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社説
10月01日付
■イラク再建――これで選挙はできるか
イラクは国の再建と民主化へ踏み出せるのか。その分水嶺(ぶんすいれい)となる暫定国民議会の選挙が3カ月後に迫った。だが、選挙実施の見通しは暗さを増すばかりだ。
暫定政府に主権が移譲され、占領が終わってから3カ月がたった。なのに、治安は良くなるどころではない。
反米武装勢力による攻撃は全土に広がり、テロや外国人の拉致が続く。テロリストの掃討が目的の米軍の作戦で市民の犠牲が増え、それが反米感情をあおる。バグダッドの都心でさえ無法地帯になったと、現地からの報道は伝えている。
それでも来年1月の選挙日程は動かさないというのが、暫定政府とブッシュ米政権の方針だ。しかし、ラムズフェルド米国防長官ですら、一部の地域では実施できない可能性のあることを議会で認めた。隣国ヨルダンのアブドラ国王は、今の状況が続けば選挙は無理で、強行すれば結果的に過激派が勢力を伸ばすだけだと警告している。
イラクには、異なる民族や宗派が同居している。その人々がそれぞれに、自分たちのためになる国造りをしようと様々な期待を抱いている。そんな国をまとめられる政府をつくるには、できるだけ多くの勢力が参加し、国連の協力の下で公正な選挙をすることが欠かせない。
だからといって、安全が確保できないまま選挙をしても、公正な結果は期待できない。選挙の結果が国内の対立をあおることになっては、元も子もない。内戦のような事態は、最も避けなければならないことだ。
他方、選挙がずるずると延期されれば、これもまたイラクの混迷を収拾するための糸口を失わせることになる。
選挙を妨害しようとする反米勢力をつぶすために、米軍が年末までに大攻勢をかけるという計画が報じられている。しかし、それで治安が改善され、選挙実施の条件が整うとはとても考えにくい。むしろ逆効果だろう。
「イラク国民の目から見ると、暫定政府は米国の傀儡(かいらい)だ。占領はなお続いている」。米誌フォーリン・アフェアーズの最新号に、占領当局の顧問を務めたラリー・ダイヤモンド氏がそう書いている。実際、主権移譲後も米軍の占領軍としての性格は変わっていない。
米政府は、駐留はテロとの戦いのためと主張するが、ダイヤモンド氏は、米国にとっては、むしろ国民の反米感情こそが最大の問題だと言う。ブッシュ大統領にぜひ耳を傾けてもらいたい指摘だ。
治安を担うイラク軍の強化を急がねばならないが、反米感情が広がる限り、暴力はやまない。事態を好転させる決め手は、米軍の早期撤退しかあるまい。
国連決議に基づく多国籍軍に、世界の国々が参加する道も、米軍の撤退を前提に論議するなかで開けるだろう。周辺諸国の協力も得やすくなるに違いない。
選挙ができる条件づくりにまず必要なのは、米国のイラク政策の転換だ。
http://www.asahi.com/paper/editorial20041001.html