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2004.09.09
学校占拠で“官製報道” ロシア・メディア
真実報じれば『命』に危険
【モスクワ=滝沢学】「どうしてウソをついたのか」−。ロシアの学校占拠事件で解放後、人質や親族の多くが現場のロシア人記者団に投げ掛けたのがこの言葉だ。プーチン政権下、“官製報道”を続けたロシア・メディア。真実の報道には、命を懸けなければならない過酷な報道統制の現実がある。
「今起きていることは話せない。軍の行動はコメントできない」。特殊部隊が校内に突入を始めた三日午後、民間テレビ局NTVのフェフィロフ記者は、現場の様子を何度も尋ねてくるモスクワ本社スタジオに対し、悲痛の叫びを上げた。
マスコミへの厳しい統制強化は、二年前のモスクワ劇場占拠事件が契機だ。プーチン大統領は、劇場内で武装集団にインタビューを行ったNTVなどマスコミ各社代表を呼び、テロリストを利する行為だと激怒。NTV社長は辞任に追い込まれる一方、政府はテロ事件報道の指針として、人質の肉声報道、特殊部隊情報の収集などを規制する十六項目の勧告書を作成した。
新指針の下で最初の本格的なテロ報道となった今回は、「センセーショナルな報道だった」としてイズベスチヤ紙のシャキロフ編集長が事実上解任された。
今回の事件では、政権の対チェチェン強硬策への批判で知られるポリトコフスカヤ、バビツキー両記者も現場行きを阻まれた。特にノーバヤ・ガゼータ紙のポリトコフスカヤ記者は、機内サービスでお茶を飲んだ直後に倒れ、有害成分が検出され重体だという。
同紙は二年前、一九九九年のアパート爆破事件で当局関与を疑い取材中のシェカチヒン編集長が“食中毒死”している。
NTVは七日夜、校内の生々しいビデオ映像を放映した。武装集団が占拠直後に撮影したとされ、当局側は発生直後に入手したはずだが、映像で千人以上を確認しながら人質数は「三百五十四人」とうそを伝え続けた。
現場では、隣国グルジアのテレビ局「ルスタビ2」の記者ら二人も拘束された。「ビザなしの不法入国」が表向きの理由だが、当局発表と異なる見方を伝えて不興を買ったとの見方が有力だ。
イズベスチヤ紙からは、政権に批判的な論調が消え、七日付には「プーチン氏以外に社会の守護者はいない」との寄稿文まで掲載された。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20040909/mng_____kok_____002.shtml