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特報
2004.09.22
パウエル氏『大量破壊兵器ない』
『大義なき戦争』の後始末は
米国によるイラク攻撃の根拠とされた「イラクが大量破壊兵器を備蓄している」との疑惑に関して、パウエル米国務長官は「発見することはないだろう」と議会証言。続いて米政府調査団(ドルファー団長)が「証拠なし」との報告を数週間後に発表の見通しだ。「クロ」と主張した米国と支持した日本。「大義なき戦争」の、けじめのつけ方、つかせ方は−。
開戦前、二〇〇三年二月の国連安全保障理事会で「フセイン(イラク大統領・当時)が兵器を隠している『否定できない証拠』がある」と、イラク軍幹部らの録音会話を披露し、大量破壊兵器の「隠匿工作」を強調したのがパウエル長官だった。その長官が今月十三日に米上院政府活動委員会で行った証言は「いかなる備蓄も発見されておらず、われわれが発見することはないだろう」だった。
「あったとすればどこへ行ったのかは未解決の問題」などと、かねてから修正発言してきた同長官だけに、大阪経済法科大学の吉田康彦教授(国際関係論)は「自分の信念で発言したのだろう。今期限りで長官を辞任、すでに後任も取りざたされ、ブッシュ政権との決別の意味を込めて言ったのでは」と指摘する。
十一月に大統領選を控え、大量破壊兵器を捜索した米調査団の「シロ」報告が近く出る見通しという時期だけに「問題をひきずるより、大統領選前に出してしまいたいという世論の地ならしもあるはずで、計算しつくされた言葉」とみるのは学習院女子大学の畠山圭一教授(国際政治)だ。
■早めの表明が得策と判断か
調査報告が出れば、開戦前の「差し迫った脅威」論は根拠を失う。
軍事評論家の稲垣治氏も「米調査団が正式に報告書を発表する前に、内容がすでに外にボロボロと出ており、早めに『なかった』ということを言った方が得策と判断したのではないか。大統領選でのブッシュ批判を少し薄めることができると思ったのでは」とみる。
ブッシュ政権がイラク戦争を始めるに当たって持ち出した最大の根拠が存在せず、うそをついていたことが明らかになった以上、「方向を変えなければ、戦争に終わりは見えない」という民主党大統領候補のケリー候補にとって追い風となりそうにみえるが、畠山氏は「ケリーにとって攻めどころだが、攻められない部分でもあり、むしろケリーに不利」とみる。
「ケリーは『(大量破壊兵器があると)だれもが信じていた』と言う一方、自分の判断は間違っていなかったと強調するため、対テロ戦の指導者としての適性に疑問符がついた。それ以前の問題として、ケリーは開戦時、賛成しており、ケリーの言葉は変わるという批判もある」
桜美林大学の加藤朗教授(国際政治)も「パウエル発言以降、米国内で大きなニュースになっていない。みんな『ない』というのはうすうす了解していた。ケリーはイラクでの政権移譲以降、ブッシュの楽観主義や治安がままならない不手際を批判しており、イラクにからめた批判は今に始まったことではない」。
ブッシュ大統領は「フセインにはこれらの兵器を造る能力があった。仮に存在しないことが分かっていても、同じ決定をしただろう」と強気。米国の各種世論調査はブッシュ支持がケリー支持を上回る。イラク戦争が間違っていたとしても、強い指導者イメージのブッシュ大統領を支持するとの心理があるようだ。
吉田氏は「依然として(国際テロ組織)アルカイダが暗躍、米国本土にいつ、テロが起きてもおかしくないという脅威がある。ブッシュ政権は危機感をあおる。米国民の間には戦時下での強いリーダーシップを求める空気があり、イラクでの戦況が相当悪化しない限り、ケリーに有利に働くとは思えない」と話す。
第二次世界大戦後に十四回行われた米大統領選をみると、九月時点の支持率で後れを取った候補が当選したケースは三回しかない。その一つ、一九六〇年のケネディ対ニクソンは、投票前のテレビ討論の出来不出来が、ケネディの逆転勝利につながった。ケリー候補にチャンスがあるとすれば、今月三十日からの討論会だといわれる。
さて、日本の小泉純一郎首相は「大量破壊兵器の脅威」を開戦支持の理由としてきた。外務省はパウエル発言に「イラク攻撃を支持した最大、唯一の理由は、安保理の度重なる決議にイラクが一度も従わなかったことで、日本政府の決定に何ら問題はない」(高島肇久外務報道官)と強調。
国連のアナン事務総長が「イラクを攻撃するかどうかの決定は安保理で行われるべきであり、単独で決定すべきではなかった」と語ったのに対して、訪米中の小泉首相は二十日夜、「私はそう思っていない。(米国を支持した)日本の判断は正しかった」とあらためて米国支持を表明した。
■『独自の調査重視すべき』
国連総会が始まったニューヨークで二十一日に日米首脳会談が行われるが、「ロン・ヤス(故レーガン元大統領と中曽根康弘元首相)と同じようなバッテリー関係の仲でいたい小泉首相が都合の悪いことを聞くはずはないし、無視するでしょう」と話すのは、放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏。
「同盟国の日本は、米国に言われたことを信じるしかない。日本政府が独自に調査するか、それができないなら米国に協力するか、選択肢は二つしかなかった。日本は、外務省職員がこれだけ世界にいるのだから、もっと独自の調査を大切にすべきだ」
■国連と日米の協調曲がり角
加藤氏も「日本は米国を支持するより選択肢はないだろう。日本は戦後一貫して米追随で、国家戦略がない」としながらも「今は日米同盟の微妙な時期。米軍再編との関連で、日本は防衛の基本方針を変えなければならない。国連での協調と日米同盟の協調をどう図るかターニングポイントにある」と指摘した。
十二月にはイラクに派遣している自衛隊の活動期限を迎える。
吉田氏は「小泉首相は国会で一貫して『大量破壊兵器はあると思う』と述べ、フセイン大統領が捕まった時も『これから出てくる』などと発言していた。はしごを外された格好だが、こうなった以上、自衛隊をいったん、撤退した上で仕切り直しすべきだ。サマワに滞在している自衛隊には砲弾が撃ち込まれ、宿舎に完全に閉じこめられ、自分たちの飲み水を確保するために居座っているようなもので、イラク国民に役に立っていない」。
稲垣氏も「政府が、非戦闘地域と言い張るなら、建設会社や水道会社を派遣した方がはるかに効率的。人道支援、後方支援と言うなら、自衛隊がいかなくてもいいはず。根拠のない戦争の後始末に駆り出されている。そのことに、どこかでけじめをつけるべきだ」。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040922/mng_____tokuho__000.shtml