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<米大統領選>情勢一変、ブッシュ氏逃げ切りの見方強まる (毎日新聞)
「かつてない接戦」と言われる米大統領選(11月2日投開票)の情勢がこの1カ月余で一変した。「ベトナム戦争の英雄」を最大の売り物にした民主党候補ケリー上院議員(60)の戦略がつまずき、それまで苦戦を強いられてきた共和党の現職ブッシュ大統領(58)に逆転を許す展開になっている。ケリー陣営は内政批判に重点を移すなど土壇場の戦略転換で巻き返しを試みているが、ブッシュ氏が逃げ切るのではないか、との見方が広がりつつある。【ワシントン佐藤千矢子】
◇ケリー氏、土壇場で戦略転換
「この政権はイラクで、できもしない約束をして、期待以下のことしかしてこなかった。政策は計画性を欠き、率直さのかけらもなく、ごう慢で無能力さをさらけ出している」。ケリー氏は20日午前、ニューヨーク大学で演説し、ブッシュ政権のイラク政策について、これまでになく強いトーンで痛烈に批判した。
これに先立つ17日には、チェイニー副大統領と石油関連会社ハリバートンとの不透明な関係を指摘し、ブッシュ政権は石油業界との「癒着」が一因でイラク復興のやり方で間違いを犯し、米兵や国民の負担を増大させていると非難した。
選挙戦は、9月6日のレーバーデー(労働祝日)明けから終盤戦に突入したが、ケリー氏の演説には明らかな戦略転換が見て取れる。(1)「ベトナム戦争の英雄」を強調するのを控える(2)経済、医療保険など内政に重点を移す(3)イラク政策も納税負担増大など内政に絡めて攻撃する(4)全体にブッシュ批判の調子を強める――などだ。
戦略転換の陰には、クリントン前大統領の存在がある。クリントン氏は心臓バイパス手術のため入院した今月初め、病床からケリー氏に電話した。ベトナム戦争を論戦の中心にすえるのをやめ、雇用や医療保険でブッシュ氏との違いを際立たせるようアドバイス。さらに92年大統領選でクリントン氏がブッシュ元大統領を破った際の選挙参謀らをケリー陣営に送り込むと約束した。
陣営には現在、クリントン前政権の大統領報道官だったロックハート、マカリー両氏ら「クリントン人脈」が加わり、巻き返しに駆けずり回っている。
◇ブッシュ氏、テレビ討論での失点警戒
これに対し、ブッシュ陣営は共和党大会(8月30日〜9月2日)で、同時多発テロの記憶を国民に呼び起こさせ、対テロ戦争の実績を訴える戦略を取った。支持率はその時点ですでにケリー氏と逆転していたが、その差を着実に広げた。
「最後の勝負」に出たケリー陣営に対し、ブッシュ陣営の再選マシンは順調にフル稼働を続けている。
政権人事にも早くも動きが見られ、02年夏に政権を離れていた側近カレン・ヒューズ元大統領顧問は8月半ばにホワイトハウスに復帰。米政治専門誌ナショナル・ジャーナルによると、政権2期目の人事構想で「ラムズフェルド国防長官が米軍の変革・再編を理由に再任を希望すればブッシュ氏は認める」などとささやかれているという。
しかしブッシュ陣営も盤石ではない。イラク情勢の不透明感が最大の理由だが、もう一つ気がかりなのがテレビ公開討論会で思わぬ「失点」をすることだ。
超党派の実行委員会の主催で、両候補は今月30日から計3回、一騎打ちの討論会を行う。ただ、ベーカー元国務長官が率いるブッシュ陣営の討論会担当チームは対話集会形式の2回目の討論会に特に警戒感を強め、「無党派を装った民主党支持者が交じって、厳しい質問をぶつけるのではないか」と「出席拒否」を検討、開催が危ぶまれる一幕もあった。
米紙ワシントン・ポスト(20日付)によると、両陣営はようやく3回の討論会を行うことで原則合意したが、大物の元国務長官まで繰り出したブッシュ陣営の「危機管理」ぶりは、ブッシュ氏が優勢でもいまだ「安全圏」ではないことを浮き彫りにした。
◇ベトナム強調作戦が裏目に
各種世論調査によると、7月まで優勢を保っていたケリー氏は8月に入り失速した。調査により多少ばらつきが見られるが、ブッシュ氏がケリー氏を2けた近くリードしているものが多く、ギャラップ社調査(17日発表)では、ブッシュ氏が55%と、ケリー氏の42%に13ポイントの大差をつけている。
選挙戦は、17州前後の「スウィング・ステート(揺れる州)」と呼ばれる激戦州を制した候補が勝つとされ、最激戦州のオハイオ、フロリダの両州はブッシュ氏がやや優勢、ペンシルベニア州はほぼ互角との調査結果が多い。
ケリー氏の支持率急落の理由としては、「ベトナム戦争」重点戦略を採用し、失敗したことが挙げられる。
同氏は、02年秋に上院でのイラク攻撃容認決議に賛成しながら、イラク情勢の混迷が深まった03年秋にはイラク復興支援補正予算に反対した。一部側近は「イラク開戦に賛成した最初の投票は間違っていた」と認めようと進言したが、ケリー氏は退け、開戦自体への批判を避け、戦争や戦後復興の遂行方法を攻撃する選択をした。だが、これではブッシュ氏との違いは出にくかった。
その間にブッシュ陣営は、イラク政策などで態度がくるくる変わるとしてケリー氏を「フリップ・フロップ(変節漢)」と揶揄(やゆ)、ケリー氏の代名詞として定着させた。
そこでケリー氏は、ベトナム戦争の従軍経験を活用。対テロ戦争を率いる指揮官としての資質は、ブッシュ氏よりも優れているとアピールする戦略に出た。ベトナム戦争下でブッシュ氏が徴兵逃れや無許可離隊など軍歴疑惑を指摘されていることを踏まえたもので、民主党大会(7月26〜29日)は「ベトナム戦争の英雄」ぶりを演出した大会となった。
だが30年以上前の「過去」に焦点を当てた党大会は、ケリー氏の支持を伸ばすことはできなかった。8月に入り、保守系の退役軍人団体が逆に、ケリー氏がベトナム戦争で勲章を受けた戦功の報告に誇張やウソがあると批判する中傷テレビ広告を放映した。ケリー陣営の反論が遅れるうちに火の手は膨れ上がり、陣営は8月いっぱいを火消しに費やした。
[毎日新聞9月21日]
http://news.www.infoseek.co.jp/world/story.html?q=21mainichiF0921m116&cat=2