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10月5日 ◇◆ 安保懇報告書と中東の虐殺とミス代表に囲まれた小泉首相と ◆◇日本は隠れた資産を生かせ ◆◇
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□★□ 天木直人 10月5日 メディア裏読み □
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◇◆ 安保懇報告書と中東の虐殺とミス代表に囲まれた小泉首相と ◆◇
5日の新聞の数ある記事の中で、この三つがあたかも必然的に絡まっているよ
うに私の目に飛び込んできた。
小泉純一郎首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」が4日
報告書を提出した。その内容についてここで詳細を論じる余裕はない。すでに
これまでも断片的に報道されてきたから今更驚きもしない。しかしこれは憲法9
条を否定し、現行の安保条約さえも基本的に変更する深刻な報告書なのだ。
「01年9月11日、安全保障に関する21世紀が始まった。テロリストや国
際犯罪集団などの非国家主体からの脅威を、正面から考慮しない安全保障政策
は成り立たない」という、およそブッシュ政権のネオコンが好んで使うような
大げさな物言いから始まるこの報告書は、日本をますます米国の「テロとの戦
い」に従属させていくものである。
もしこのような考え方がわが国の21世紀の防衛政策として政府決定されてし
まえば、その後どのような「憲法改正論議」を戦わせてもすべて無意味になる。
茶番になる。いくら護憲を唱えても、軍備国家という事実が先行してしまうの
だ。しかもその決定は小泉首相の手で年末には決定されるのである。報告書を
受け取った小泉首相はこう言ったのだ。「安全保障は国民にとって一番大切な問
題だ。報告書を参考に、新防衛大綱を策定したい。」
この懇談会のメンバーを我々は忘れてはならない。荒木浩(座長、東京電力
顧問)、張富士夫(トヨタ自動車社長)、五百旗頭真(神戸大学教授)、田中明彦
(東大教授)、樋渡由美(上智大教授)、山崎正和(東亜大学長)、古川貞二郎(前
内閣官房副長官)、柳井俊二(前駐米大使)、佐藤謙(元防衛事務次官)、西元徹
也(元統合幕僚会議議長)である。見事な体制派、御用学者の集まりである。
まちがっても大江健三郎や坂本義和、前田哲男などは入らない。
今の日本は、同じ日本人でありながら、一方の考え方の集団がそれと対峙す
る考え方の集団を制しているのである。国民全体の意見を集約してよりよい日
本を作ろうという態度はまったくない。日本をこのように分裂させてしまった
責任がこの国の総理である小泉首相にあることは今更言うまでもない。
小泉首相はこの報告書を理解して受け止めたのであろうか。笑うに笑えない
お粗末な背景があることを5日付の朝日新聞(時時刻刻)が書いている。
懇談会は今年の四月から13回開かれたというが、首相が出席したのは初会合
と最終回だけであった。最終回に出席した首相は役人の書いた挨拶を読み上げ
ると、委員の説明も聞かずに退席したという。委員の一人がこう話した。
「残念ながら、首相に関心があるとはまったく感じませんでした」。首相の視
線はどこに向いていたのか。9月28日、報告の内容を説明する官僚に首相は質
した。「日米安保と国連との関係は、どういう位置づけになっているのか」。イ
ラク派遣をめぐる質問に、首相は「日米同盟も国際協調も重視している」こと
を繰り返し強調してきた。この点と齟齬がないかを確認すると首相は他の内容
に注文をつけずに説明を終わらせたという。
小泉首相が絶対視するブッシュ大統領の米国が、中東政策において歴史的な
間違いを犯している。いまパレスチナではイスラエルによる歴史的大虐殺が放
置されている。イラクの混乱も最悪の状況に入りつつあるが、その原因である
中東和平は、イスラエルの一方的な軍事攻撃によりパレスチナ人が滅亡の危機
に瀕しているところまで来ているのだ。日本では殆ど報道されていないが、外
電がしきりに報じているところによれば、パレスチナ自治区のガザでイスラエ
ル軍の大規模侵攻によりここ6日間で60名以上のパレスチナ人が殺されている。
難民キャンプは屠殺場と化し子供を含む民間人が抵抗するすべも無く殺されて
いるのである。
パレスチナ自治政府は国際社会に、「イスラエルの虐殺をやめさせてほしい、
さもなければ全滅する」と救いを求めている。アラブ連盟も緊急会議を開いて、
国連やカルテット(米、EU,ロシア、国連の4勢力)の介入を呼びかけようと
している。イラン、エジプト、ヨルダン、クウェートなどアラブはもとより仏、
スペイン、国際赤十字などが次々と声明を出している。米国までもが、「イスラ
エルの攻撃は過大なものである」と遺憾の意を表明している。しかし日本政府
からは何も聞こえてこない。外務省に中東政策はあるのか。知れば知るほどい
らだたしくなる。心が痛む。良心が悲鳴をあげている。
小泉首相は4日、ミス・インターナショナル世界大会代表を官邸に呼んでこう
言っている。「胸がときめいている。女性には縁の無い生活をしているから。目
の覚めるような美しい人を目の前にして、時差ぼけが治りました」
唾棄すべき言動である。この国の指導者として、政治家として、いやそれ以
前に一人の人間として、今彼が示すべき言動は他にあるはずである。
◇◆ 日本は隠れた資産を生かせ ◆◇
5日付の朝日新聞に明治学院大学の経済学教授ネギザデ・モハマド氏の投稿が
掲載されていた。日本の対イラク政策がこれまで築き上げた西アジア外交の資
産を崩してしまったというのである。私の解説は不要である。その抄訳を読ん
でください。
「混迷するイラクにどう向き合うか、日本は真剣に考える時期に来てい
る。・・・イラクを含む西アジアにおける日本の外交資産は何か。30年以上日本に
住み、この国と西アジアとの関係を研究してきたイラン人の立場から考えてみ
たい。・・・今日、世界で西アジアほど親日的な地域は無い。(しかし)日本自身
がこの地域でたゆみなく蓄積してきた外交資産、すなわち、日露戦争で列強を
破って以来1世紀にわたって培われてきた日本に対する信頼関係は、小泉首相
とブッシュ大統領のわずか10時間の会談で大打撃を受けた。日本は米国の同盟
国ならぬ追随国、従属国とみられ、このままだと小泉首相は日本の信頼をおと
しめた存在として記憶されるであろう。日本政府の姿勢がいかに損失をもたら
したか、日本国民はもっと認識したほうがよい。
米国が西アジアで信頼関係を築くのは困難だ。1953年のイラン政府転覆にお
ける米中央情報局(CIA)の関与は有名だし、イスラエル支援への不信感も根強
い。湾岸戦争で米国主導の多国籍軍駐留を受け入れたサウディアラビアは、い
まだに周辺諸国から冷たい視線にさらされている。トルコは従来の軍事協力方
針から転換。親米派の筆頭エジプトもイラクに派兵できないでいる。西アジア
の人々はほぼ例外なく、米英軍を侵略軍と見なしている。さらに、表面化した
組織的な「捕虜」虐待問題は、民主化・人権確立という米国の大義を台無しに
した。そんな米英に従って日本は何を得られるというのか。・・・
今ならまだ間に合う。西アジアでの日本の外交の『隠れた資産』が枯渇しき
らないうちに日本の役割を早急に再検討したほうがよい。
まず『同盟』と『従属』を区別するべきだ。・・・日本は自ら国際協力のビジョ
ンを打ち出す力と知恵があるはずだ。そのうえで友好国としてブッシュ政権に
働きかけて欲しい。
具体的には自衛隊を撤退させ国連を生かすことだ。その際に大切なのは、武
力に頼らない独自の信頼外交を愚直に追及し、それを地域の民衆に見えるよう
に前面に打ち出すことだ。軍事力をともなう「貢献」は対米追従としか見られ
ぬ愚策だ。日本が積み上げてきた軍事的野心のない平和国家への信頼という外
交資産を生かし、人道復興支援に徹した活動を進めるべきである。それこそが
親日感情を抱く西アジアに応える、世界史的にも意義のある道だといえよう。」
http://homepage3.nifty.com/amaki/pages/ns.htm