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アルジャジーラ:
長引くバグダッド支局閉鎖 記者逮捕も
中東カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」のバグダッド支局の閉鎖が続いている。イラク暫定政府は今月5日、支局閉鎖措置を無期限で延長した。一時、暫定政府内部に出ていた閉鎖慎重論も「米国の意を受けた強硬派に押し切られた」との見方が出ている。取材現場では警察による記者の逮捕も常態化しており、イラクに「報道の自由」が訪れるまでにはまだかなりの時間がかかりそうだ。【バグダッドで斎藤義彦】
●没収
「なぜ写真を撮るんだ」。アルジャジーラの支局があるバグダッド市内のホテルを監視する警察官は9月6日、支局を路上から撮影していた記者(斎藤)のデジタルカメラを奪い取った。「逮捕されても仕方がないぞ」。警官はメモリーカードを没収し、カメラだけを返却した。支局を撮影した外国TVクルーが一時拘留され、撮影テープを没収されたこともあるという。
8月7日に出た支局閉鎖命令は当初「1カ月間」で、ホテル2階の支局の鍵が警察に没収された。それ以降、支局員はホテルのロビーをたまり場にしていた。撮影機材は支局にあるため「取材できず、通信社の映像を買っていただけ」(支局員)というのが実態だったが、「閉鎖措置を尊重せず、取材を続けた」とみる暫定政府が閉鎖延長に合わせて警官隊を派遣し、支局員をホテルから締め出した。
暫定政府の国家安全保障委員会は、「アルジャジーラが暴力を助長し、憎悪や民族間の緊張を誘発した」と非難し、同社が取材の「狙い」を文書で説明するまで、閉鎖を続けるとしている。
これに対し、同社は「暫定政府が掲げる『自由と民主主義』に反する行為。報道は公正で、変更するつもりはない」とし、バグダッド支局の記者をドーハの本社に呼び、レポートを続けさせている。
●米国の影
暫定政府の強硬姿勢には米国の影がちらつく。政府内部には「報道の自由に反する」(内務省高官)と閉鎖措置に慎重な意見も強かった。しかし、「米国の意をくんだ安保委が閉鎖延長を強行した。すべてが米国の考えを基に行われた」(同高官)との見方もある。
米国は、イラク戦争と占領に批判的で多国籍軍を「占領軍」と呼ぶアルジャジーラを非難してきた。国際テロ組織アルカイダの声明や、武装勢力が拉致した人質の映像を流すなど、以前から米国の怒りを買っていたが、「今年4月のバグダッド西方ファルージャの空爆中継でそれが頂点に達した」とイラクの報道関係者は指摘する。
ファルージャ攻撃作戦中、アルジャジーラは現地からの中継を続けた唯一のメディアで、「無実の子供や女性が殺されている」と訴え、米軍への国際的非難の契機を作った。当時の米英占領当局(CPA)幹部は「報道はうそ」と公言し、いら立ちを隠さなかった。
ラムズフェルド米国防長官は8月、「アルジャジーラは中東で米国に大きな損害を与えている」と語り、支局閉鎖に触れ「人々は(報道と現実の)食い違いを知り、すぐに(同社の報道を)信じなくなる」との期待感を述べた。
●続く強硬措置
実は、戦後イラクで実力行使によるメディア閉鎖の「お手本」を示したのもCPAだった。CPAは昨年7月、戦後設立された独立系の週刊紙「ムスタケラ」の事務所を急襲、オーナーを一時拘束したうえパソコンなどを没収し、実力で閉鎖に追い込んだ。「国を売る者は生きる価値がない」と訴えた同紙が「読者を扇動した」というのが理由だ。CPAは言論弾圧との批判に「報道の自由を乱用するメディアがあれば今後も閉鎖する」と断言した。
以後、強硬措置は繰り返された。CPAが任命した統治評議会は昨年9月、「占領軍への攻撃を事前に知り、撮影した」として、アラブ首長国連邦に拠点を置く衛星テレビ「アル・アラビーヤ」に対し、記者会見への参加や、政府施設への出入りを拒否した。さらにフセイン元大統領の声明を流した同社バグダッド支局に昨年11月、警官隊を派遣し、活動を1カ月間停止させた。この時も米国務省のバウチャー報道官が「報道機関が扇動に使われるのを防ぐ措置」と擁護した。同評議会は今年1月にも、アルジャジーラに対し1カ月間の会見拒否に踏み切った。
アル・アラビーヤのサアド・ハサニ・バグダッド支局長は「イラクにいなくても、通信社の映像を買えばいくらでもニュースは作れる。強硬措置でメディアは抑え切れないということを全く理解していない」と暫定政府や米国を批判する。
●記者の拘束も
記者の拘束、逮捕も相次いでいる。強硬派のイスラム教指導者、ムクタダ・サドル師と米軍・イラク治安部隊が衝突を続けていた中部の聖地ナジャフでは8月25日、警官隊が各国の記者が常駐していたホテルに入り、威嚇射撃をして「事実をゆがめて報道している」と非難し、約20人を一時拘束した。
アル・アラビーヤのアハマド・アルサレヒ記者(32)も数時間拘束された。警察は「自分たち(暫定政府側)の被害をなぜ放送しないのか」と何度も詰め寄ったという。一方、サドル師派からも、主張を取り上げないと殺す、という脅しがあった。「フセイン時代にメディアは政府の代弁者だった。メディアが独立し、自由に批判できることをイラク人が理解するには時間がかかる。それまではメディアに大きな圧力がかかり続けるだろう」と話す。
▼ イラクの政治評論家、カイス・アルアザウィ氏の話
アルジャジーラのバグダッド支局閉鎖措置は、イラクの暫定統治がうまくいっておらず、暫定政府と米国が視聴率の高いアラブの衛星放送をいかに恐れているかを示す。扇動は許されないが、話し合いの余地はあり、閉鎖は稚拙過ぎる。政府にとっても「メディアを管理したフセイン政権と同じ」と国民に受け止められ、信頼を失う危険性が高い。
【アルジャジーラ】カタール政府が設立し、運転資金を貸し付け、96年に放送を開始した。英BBCアラビア語放送の元メンバーが主力。アラブ諸国のほか、ケーブルテレビで米国、欧州でも視聴可能で、視聴者数は4500万人以上。米同時多発テロ後、アルカイダの声明を放映して知名度が高まった。アフガニスタン、イラク戦争では現場から報告を続けた。
毎日新聞 2004年9月28日 1時50分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/afro-ocea/news/20040928k0000m030172000c.html