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社説
09月26日付
■核不拡散――ヤミ開発を抑えるには
「ウランに関するすべての物や技術は闇市場で入手した。必要なものは何でもそろうスーパーマーケットのようなものだ」。リビアのシャルガム外相が最近、朝日新聞の取材に対して語った言葉だ。
リビアは昨年12月に核開発計画の廃棄を宣言した。今だから言えるというわけだが、「核の闇市場」がいかに世界をむしばんでいるかを物語っている。
闇市場に出入りしていたのはリビアだけではない。北朝鮮もイランも、ウラン濃縮関連部品の密輸に手を染めていることが、国際原子力機関(IAEA)などの調べで明らかになっている。
闇市場で得た技術・材料をもとに、テロ集団が「核の9・11」を起こす危険はもはやSFだけの話ではない。
核保有国をこれ以上ふやさない。核保有国は核を減らす。核兵器を抱える人類のせめてもの努力ともいえる核不拡散体制は前進どころか、いよいよ混迷の度を深めている。
私たちは何をすべきか。これ以上の悪化を防ぐため、三つの提案をしたい。
第一は、大量破壊兵器(WMD)の流出防止をはかる国連安保理決議1540(今年4月採択)の実施を促すことだ。決議は、国連加盟国に対して、核などのWMDを拡散させる行為や支援を犯罪とみなす法を整備し、密売を抑える輸出管理制度を導入するよう求めている。
実情は、先進国ではWMDに転用できる技術・物資の輸出に許可制を導入しているが、まだまだ抜け道がある。制度が甘い途上国では「輸出管理は自由貿易の妨げになる」との反発が根強い。
第二は、IAEAの抜き打ち査察を容易にする追加議定書の締約国をふやすことだ。追加議定書に基づいてIAEAが次々に査察できれば、闇市場を通じてウラン濃縮施設などをつくっても、早期に秘密実験を発見できる公算が大きい。
締約国は、日本を含め約60カ国に過ぎない。追加議定書の受け入れなしには原子力利用は認められない、という規範を定着させるべきだろう。
第三は、兵器用の核分裂物質の生産を禁止(カットオフ)する条約の締結だ。核兵器国、非核国を問わず、核兵器に適した高濃縮ウランやプルトニウムの生産を全面禁止するこの条約は、10年以上前からその必要性が叫ばれてきた。だが、主に核保有国同士の利害対立で正式交渉にさえ入っていない状態だ。
条約が実行に移されれば、核保有国の軍拡に歯止めをかけると同時に、新たな核保有を防ぐ手段ともなる。また、条約には実行を監視する検証体制を盛り込むことも大切だ。
これらの3提案が相乗効果を発揮できれば、闇市場を通じた核拡散への強力な対抗手段となるだろう。
来年5月には、核不拡散条約(NPT)の運用などを再検討する5年に1度の会議が開かれる。核拡散防止をこれ以上、後退させてはならない。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040926.html