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【ローマ=藤原善晴】「イラク人には抵抗する権利がある」――。バグダッドで武装勢力に拉致され先月28日に解放された民間援助団体のイタリア人2女性が、帰国後、米国のイラク占領政策や、ベルルスコーニ政権の対米協力に批判的な発言を活発に行い、賛否両論を巻き起こしている。
5日発売され、「今年の欧州のヒーロー」を特集した「タイム」欧州版の表紙に、解放されたシモナ・パリさん(29)とシモナ・トレッタさん(29)の写真が掲載され、2人への注目度の高さを裏づけた。
イタリア有力紙「コリエーレ・デラ・セラ」とのインタビューで、シモナ・パリさんは、イラクに派遣されているイタリア軍は「疑いなく撤退すべきだ」と語り、イラク暫定政府は「米国人に操られたかいらい」と非難した。
「2人のシモナ」は、「米軍が引き揚げたあと、イラクに戻り人道支援活動を続けたい」としている。
これに呼応するかのように、左翼民主党の一部など野党勢力は、「部隊の早期撤退」の声をあげはじめた。左派系紙は、概して2人に好意的だ。
一方、2人が帰国直後、「イスラム教徒の人々に感謝している」と言っただけで、ベルルスコーニ政権への謝意は表明しなかったこともあって、保守系マスコミは2人に批判的だ。
保守系紙「フォリオ」は、イラクでは、欧米諸国などの数多くの人質が殺害されたことを指摘し、「2人は英雄扱いされるべきでない」との論説を掲載した。
2人はその後、政府への感謝の言葉を述べたが、一部与党議員からは、「日本でもやったように、イタリア政府は帰国費用を本人たちに払わせたらいい」との声も出た。
さらに、政府が強く否定しているにもかかわらず、身代金を支払ったという説がマスコミをにぎわしている。2人の解放交渉には、イタリア政府と同国赤十字社があたったが、「レプブリカ」は「100万ユーロ(約1億4000万円)が支払われた」と報じた。
イタリア政府は、「2人のシモナ」をめぐる論議で、イタリアのイラク政策は影響を受けないとの立場だ。イタリアのフィーニ副首相は3日、訪問先のカイロで「イラクに民主主義が再建されたら撤退する」と、来年1月予定のイラク総選挙後の撤退を示唆するにとどまっている。
(2004/10/5/23:00 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20041005i214.htm