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社説
09月29日付
■日朝協議――ごまかしは許さぬ
一体、これはどういうことなのか。先日の日朝実務者協議の内容が明らかになるにつれて、拉致問題をめぐる北朝鮮の姿勢に疑念は募るばかりである。
たとえば、北朝鮮が「死亡した」とする横田めぐみさんのことだ。
ちょうど2年前、最初の日朝首脳会談を受けて、北朝鮮当局は「死亡した」という拉致被害者8人についての「調査結果」を示した。めぐみさんは「93年3月に病院で自殺した」とされ、「死亡証明書」のコピーも添えられていた。
ところが、今回の協議で北朝鮮側は、めぐみさんは「93年の4月29日から6月3日までと、8月3日から10月8日までの間、入院していた」という新たな説明を持ち出した。めぐみさんを北朝鮮で翌94年に見たという蓮池薫さんの証言をそのまま北朝鮮側にぶつけたところ、返ってきた答えがそれだった。
訂正で済む話ではない。日付の入ったあの「死亡証明書」が実は事実を伝えたものでないことを、北朝鮮がみずから認めたことになる。あれがでっち上げなら、これまでの説明は何だったのか。
北朝鮮側は、めぐみさんら8人が「死亡した」という主張を繰り返した。しかし、最後の入院の後、彼女の身に何が起きたのかという日本側の当然の問いに、回答はなかった。病院のカルテ。一緒にいた日本人の有無。めぐみさんの結婚の経緯。こうした質問にも答えを拒んだ。新たに拉致の疑いが浮かんだ人々についての問い合わせにも応じなかった。
北朝鮮で今も暮らしている人がいるのではないか。その思いを捨てることはできない。
北朝鮮が、拉致を実行した「特殊機関」の抵抗を調査が進まない理由にあげたことも、奇妙である。拉致を認め、そうした機関の関係者の処分まで口にしたのは、金正日総書記だ。彼は4カ月前の小泉首相との再会談では「死亡・不明」の10人について、白紙から再調査をするとも約束したはずだ。
めぐみさんの父、滋さんは「本気で調査しているとは思えない」と語った。
北朝鮮が過去の拉致を謝罪し、日朝関係を正常化させたいと考えるなら、被害者のその後を誠実に調べ、その結果を日本側に伝えることが出発点だろう。時間稼ぎのような態度を続ければ、日本国内の経済制裁論が力を増し、それで苦境に追い込まれるのは北朝鮮自身だ。
日本側は、次回の協議は北京でなく平壌で行い、北朝鮮の調査担当者を協議に参加させるよう要求している。北朝鮮はこれを受け入れるべきである。
拉致問題で北朝鮮の態度を変えさせることは、核をめぐる6者協議を動かす環境整備にもなる。首相が、米国と人脈があり、再訪朝に向けて北朝鮮とも接触した山崎拓氏を補佐官に据えたのも、そんな判断からだろう。
任期中に日朝国交正常化をなし遂げたいと首相は言う。ならば、この再調査問題をまず動かさなければならない。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040929.html