギー省長官のスペンサー・エイブラハムは、二〇〇二年六月にエネルギー会社の役員に向けて行った講演で、石油供給と世界的な覇権とのこの緊密な結びつきを大胆に肯定し、こう語った。「石油・ガス業界の皆さんと、その先輩諸氏は、二十世紀を『アメリカの世紀』たらしめる上で、多大な貢献をなさった」

しかし、このいかにもエイブラハム長官らしい大仰なメツセージは、いくつかの面でたとえどれほど正確であろうと、決定的な問題を秘めている。アメリカの石油は豊富ではあっても、無尽蔵ではないのだ。一九四〇年代末、アメリカは増加するエネルギー需要を満たすために、外国の石油に頼るようになった。その後、輸入石油の占める割合は、ほぼ一本調子で増加している。五〇年代には外国産石油はアメリカの消費量の一〇パーセントだった。六〇年代にはそれが一八パーセント、七〇年代にはその約二倍になった。

しばらくは、国内の生産量も増え、増加を続けるエネルギー輸入の経済的影響をある程度緩和していた。しかし、七二年からは生産量は減少の一途をたどり、以後アメリカは、増大する需要を満たして国内生産量の減少を埋めあわせるために、ますます多くの石油を外国から輸入するようになった。こうしてアメリカは、自国の経済の活カを維持するため、徐々にではあったが確実に外国の石油への依存度を高めていった。エベルの言葉を借りれば、アメリカは、豊富な石油を安全保障と力の源泉とする国から、その逆があてはまる国へと変貌を遂げたのだった。

◆依存の危険

石油への依存が始まると、アメリカの指導者や一般大衆は厄介な状況に陥った。簡単に言えば、石油が豊富にあったからこそ、アメリカ経済とアメリカ軍は、世界を席巻することができたが、さらに成長を続けるためには、より多くの石油消費が必要になる。ところが、アメリカの石油生産量は減少しており、ますます多くの石油を国外から輸入せざるをえなくなる。

現在、世界人口に占める割合が五パーセント足らずのアメリカが、世界全体の石油供給量のおよそ二五パーセントを消費している。このままいけば、二〇二五年の消費量は現在の一・五倍に達する。しかし、国内生産は今より増えることはないから、日量およそ一〇〇〇万バレルの増加分は、よその産油国からの供給でそっくりまかなわなければならない。そして、それらの産油国の内部で起こることには、アメリカはたいした力を振るえないから、各国の政治と経済の継続的安定に命運を委ねる結果となる。

そして、ここにアメリカのジレンマがある。石油はこの国を強くする。一方、外国への依存はこの国を弱める。さまざまな形でアメリカの力を弱める。第一に、不慮の原因からであれ、人為的な原因からであれ、国外で供給がとどこおれば、その影響は免れない。一九七三年から七四年にかけてのオイルショックや七九年から八○年にかけての第二次オイルショックのような供給の途絶は、広範な石油不足や価格の急騰、世界的な景気後退をきまって引き起こす。

外国産の石油に依存していれば、アメリカから国外の供給者の手へ膨大な富が渡ることにもなる。石油価格が一バレル当たり三〇ドル未満にとどまりつづけると仮定しても、今後二十五年間に輸入する石油の代金は三兆五〇〇〇億ドルという、途方もない額になる。政治面に目を移すと、外国産石油に依存すれば、アメリカは好むと好まざるとにかかわらず、外国の主要供給国の指導者たちに、たびたびあらゆる種類の恩恵を与える羽目になる。彼らは石油を売ってくれるだろうが、しぱしばお金以上の見返りを期待する。たとえば、国連での支持や、新型の兵器の譲渡や、軍事力による保護などだ。

アメリカの指導者はそうした要求を入れるのに乗り気でないかもしれないが、石油の供給を促進するためにはやむをえないと判断することが多い。最悪なのは、外国の石油に依存すると、アメリカの安全保障そのものが脅かされかねないことだ。石油をめぐる国外の戦争に巻き込まれたり、自国内にアメリカ軍が入るのに憤慨した政治や宗教の派閥による暴力的な敵対行為を招いたりする可能性がある。

アメリカの歴代の指導者は、このエネルギーと安全保障のジレンマを解決するのに成功したためしがない。アメリカ車の燃費を改善するなどして、石油消費の伸びを鈍らせるために、何かしらの手を打つことはあった。また、アラスカの北極圏野生生物保護区など、自然が保護されている地域に眠る、国内の未採掘石油の開発を提案することもあった。しかし、外国の石油に対する需要を減らすための、持続的かつ包括的なエネルギー戦略を採用したことはかつてない。

そのかわり、外国からの供給の途絶に対するアメリカの弱さを最小限にするために、彼らは石油を「安全保障問題化」する道を選んだ。つまり、石油の持続的供給を「国家安全保障」の問題と位置づけ、軍事力の行使を通して防衛しうるものとしたのだった。エネルギー省長官のエイプラハムが示唆したように、「エネルギーの安全保障は国家安全保障の根本的要素である」第二次世界大戦以来この前提が、アメリカの外交・軍事政策の多くの基礎を成してきた。(P26〜P33)


(私のコメント)
アメリカ政府はイラクに大量破壊兵器が無かったことを始めて公式に認めましたが、イラク侵攻の本当の理由は決して公式には発表しないだろう。しかしながらその理由は誰もが知っているが、裸の王様を見て見ぬふりをしているのだ。しかしアメリカ軍を直接イラクに投入してアメリカは石油の確保に成功しているのだろうか。

アメリカにとって一番大切な国の一つがサウジアラビアですが、だからこそアメリカ政府はサウジの王室と深い関係を結んでサウジアラビアの安全を保証してきた。湾岸戦争では50万のアメリカ軍を派遣してサウジアラビアの安全とクウェートの領土をイラクから奪回した。それだけでも湾岸諸国に対するプレゼンスになったと思うのですが、あえてイラクに侵攻したのはなぜか。

アメリカ軍のイラク占領が長引けば長引くほど、アメリカに対する中東諸国の人々の反米意識は高まるばかりだ。それを押さえ込むためにはより多くのアメリカ軍部隊を中東に長期間駐留させなければならず、その費用だけでもアメリカの国力で賄うことは不可能だろう。すでにイラク国内での反米ゲリラの為に1300人以上の戦死者を出している。それに引き替えイラクの石油の確保には成功していない。

以前の株式日記で国内石油の生産量とその国の国力は比例すると書きましたが、アメリカはすでに1970年代に石油の国内生産のピークを迎えている。その不足分と増大分は海外からの石油に頼ってきましたが、いずれは中東の石油だけに頼らなければならない状況が来る。アメリカドルが下落し始めたのも国内石油の生産のピークと一致している。

ソ連の崩壊もシベリア油田の開発に失敗したためであり、それがレーガンとの軍備拡張競争に敗れた原因だ。プーチンのロシアががいくらがんばってもソ連時代のような国力を持つことは石油の生産量からいって不可能だ。アメリカも中東の石油を支配できない限り世界帝国から没落するのは明らかだ。だからブッシュは勝負に出たが見通しは暗い。

ソ連の崩壊が誰も信じていなかったがごとく、アメリカが崩壊するなどといったら誰からも気違い扱いされるだろう。アメリカにとって石油の確保が一番大切であることはアメリカ国民が一番よく知っている。だからこそブッシュのイラク侵攻に賛成票を投じたのだ。アメリカとしては軍事力で石油を支配するしか他に方法はないと半数以上の国民が思ったからこそブッシュを選んだ。

もし現在のアメリカによるイラク支配が成功しなければ、アメリカはさらに第二の911を仕掛けて徴兵制を復活させて核兵器の使用も辞さぬ覚悟だろう。どちらにしろアメリカは石油の確保に失敗すればソ連の後を追って帝国としてのアメリカは崩壊せざるを得ない。

「血と油」の著者のマイケル・クレア氏はこのようなアメリカの石油依存体制は困難が多いと指摘し、省エネルギー政策を進めるしかないと指摘している。車を省エネ化するだけでもかなりの石油が節約できるだろう。しかしその技術を一番持っているのが日本だ。アメリカではトヨタのハイブリットカーのプリウスが飛ぶように売れている。まさにアメリカが救われるかどうかは日本の技術力が切り札となるかもしれない。

◆「2050年前後にはアメリカ帝国は存在しない」 2003年12月15日 株式日記
http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/769.html

◆米石油帝国の衰退と中国の発展の挫折は近い 2004年3月8日 株式日記
http://www.asyura2.com/0403/hasan34/msg/147.html

◆アラビア・プレートはなぜ石油の宝庫? 2003年2月28日 株式日記
http://www.asyura.com/2003/bd24/msg/640.html

◆ある資源屋の20世紀論 (関岡正弘) 2002年11月26日 株式日記
http://www.asyura.com/2003/dispute5/msg/313.html

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