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パレスチナ情勢
何故歴史を学ぶのか(9月9日)
8日夜、アル・ジャジーラ・テレビは7回で完結したジブリールPFLP-GC議長のインタビューのフォローアップとして、スタジオにジブリール議長を招き、視聴者からの電話質問に答えさせるという番組を生放送した。司会はインタビューを行ったアハマド・マンスール記者、スタジオの場所は治安上の理由で伏せられた。なお議長の息子ジハードは2002年にベイルート市内で暗殺されており、イスラエルの犯行と信じられている。
質問者の一人に、ラーマッラーのハッサン・クレイシュPLC議員が居た。クレイシュ議員は第一次インティファーダ世代に属し、アラファトと同時期の1950年代に武装闘争を開始したジブリール議長よりは二回りほども若い。
クレイシュは、
「今はパレスチナ解放運動の過去の内情を明かすべき時期ではない」
と主張する。パレスチナ解放運動と闘争は終わっていない、現に自分たちは今も西岸・ガザで毎日占領と戦っている。こんな時に過去のパレスチナ解放運動の歴史、なかんずく、血まみれの内部分裂、権力闘争の歴史を暴くのは不適切だ。パレスチナ国家が建国され、解放闘争が終わった時に、初めて解放闘争を過去の歴史として検証すべきではないかと言うのである。
ジブリール議長の回答は明快しかし決然としていた。
「否。今後自分の世代が退き、貴君らの世代が革命を担っていくことになる。だからこそ、貴君の世代に対して我々の世代は、革命の歴史の中で、一体どんな事件が起きたのか、真相はどうであったか、どこで間違えたのか、という点をはっきりと伝えておく必要がある」
司会のマンスール記者も、
「では一体、いつなら歴史を学ぶのに適切だと言うのか?残念ながら、解放闘争の中で、パレスチナ人同士の殺し合いが行われたことは事実ではないか」
とコメントした。
ジブリール議長の証言には疑問が残る部分もあり、100%信用するわけにはいかない。しかし何のために歴史を学ぶのか、という観点からみれば、議長の意見はまったく正論と言える。逆に、PAの改革派とされるクレイシュ議員でさえ、歴史に対してこんな認識しか抱いていないとすれば大いに問題だ。これではPLOやPAの腐敗・汚職を糾弾する声が挙がる度に、
「今は民族が団結すべき時だ。内部で争論していては敵を利するだけだ」
という論法で口を封じてきたアラファトの発想と何ら変わらないではないか。
ガザの緊張激化(9月8日)
7日未明のイスラエル軍によるガザ砲爆撃の結果、ガザ情勢は緊迫の度を強めている。
7日の攻撃の標的は、ガザ市シュジュアイーヤ地区のアハマド・ヤシーン競技場だった。イスラエル領内から地対地ミサイルと戦車砲で攻撃した様だ。ヘリコプターも動員したという情報もある。現地時間で8日午前零時現在までに死者数は15人に達した。最近のパレスチナ側の一日の犠牲者数としては最大である。
イスラエル側は
「8月31日のベエル・シェバア爆破テロに対する報復としてハマース活動家を狙った。活動家たちは競技場で軍事訓練を受けているところだった」
と発表している。狙われた場所が場所だし、そんな時間に競技場に人が集まっているのも不自然だ。病院に搬送された遺体の多くは軍服らしきものを着ているし、民間人が巻き込まれた可能性は否定出来ないが、基本的にはハマースの兵士を狙ったというイスラエル側の発表はおそらく事実であろう。
しかし、いかにもタイミングが悪い。攻撃は、エジプトのアブ・アル・ゲイト外相とスレイマン総合情報局長官がラーマッラーでアラファト議長と会談した数時間後に実行された。
本来、外相と長官の訪問は9月1日に予定されていたのだが、ベエル・シェバア攻撃事件が起きたため延期されたという経緯がある。その後、情勢がしばらく鎮静化したので今回実現、アラファトに会っていくつもの改革要求を突きつけた。エジプトは、アラファトからは少しでも治安権限を取り上げてPAを強化し、一方でハマースには政権に参加させることで責任ある行動をとらせようと働きかけている。そうやってイスラエル軍撤退後のガザ情勢を安定させようと懸命に動いているのだ。イスラエルの今回の攻撃は、まるでその努力をぶち壊すためにやったかのようだ。
クレアPA 首相も腹に据えかねたのか、7日の閣議で
「ハマースは絶対に報復するだろう。そうなっても仕方ない」
という趣旨のことを口走ってしまったらしい。たちまち米国からクレームがついた。
しかし、早速ガザからカッサーム・ロケットが何発か発射され、スデロットでは負傷者も出た。ハマースの軍事部門にあたるカッサーム旅団は、今回のロケット砲発射はシュジュアイーヤ攻撃に対する一連の報復行為の第一弾に過ぎないとする声明を出し、今後の攻撃を予告した。
一方のイスラエルの首相報道官ラアナン・ギシンは7日にも
「ハマースに対してはどこでも攻撃の手を緩めない。ガザであれ、ダマスカスであれ」
と発言し、改めてシリア攻撃の意図をちらつかせた。
7日には、ラーセン国連中東和平問題特使が
「シリアはイスラエルとの和平交渉再開に真剣な興味を持っている」
と発言したり、刑期満了が迫ったパレスチナ人政治犯約150名が釈放されるなど、若干なりとも前向きの動きも見られたが、ガザの緊張は当面続きそうだ。
http://www.geocities.jp/beirutreport/palestine.htm