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(回答先: 40代金融エリートの欲と現実【AERA発マネー】(2004年11月15日号) 投稿者 XL 日時 2004 年 12 月 17 日 01:34:35)
http://www.asahi.com/money/aera/TKY200412140269.html
【AERA発マネー】
日本を漁る外資の貪欲 箱根の有料道路、チンチン電車…
(AERA2004年12月6日号)
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巨大企業や銀行から、地方の公共インフラや行楽地、大学へ。日本を買う外資のターゲットが、よりきめ細かくシフトしている。(AERA編集部・大鹿靖明 岐阜総局・安田琢典)
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行楽日和なのに、尾根伝いの道はガラガラにすいていた。湘南海岸を一望するカーブを縫い、紅葉が始まった山道を進むと、眼下に忽然と芦ノ湖が現れた。神奈川・小田原から箱根を越えて湯河原に抜ける有料自動車道「箱根ターンパイク」は眺めがすばらしい。
東急の創業者五島慶太は戦後まもなく、モータリゼーション到来を見込んで自動車道の整備に乗り出した。日本道路公団発足の2年前、1954年に東京〜箱根間の道路建設免許を申請する。が、東名高速建設という国策が優先され、実現できたのは65年に供用開始された小田原〜箱根間13キロ余など、一部だけ。しかも東名の開業で赤字が続いた。黒字化後も東急グループにとっては傍流の小さなビジネスでしかなかった。
ところが、その潜在的な価値に気付き、じっと注目していた企業が海の向こうにあった。
オーストラリアの投資銀行、マッコーリーである。イタリアのアウストラーダに次ぐ世界2位の道路保有企業で、豪州や欧米、韓国など世界各地で有料道路を買収している。マッコーリーがつくったファンドが今年3月、東急から箱根ターンパイクを約11億円で買い取った。外資が道路を買ったのは、日本では初めてのことだ。
渋滞の抜け道に有望
フランスのルノーによる日産自動車への資本参加や米国のリップルウッドによる日本長期信用銀行(現・新生銀行)買収を皮切りに、外資による企業合併・買収(M&A)は急増の一途をたどる。仲介会社のレコフによると、97年に18件1558億円だった海外からのM&Aは、99〜2002年には毎年1兆円を超え、ついに道路というインフラまでもが対象となった。
マッコーリーは3年前から日本全国の道路を物色していた。
「道路のマネジメントは専門的能力が問われる分野が少ないし、運営コストもそれほどかからない。しかも日本の道路運営はリストラの余地が大きく、マーケティングを工夫すれば、投資に見合う効果が得られるケースが散見されます」
マッコーリージャパンの執行役員で、箱根ターンパイク株式会社の代表取締役を務める橋本武寛さんは、そう語る。
ひそかに市場調査をしたところ、休日に小田原〜伊豆・箱根間を走る車の約70%が国道1号と135号に集中し、箱根ターンパイクのシェアはわずか5%しかなかった。ところが、8月の盆休みに湯河原から小田原に行くには、渋滞の国道135号だと3時間もかかるのに、箱根ターンパイクを使うと53分で着いた。渋滞時の抜け道として大きな市場がある。それが買収の決め手となった。
進入路が分かりにくく知名度に乏しいため利用者が少ないと考えるマッコーリーは、周辺道路に20〜30カ所の案内標識や電光掲示板などを設置する準備を進めている。眺望の良さを生かして遊歩道を設けたり、展望台を整備し、山頂のレストランをイベントも開ける施設に改装したりする。
箱根ターンパイクは、車好きの間では適度なカーブと急な勾配で知られ、自動車メーカーも新車のテストに使っている。
「新車の試乗会や発表会、自動車雑誌の撮影などにもっと使ってもらい、知名度をさらに上げたい」
と、橋本さんは言う。
85年創業のマッコーリーは投資銀行としては後発。小さくても確実に収益を上げられるインフラに特化し、道路のほか空港も多く所有している。日本でも道路買収を続ける予定で、今も20件前後の引き合いがある。日本には私鉄が経営する有料道路が多い。大手私鉄から道路や鉄道の売却話が持ち込まれる可能性もあるという。
まちづくりにも意欲
路面電車にはすでに外資参入の動きが表面化している。1911年から名古屋鉄道が運行している岐阜市内外の4路線(総延長36.6営業キロ)に、フランスの大手交通会社コネックスが突然、名乗りを上げたのだ。
岐阜市は資産を行政側が引き取る代わりに、運行を民間に委託する「公設民営」方式での路線存続を探り、一時は岡山電気軌道(本社・岡山市)が意欲を示した。が、市側と名鉄側で線路や乗降施設の譲渡交渉が物別れに終わり、来年3月いっぱいでの廃止が確実視されていた。それだけに突然現れた救世主に、市民からは驚きと期待が交錯する声が上がっている。
コネックスは、上下水道など都市インフラを総合的に経営する仏ヴェオリアグループの企業で、欧州各国や北米など23カ国で鉄道やバス、フェリーを運営する欧州最大の交通会社だ。
そんなコネックスがなぜ、極東の島国の、しかも人口約41万人の地方都市に目をつけたのか。
「200万人以上が住む名古屋市に近い岐阜市は、観光資源が豊富です。フランスでも岐阜市と似たような地方都市の公共交通を再生させた実績があります」
日本での代理人ピエール・コプフさんは進出の背景をそう語る。
フランス第2の都市リヨンに近い人口約40万人のサン・テチエンヌ市で高速路面電車を引き継ぎ、再生させたというのだ。そこでは公共交通網を中心にしたまちづくりにも意欲的だ。岐阜市でも、参入が実現すれば、車両を新型に一新するだけでなく、11月15日に市や岐阜県などに提出した事業計画書には盛り込まれなかったものの、
「夜でも映画館や劇場に人が集まり、ウインドーショッピングを楽しむ市民であふれる街にしたい」
と、まちづくりの提案も視野に入れる。
大学再進出の機運も
水道事業にも、外資は参入をもくろむ。2002年の水道法改正で水道設備の運営を民間に委託できるようになったためだ。
前出の仏ヴェオリアグループは丸紅と合弁会社をつくり、水道の検針・料金徴収を専門とする企業を買収。主に関東で料金徴収業務に乗り出した。英国のテームズウォーターも、トルコや中国で水道事業を運営するノウハウを生かし、三井物産と組んで日本市場への参入を狙っている。
とはいえ自治体側にいまひとつ「公設民営」の認識が高まらず、両陣営とも本命である水道の運営そのものへは参入できていない。
「当初のもくろみとはずいぶん違うため、合弁会社の抜本的な見直しが必要かも知れない」(丸紅)
少子化に悩む大学もまた、売り買いの対象になりそうだ。
米テンプル大の日本校、テンプル大ジャパンのカーク・パタソン学長のもとに今年初め、M&Aを仲介する業者からこんな提案が寄せられた。
「財務的に苦しい地方の私立大が新たなスポンサーを探しています。買う気はありませんか」
海外大学の日本校は正式な大学と認められていない。テンプル大ジャパンも就学ビザを発行できず、学生は定期券の通学割引も受けられない。学校法人でなく有限会社のため税制上の優遇もない。大学を学校法人ごと買収すれば、規制の壁をクリアできると思えた。
現在、資産査定を進めている。だが、この9月に文部科学省が、海外大学日本校と日本の大学との単位互換や編入、通学定期の適用など規制を緩める方針を示したこともあり、最終的には断る可能性が高いとパタソン学長は言う。
「地方だと教師や生徒を集めにくいし、経営難の大学を再生させるのは並大抵のことではない。それに学校法人になることで文科省の規制を受け、自由裁量の余地が狭まるのも気になります」
とはいえ、撤退が相次いだ海外大学の日本校が、日本に再進出する機運は高まっているそうだ。
「豪州の大学が昨年、日本で市場調査をしました。少子化とはいえ日本は今も世界有数の市場だし、社会人教育熱も高まっている。それに日本の大学は競争相手として力不足なので、海外の大学が特徴を出しやすいのです」
「一にも二にも人脈」
道路から大学、さらには都心に広い土地を持つ宗教法人まで物色し、オフィスビルの優良物件はタネ切れと見るや東京や大阪の倉庫群の買収に殺到する外資。彼らはどう物件を探し出すのか。
「一にも二にも人脈です。人のネットワークが良い案件を見つけることにつながります。そして、対象が上場企業であれば、保有資産の中身を徹底的に調べます。さらに、日本の投資家は横並びですが、外資は日本人がしたがらない逆バリの投資に慣れています」
ある投資銀行幹部はそう言う。
しかも、日本企業はいま縮み志向だ。安く買って再生に成功すれば、リターンは大きい。箱根ターンパイクの東急での簿価は76億円。マッコーリーは60億円余りも安く買った計算になる。
1500種類ものサボテンと多肉植物が植えられ、クジャクやリスザルが放し飼いにされる伊豆シャボテン公園(静岡県伊東市)。1959年に開業し、高度成長期に首都圏で少年時代を送った世代には良く知られた観光地だ。
公園を経営する会社への債権と株式を、米穀物メジャーのカーギルグループが今年4月、取得した。
もともとは地元の別荘開発会社が経営していた。昭和40年代に年間100万人を超えた入場客は、最近では27万人程度に激減、収支は赤字基調だ。バブル期にイ・アイ・イグループが買収したが、イ社と長銀の破綻後、巨額の債権を整理回収機構が継承。4月に債権譲渡の入札をしたところ、カーギルの投資会社が資金提供する日本の有限会社が落札した。
世界最大の穀物商社は、サボテンを食糧にでも利用するのか。
「そうではなく、あくまで企業再生目的の投資です」
とカーギル側の担当者は言う。
確かにその言葉通り、取得から約半年後の11月26日、シャボテン公園は、カーギルグループが保有していた債権と株式を、「J−CALインベストメント」(東京)という投資会社に転売したと発表した。
J−CALインベストメントは、米カリフォルニア州の個人投資家から資金を集めて、日本に投資しているといい、ジャスダックに上場しているコンテンツ制作会社のオメガ・プロジェクトと組んで、伊豆シャボテン公園の再建にあたる、としている。
2000年冬の京都。世界第2位のソフトウエア会社オラクルの創業オーナー、ラリー・エリソン氏が国指定名勝、對龍山荘を買いにやってきた。古い建物から借景の東山を望んだエリソン氏は寒さを苦にする様子もなく、庭を見ては「エクセレント」と連発した。
「自分も米国に日本庭園を持ち、日本から庭師も招いて維持していますが、やはりホンモノは違う。ぜひ、ほしいです」
名勝の価値深く理解
對龍山荘は和服の老舗、市田の創業者が明治時代に、名匠として知られる小川植治に建てさせた邸宅である。東山を龍に見立てて、名前が付けられた。戦後、創業家から市田に所有権が移されたが、市田の経営再建のために売り出したところ、宗教法人や韓国、香港、中東の大金持ちが名乗りを上げた。その中で最も熱心なのがエリソン氏だった。
現地を2度訪問。用意されたホテルを断り老舗の旅館に泊まるこだわりに、関係者は「日本趣味はほんものだ」と感じたという。外観を維持する条件で売却が決まりかけた。ところが、最終局面でエリソン氏側が、瑕疵担保特約を求めたことが引き金になって決裂したという。結局、日本の上場コンピューターサービス会社グループが25億円で買い取った。
「明治の木造建築に、瑕疵が見つかったら見合う負担をしてくれと求められても困るが、買収希望者の中で本当に価値を分かっていたのはエリソン氏だった」
交渉経過を知る関係者は今もそう振り返る。
早ければ06年に予定される商法改正で、外国企業にも株式交換による日本企業の買収が認められれば、巨額のキャッシュの代わりに、日本においた子会社の株式を通じて日本企業を買えるようにもなる。外資の日本買いはますます加速しそうだ。 (12/15)