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(回答先: フランスのスカーフ着用禁止法を最初に攻撃したのはザワヒリ(仏テレビF2) 投稿者 さすれば 日時 2004 年 8 月 30 日 14:15:02)
正式な法律名は
「公立小、中、高等学校における世俗性原則の適用に関する法律」です。
http://www.assemblee-nat.fr/12/dossiers/laicite.asp
「スカーフ禁止法」という名称が日本語で独り歩きすると、この法律が採択されるに至ったさまざまな歴史的・社会的経緯が捨象され、あたかもフランス社会がイスラム教徒のみを狙い撃ちして女性がベールを(スカーフという訳も、あまり適当ではありません)かぶることを禁止した、というあやまったイメージが定着しかねないので、注意が必要だと思います。こうした誤解から、「禁止法を推進したのはフランスのユダヤ人だ」という、根拠の乏しい主張がされたりしていますので。
もちろん、この法律の結果、抑圧の主たる対象となってしまうのはイスラム教徒の女性のベール着用ですので、フランスでも「公立学校におけるベール禁止」という言い方はよく行われ、この禁止がさまざまな批判の対象になっています。しかし、「ベール禁止法」という言い方はされません。
この法案の根本にあるのは、フランス社会の基本原理の一つとされている「世俗性(ライシテ)」、つまり「公共分野からは一切の宗教性を排除する」を厳格に公教育の場に適用しようというものです。
したがってイスラム教徒の女性のベールだけではなく、ユダヤ教徒のキッパ(丸帽)、キリスト教徒の大きな十字架、さらにはシーク教とのターバンなどにも適用されます。しかしながらあくまでもそういった宗教的帰属を「明らかに示すmanifester」ことが問題とされるので、シャツの下に隠れるような小さな十字架のペンダントなどは認められています。
また、この法律はイスラム教徒の女性が町中でベールをかぶることまで禁じる、などというむちゃなものではなく、あくまでも公教育を受けている児童・生徒が校内において、ということです。そのため、校門までベールをかぶってきたイスラム教徒の女性とが校内に入る時はベールを取り、下校時にまた着用するといった光景が相次いでいます。
我々から見ればなんでそこまで公立学校というものを厳密に考えるのか、不思議に思えますが
1)フランス社会において、公共空間というものは、フランス共和国の原理と密着に結びついていること
2)その公共空間に宗教性を持ち込まないという「世俗性」の原理は、フランス社会の根本的理念の一つであること。
この2点は、少なくとも「ベール禁止問題」について議論するならば、理解しておくべき前提だと思います。
むろん、この指摘は、フランスにおける「公立小、中、高等学校における世俗性原則の適用に関する法律」を積極的に擁護するためのものではありませんので、念のため。
参考投稿:http://www.asyura2.com/0406/war59/msg/208.html
それから、公共の場でのベール着用問題は、「世俗性原理」をやはり国是としているトルコでも問題となっていますね。
フランスにおける「公立小、中、高等学校における世俗性原則の適用に関する法律」が、国内イスラム教徒の抑圧装置としても機能しているのは確かです。フランス国内のイスラム系諸団体は、極めて穏健に、しかし粘り強く、この法律の問題点を批判し続けています。非イスラム教徒のフランス人からも、個人の自由を侵し、共和国原則と矛盾を来す、という批判の声があがっています。
しかしながら、この法律に対する抗議が、イラクにおいてフランス人を拉致しなければならいほどの緊急かつ差し迫った問題であるかというと、首をひねらざるを得ません。トルコにおけるベール着用問題については、犯人側は何も言っていませんし。
1)フランスのベール着用問題の実体に関して無知な連中の跳ね上がり的行為か。
2)要するに欧米人であればすべて「敵」という発想から、これまでターゲットになってこなかったフランス人を狙ったのか。
3)なにかフランスに政治的ゆさぶりをかけたい別の意図があって、ベール問題はその口実として使っているだけなのか。
以上の3つの仮説が考えつきますが、私としては、この3)の可能性が最も高いと思います。
今後のフランス政府の対応を通じて、少しずつ明らかになってくるかもしれません。