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【ジャバリヤ(ガザ地区北部)樋口直樹】炎を上げる古タイヤの陰を黒装束の武装ゲリラが忍び歩き、イスラエル軍の戦車砲が夜の静寂を切り裂く−−。イスラエル軍の大部隊の攻撃を受け、連日多数の死傷者を出しているジャバリヤ難民キャンプに4日夜、入った。イスラエル軍侵攻を招いた武装ゲリラによるロケット弾攻撃の自制や対話による解決を求める声は、報復を誓う怒りと戦闘への高揚感にかき消され、誰もが出口の見えない戦いに身構えているようだ。
イスラエル軍の臨検を受けて、ジャバリヤ難民キャンプにたどり着いた時には、すっかり夜のとばりが下りていた。「ブーン、ブーン」という耳障りなプロペラ音に不快感が募る。「イスラエルのドローン(無人偵察機)だ」。助手の声に夜空を見上げたが何も見えない。
「やつは偵察だけでなく、小型のミサイルも発射するくせ者なんだ」。難民キャンプの入り口で古タイヤを積み上げていた若者は、憎々しげに空を仰ぎながらタイヤの間に詰め込んだ段ボールの切れ端に火を放った。ドローンの攻撃から武装ゲリラを守るための煙幕だという。
送電がストップしたジャバリヤ難民キャンプは闇の中に沈んでいた。路地裏では黒装束に目出し帽姿の武装ゲリラが目を光らせている。イスラエル軍はキャンプへの攻撃を強めることで、ロケット弾を発射するゲリラに圧力をかけようとしているが、住民がゲリラを見る目は好意的だ。腹をすかせたゲリラたちには温かい食事が振る舞われ、店の軒下を待機場所に貸し出す商店主も少なくない。
一方で、イスラエルの民間人を巻き添えにした無差別なロケット弾攻撃への批判も聞かれた。難民キャンプで暮らす自治政府職員のハサナットさん(51)は「イスラエル人であろうと、無実の民間人の殺害には反対だ」とつぶやいた。数十人もの戦闘の犠牲者をみとってきた地元カマル・アドワン病院のアサリ院長(54)も「無残な戦いを終わらせるには、双方の指導者が同じテーブルに座るしかない」と訴える。
だが、こうした穏健な意見は、報復の連鎖の中でかき消されつつある。「イスラエル軍の侵攻で60人以上の死者が出ているときに、報復するなと声高に主張するのはもはや困難だ」。ハサナットさんの声はキャンプにこだまする銃撃音の中に消え入りそうだった。
毎日新聞 2004年10月5日 11時28分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/afro-ocea/news/20041005k0000e030042000c.html