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ひしひしと近づく「魔女狩りの時代」(バルセロナでの10名の逮捕について)
9月15日付のエル・ムンド紙(電子版)からですが、まず報道の概略をお知らせします。
スペイン最高裁イスマエル・モレノ判事は、バルセロナに住む10名(そのほとんどがパキスタン人)に対して逮捕状を出し、カタルーニャ自治警察が本日の明け方に彼らを逮捕しました。
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『最高裁は、バルセロナで、イスラム・テロに関連して10名の逮捕状を出す』
http://www.elmundo.es/elmundo/2004/09/15/espana/1095232398.html
『バルセロナでの10名の逮捕者の部屋から、ビン・ラディン関連の本が発見される』
http://www.elmundo.es/elmundo/2004/09/15/espana/1095256129.html
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一体何の容疑なのか、と読んでみますと次のようなことです。(新聞の表現をそのまま訳します。)
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最高裁筋の発表によると、「組織化された犯罪者のグループ」であり、「ある特定の時期に、スペイン外にある何らかの過激派組織の下部組織に援助を与えた可能性があるだろう」という追究を受けているのかもしれない。
(以下、スペイン語原文)
Las mismas fuentes señalaron que se trata de "un grupo de delincuentes organizado" y se estaría estudiando "el apoyo que, en algún momento concreto, podrían haber dado a algún grupo radical de nivel bajo fuera de España".
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他に言いようが無かったのか、と言いたくなるほどいい加減であいまいな表現で、要するに「何となく悪そうなやつだ」ということ以外にはさっぱり分かりません。
で、逮捕した警察は何を言っているか。これも記事の表現をそのまま翻訳します。
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カタルーニャ警察の広報係ペレ・ジャネーによると、この自治警察による捜査は対組織犯罪として行われ、今の時点では、過激派組織に対して逮捕者たちが援助した可能性を、そしてその協力の「分野と方法」を知るために、押収した資料を分析中である。
彼は「我々は、イスラム・テロリストについてではなくスペイン外の過激派への支援組織について話しているのだろうと思う。」と話を続け、「アル・カイダの1細胞についての話は全くしていない。」と強調した。
(以下、スペイン語原文)
Según el portavoz de la policía catalana, Pere Jané, la operación de los Mossos va dirigida contra la delincuencia organizada y en este momento se está analizando la documentación incautada para conocer el posible apoyo de los detenidos a grupos radicales, "los ámbitos y los métodos" de esta colaboración.
"No estaríamos hablando de terrorismo islámico", sino de "un grupo de apoyo a radicales fuera de España", sostuvo. "En ningún momento estamos hablando de una célula de Al Qaeda", añadió.
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最高裁の命令で10名のパキスタン人中心のイスラム教徒を逮捕した警察も、一体何の容疑で逮捕したのか、さっぱり分かっていないのです。偽の身分証明書は押収されたようですが、住居の中では武器や爆薬などは何も発見されておらず、氏名も詳しいデータも今のところ全く発表されていません。
ところがところが、です。新聞では、上の記事の見出しにもあるように「イスラム・テロに関連して」、「ビン・ラディン関連の本」と、はなから強烈なイメージ付けが行われています。記事には「ビン・ラディン関連の本とビデオ多数が発見された」と書かれていますが、読者としては『バルセロナ、イスラム・テロ、ビン・ラディン、パキスタン人』がモヤモヤと一体になって、何となく「イスラム・テロリストが身近にいる!エライコッチャ!」という気分だけが生まれてくるように誘導しているようです。
彼らが住んでいる場所は、バルセロナの旧市街地でも最も貧しい、19世紀前半のレンガと「木筋モルタル」製の、ロクに日光も当たらない水洗トイレはおろかまともな水道さえ完備していないアパート群が並ぶ地区です。そこにはパキスタン人のほかに、バングラデシュ、モロッコ、黒人アフリカ諸国などから来た連中が、多くが不法移民ですが、ごちゃごちゃと住んでいる場所で、南極以外どこにでも住んでいる中国人でさえもさすがにこの地区には立ち寄りません。もっともここは「バリオ・チノ」つまり「中華街」という名前がついているのですが。(ただしここに中国人街があった歴史は無く単に名前だけです。)ただでさえも一般のスペイン人は「恐ろしい地区だ」として近寄らないのですが、こんなことがこれからたびたび起こるとすれば、その辺に住んで何となくイスラム系らしく見える者がたまたま「ビン・ラディン関連の本」でも持っておれば、「こりゃヤバイ。警察に通報しよう。」ということになりかねないでしょう。
ヨーロッパでは大概の場所で魔女狩りの歴史があります。スペインには残虐の極みを尽くした異端審問がつい100年前ほどまで続いていました。つい30年ほど前に終わったフランコ独裁政権時代には、左翼狩りと(少数)民族主義者狩りが、異端審問同様に行われていました。その多くが民間からの密告によるものです。
8月後半からETAも各地で小規模な爆破事件、爆破未遂事件を繰り返しています。犠牲者は出ていませんが。また魔女狩りと異端審問の時代がゾロ近づいているようです。テロへの恐怖感をベースに、国家権力が主導しマスコミが扇動して、次第に人々が無自覚のうちに密告屋にされていく。今回の10名の逮捕者が本当に何なのか、は分かりませんが、恐怖と疑心暗鬼をベースにした管理社会が強引に作られている最中であることを示しているのは、間違いないと思います。
今からが、9.11と3.11の真実を求め「魔女狩りの時代」を食い止めようとする人々と、それを押しつぶそうとする権力・民間密告団との、戦いの本番なのでしょう。