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「フセイン政権存続の理由」と「経済制裁下の人々」
http://www.asyura2.com/0406/war60/msg/124.html
投稿者 外野 日時 2004 年 9 月 18 日 21:25:26:XZP4hFjFHTtWY
 

(回答先: 有志連合(Coalition of the willing) 投稿者 外野 日時 2004 年 9 月 18 日 21:00:29)

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■ 正義のゆくえ(後編) 利権合戦は世代を越えて 高山義浩 2001年2月24日
http://square.umin.ac.jp/ihf/news/2001/0224.htm

 (略)

◆フセイン政権存続の理由

 フセイン政権が長寿なのは、彼がイラク国民を押さえつけているからだけではない。僕がイラクを旅しながら知りえた範囲では、国内でのフセイン支持は恐怖政治を差し引いても、かなりのものだった。イラク国外では、フセイン大統領の好戦性がクローズアップされているが、国内では20年にわたる彼の内政実績がよく語られている。

 王制を打破し、議会のある政党政治を実現したのは誰か?
 医療を無料とし、社会保障を拡大したのは誰か?
 義務教育制度を確立し、大学までの教育を無料化したのは誰か?
 高圧送電線網を整備し、一般家庭まで電化したのは誰か?
 灌漑用水路網を整備し、大規模かつ機械化した農業を実現したのは誰か?
 識字率の向上を図り、無料の成人学校を設立したのは誰か?

 このすべての答えが、イラクの人々にとって「サッダーム!」なのである。経済封鎖によって、海外の報道と接する機会が失われたイラクの人々にとり、80年代に豊かになれたのは「フセイン大統領の優れた政治力のおかげ」であり、90年代に苦しんでいるのは「中東支配をもくろむアメリカのせい」となっていても仕方がないことだろう。

 少なからぬイラクの人々は、「アメリカの外圧さえ排除できれば、きっとサダムは上手くやってくれる」と真剣に信じている。フセイン大統領は、イスラム的価値のなかでも大切な「サブル(忍耐)」を市民に訴えかけ、こうした感情と信仰を巧みに利用している。

 フセイン大統領は単なる「ならず者」ではない。この理解は、今後の湾岸情勢を見通すうえで重要なものである。彼は、湾岸戦争に参加した首脳たちのなかで、敗者でありながら最も長命な政権をしたたかに維持しており、石油をめぐる駆け引きにおいても、優れた策略で世界を翻弄してきている。

 大量破壊兵器廃棄を目指して査察を行う国連に対し、フセイン大統領はクウェー

ト国境への軍の移動やクルド人攻撃などの挑発的な行動を繰り返し、「緊張」を演出してきた。そして、いまやロシア、フランス、中国を味方に引き入れてアメリカ、イギリスと対立させ、安保理分断にすら成功しつつある。
 (略)
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■ 検証・湾岸戦争(3) 希望の世紀のために 高山義浩 2003年3月21日
http://square.umin.ac.jp/ihf/news/2003/0321.htm

 (略)

◆経済制裁下の人々

 イラクの場合、戦後の状況は、日本とは極端に異なっていた。ジェノサイドは続けられた。サダム・フセインを生き延びさせてしまったアメリカは、経済制裁によるイラクの徹底的な封じ込めを国連に断行させたからだ。

 ライフラインが徹底的に破壊されたイラクでは、為政者ではなく弱者、とりわけ子供たちから命が奪われはじめた。下水処理場が破壊されたので、河川が汚染された。浄水場が破壊されているため、人々はその河川から飲用水をくみ上げた。発電所が破壊されたため、暖房と料理のため木が伐採され都市の緑地が失われていった。91年の晩秋、ユニセフは、抜本的な救援策が取られない限り、91年末までに6歳未満の17万人が栄養失調に苦しみ、このうちの半分が死亡する、との予測を発表した。そして、この予測は十分上回るかたちで実現したと言われている。

 僕には、多くの国々の病院で研修もしくは視察してきた経験がある。しかし、イラクの病院ほど悲惨な光景は目撃したことはなかった。栄養失調の患児たちが小児病棟を埋め尽くしていた。ガリガリに痩せ,腹を膨らませた子どもたち。映像だけで、この恐怖は伝えられないだろう。電力がないため空調設備が作動しておらず、40℃以上の室温に患者たちが喘いでいた。そして、消毒薬が輸入できないため、人間を含めた様々なものが腐敗し、異臭を放っていた。医学専門誌としての権威である『ランセット』に「バグダッドの乳児死亡率が、湾岸戦争前は8.04%だったのに対し、1995年には16.07%に倍増しており、5歳未満児死亡率も4.06%から19.82%に激増している」との報告(Zaidi S. Fawzi MC.:Health of Baghdad's Children "letter", Lancet, 346(8988); 1485, Dec.2.1995)があったが、これを数字ではなく個々の患者として見た時に、いかに大変な事態であるかを僕はようやく理解することができた。

 もちろん、経済制裁は保健医療のみならず、食料、教育、環境など、すべての分野に打撃を与えていた。

 勤続15年の一般公務員の月給が5000円程度。これで買えるのは、卵なら十数個、石鹸なら2個に過ぎなくなった。店頭にそれがあればの話である。印刷ができなくなり、文房具も手に入らなくなった。小中高、そして職業学校で中途退学者が続出した。イラク政府は、コーランを印刷するため、海外資産の一部の凍結解除を要請したが許可されなかった。教育者、知識人は情報の枯渇状態に苦しんでいる。湾岸危機以来、イラクの知識は80年代のままである。

 バグダッド大学医学部の教授が嘆いていた言葉に、僕は科学者としての苦悩を強く感じた。

「いったい自分の研究には意味があるんだろうか? それが分からなくなったんだ。もしかしたら、もう世界では発見されていることを自分は研究しているのかもしれない。何年間もその状態なんだ。気が狂いそうだよ」

 こうした声を受けて、日本イラク医学生会議では『ランセット』の数年分のバックナンバーをはじめ、様々な医学書をバグダッド大学の医学部図書館に寄贈するプロジェクトを2年にわたって実施した。僕らが図書館前の廊下に段ボール箱を置いた途端に、威厳に満ちた風貌の教授たちが、まるで漁るかのように段ボール箱に群がったのに、むしろ、僕らは激しいショックを覚えたのだった。なにか、本当に申し訳ないような気持ちにさせられたのだ。
 (略)
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