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社説
09月04日付
■学校占拠事件――力と憎悪が招いた悲劇
ロシア南部、北オセチア共和国で武装集団に占拠されていた学校に、治安部隊が突入した。銃撃戦のなかで、人質だった生徒らに数多くの死者が出た。
チェチェン独立派がらみのテロが相次ぐなかで起きた事件は、発生から3日目に無残な結末を迎えた。
現場では爆弾の炸裂(さくれつ)音や自動小銃の乱射音が激しく鳴り響いた。逃げまどった人々の恐怖は想像にあまりある。
この武装集団も、チェチェンからのロシア部隊の撤退を求めており、独立派に属するものと見られる。
学校を占拠した間、彼らは水や食糧の差し入れを許さないばかりか、生徒たちを盾のように窓際に立たせもした。
この事件の前夜には、モスクワの地下鉄で爆破テロが起き、10人が死亡した。先月下旬には、2機の旅客機がほぼ同時に爆破されて90人が死んだ。
いずれの行為も非道というほかない。これでは、彼らが頼みとする住民の支持も国際的な理解も得られまい。自らの主張に耳を傾けてもらいたいのなら、こうしたテロ行為からは一刻も早く手を引き、二度と繰り返さないことだ。
ロシアの責任も決して軽くない。過去の人質事件では、何度も強硬策が悲劇を招いたのに、教訓は生かされなかった。
テロがなぜ続発するのかについて、冷静に考える必要もあろう。事件そのものの責任は武装勢力側にあるが、やっかいな問題は力で決着をつけるプーチン政権の体質に無縁といえるだろうか。
北オセチアは、隣接するチェチェンと同じ北カフカス地方にある。首都のウラジカフカスが「カフカスを征服せよ」を意味するように、この一帯はロシア帝国以来の南進政策における要衝である。
プーチン大統領は、チェチェンで軍や治安部隊を大量動員して独立派勢力を掃討する強硬策を取り続けてきた。それが憎悪と報復を生む悪循環となり、現在の事態につながったのは明らかだ。
一方、北カフカスに隣り合うグルジアでは、同国からの独立を目指す勢力をロシアがさまざまな形で支援してきた。これがグルジア側の怒りを買い、逆に同国内にチェチェン独立派を支援する動きを生んでいる。自らが地域の不安定さを強めていることに思いをいたすべきだ。
気になるのは、一連のテロについて、中東のイスラム過激派「イスランブリ旅団」が犯行声明を出していることだ。
国際テロ組織アルカイダとの関係が指摘される一派である。外国の勢力が介入を始めたとなると、事態はさらにこじれることが避けられない。プーチン氏は、独立派との対話にも努め、事態の打開を急がなければならない。
米欧をはじめとする国際社会は、「テロとの戦い」にロシアをつなぎ留めようと、チェチェン問題での批判を控えてきた。だが、これ以上の混乱は、世界の安全にも大きな脅威となりかねない。
各国首脳は、そのことを直言すべき時期を迎えている。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040904.html