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テロ戦争のずさんさの裏にあるもの(田中宇の国際ニュース解説) ― 田中宇さん、苦しんでいるようです。
http://www.asyura2.com/0406/war59/msg/1332.html
投稿者 シジミ 日時 2004 年 9 月 15 日 23:04:13:eWn45SEFYZ1R.
 

田中宇の国際ニュース解説 2004年9月14日 http://tanakanews.com/


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★テロ戦争のずさんさの裏にあるもの
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 911事件から3年が過ぎたが、あの事件をめぐる謎はほとんど解けないま
まになっている。事件をめぐる謎の一つは、いまだに犯人像がよく分からない
ことである。

 事件の実行犯とされた19人は全員が、4機のハイジャック機の衝突や墜落
とともに死亡したとされるが、事件後、911に関与したアルカイダのメンバ
ーとされる実行犯以外の容疑者として、アメリカで4人、ドイツで2人のアラ
ブ系の男たちが逮捕され、起訴された。ところがその後、これらの全員の裁判
で、検察側であるアメリカ当局は、これらの男たちが911のテロ計画に関与
したことを立証することができず、無罪になったり、別件の微罪で終わったり
するケースが相次いでいる。

 最近話題になったのは、アメリカのデトロイトでアルカイダの休眠組織に加
わっていたとされる、ファルーク・アリハイムード(Farouk Ali-Haimoud)ら
アルジェリア系とモロッコ系の男たち3人に対する裁判である。9月2日、デ
トロイトの連邦地方裁判所は、3人に対する訴えを棄却し、3人は無罪となっ
た。棄却の理由は、検察側の司法省が捜査段階で多くの誇張やでっち上げを行
っていたことを認めたためだった。
http://abcnews.go.com/wire/Politics/ap20040903_401.html

▼テロの下見?、実は観光旅行

 3人は911事件から6日後の2001年9月17日、FBIが全米で行っ
た容疑者探しの中で逮捕されたが、3人は最初からFBIの捜査リストに載っ
ていたわけではない。他の容疑者を探して家宅捜索に入ったデトロイトの家に、
その容疑者ではなく3人が住んでいたため、FBIはこいつらも怪しいと考え
て3人を逮捕した。

 裁判で検察側は、3人が休眠中のアルカイダ組織のメンバーで、いずれテロ
を行おうと準備をしていたと主張した。3人の部屋から見つかったビデオテー
プにニューヨークやディズニーランド、ラスベガスなどの観光地が映っていた
ことから、3人はこれらの観光地を標的にテロを行おうとして下見し、ビデオ
を撮ったと検察側は法廷で主張した。だが、ビデオを撮ったのは3人ではなく、
その友人のアルジェリア系の学生で、夏休みなどにニューヨークやディズニー
ランドに観光旅行したときに撮ったテープが3人の家に置きっ放しになってい
ただけだとこの学生は証言した。

 ビデオはどうみても観光地を撮っただけのもので、捜査を担当したFBIの
中からも、テロの下見を行ったという証拠にはならないという反論が出た。検
察内部でも同様に、ワシントンの司法省本部はビデオの証拠としての妥当性を
疑ったが、裁判を担当するデトロイトの担当検事は譲らなかった。
http://abcnews.go.com/wire/Politics/ap20040901_301.html

 この裁判では、検察側が重視した証人がいた。ヨセフ・ミムサ(Youssef
Hmimssa)というモロッコ系の男で、彼はアリハイムードら容疑者3人から一緒
にテロをやろうと誘われたと法廷で証言した。だが、ミムサはクレジットカー
ド詐欺など10件の犯罪で有罪を宣告されている人物で、これらの罪について
再審請求する権利の見返りとして、テロ組織に誘われたという証言を行うとい
う司法取引に応じた経緯が、その後明らかになった。ミムサは当初、3人のこ
とを知らないと話していたが、3人に対する裁判が始まった後の2002年6月、
証言を変えて司法取引に応じた。
http://www.detnews.com/2004/specialreport/0403/29/a01-106160.htm

 3人の容疑者は今年6月、大陪審の評決で有罪と認定され、ブッシュ政権は
この有罪を「テロ戦争における重要な勝利だ」と宣伝した。当時すでに、アメ
リカで行われていたもう1件の911テロ容疑の裁判(ザカリアス・ムサウイ
被告)では、検察側が容疑を裏づける証拠を出すことができず、裁判を維持す
ることが難しくなっており、米当局がテロリストを有罪にできる裁判は、アリ
ハイムードら3人のケースだけになっていた。
http://tanakanews.com/d1028moussaoui.htm

 だがその後、司法省のワシントン本部は、デトロイトの検察支部の担当検事
が証拠のでっちあげをやっていた疑惑を強めた。裁判所は陪審の有罪評決を受
け、3人の被告に対する刑の重さを確定する過程に入っていたが、今年8月に
なって、司法省はデトロイトの裁判官に対し、アリハイムードら3人の裁判を
棄却するように要請し、3人のテロ容疑は無罪になった(別件のテロと関係な
い文書偽造容疑で裁き直される)。

▼ドイツでも裁判取り下げ

 アメリカ司法省は、アリハイムードら3人に対する訴えを棄却してほしいと
裁判所に要請したのとほぼ同時期の先月上旬、ドイツで行われている同種の裁
判についても、被告を無罪にして裁判を終わらせてしまう方向の新情報をドイ
ツ側に提示している。

 911事件の実行犯の主犯格とされるモハマド・アッタは事件前にアメリカ
に渡航するまで、ドイツのハンブルグに住んでいた。そのためドイツには、テ
ロの準備段階では参加したが実行犯にはならなかったアルカイダのメンバーが
いるはずだということになった。FBIなど米当局が与えた情報をもとにドイ
ツ当局が捜査した結果、ムニール・エルモサデクとアブデルガニ・ムゾウディ
という2人のモロッコ人青年が逮捕され、裁判にかけられた。

 被告弁護側は、2人のモロッコ人はテロの計画とは関係ないと主張し、テロ
を計画したアルカイダの幹部のうち、米当局に拘束されている連中に聞けば、
2人が計画とは関係ないという証言が得られるはずだとして、ラムジ・ビンア
ルシビら米当局が拘束中の何人かのアルカイダ幹部を証人として申請した。だ
がアメリカ側は、ビンアルシビらを法廷に出すと、テロ対策上危険な発言を行
うかもしれないとして拒否した。

 米側は、当局が書き取った尋問記録なら提出できると言ったが、ハンブルグ
の裁判所側は、それだと信頼性が低下するとして断り、代案として、証人を法
廷に出すことが難しいならビデオ回線を使って証言させるのでも良いと再提案
したが、これは米側が断った。ハンブルグの裁判所は、米側が証人を出せない
以上、2人の被告に対する訴えは根拠が薄いものになるとして、2人は有罪に
しにくいと判断し、昨年末と今春に相次いで釈放した。

 すでにこの時点で裁判は終わりかけていたが、8月11日、アメリカ司法省
は突然ハンブルグの裁判所に対し、ビンアルシビら3人のアルカイダ幹部の尋
問記録をファクスで送ってきた。そこには、3人のアルカイダ幹部が、ハンブ
ルグで起訴中の2人のモロッコ人たちは911のテロ計画とは関係ないと言っ
ている証言が記載されていた。これによって、モロッコ人2人は911に関与
したテロリストであるという米当局の主張は崩壊し、2人が無罪になる可能性
がさらに高まった。
http://www.dw-world.de/english/0,3367,1432_A_1294236_1_A,00.html

▼あまりにずさんなテロ警報

 ワシントンの司法省から、デトロイトとハンブルグの裁判所に相次いで送ら
れた文書は、911の犯人像を明らかにするはずだった裁判を、次々と冤罪的
に終わらせる方向に動かしている。これは米当局にとって、あきらかに自滅的
な行為である。911事件から3年が経ち、もうやらせ的な裁判を続ける必要
がなくなったのか?。

 そんなはずはない。11月に大統領選挙を控え、ブッシュ政権はテロ戦争を
成功させているというイメージを作る必要があるのに、米当局はそれとは逆の
動きをしている。すでに、ニューヨーク市民の49%が、ブッシュ政権の高官
たちは911にテロ事件が起きると知りながら、わざと防がなかったと考えている。
http://www.zogby.com/news/ReadNews.dbm?ID=855

 これと同じ種類の動きとして、米当局が911以降、たびたび米国内で発令
しているテロ警報(オレンジ色警報)には根拠が乏しいものが目立つ、という
問題がある。米政府はテロ警報の危険度を高い順に赤、オレンジ、黄色、青、
緑と5段階に分けており、これまで最悪の赤(公共機関の閉鎖などの対策がと
られる)は発されたことがないが、2番目のオレンジは何回も発令されている。
だが発令から何日か経った後、実は警報の根拠となる情報が曖昧だったり間違
っていた、といったニュースが新聞に載ることが繰り返されている。

 8月1日にニューヨークなど3都市に発令されたオレンジ警報は、根拠とな
った情報が911以前に得られたもので、そんな古い情報に基づいてなぜ今警
報が発令されるのか根拠が薄いとマスコミなどで批判された。ちょうど大統領
選挙へのケリー候補の擁立を決めた民主党大会が開かれた時期で、ブッシュ陣
営が民主党大会から国民の目をそらしてケリーの人気上昇を防ぐためにテロ警
報を発したのではないか、などという憶測を呼んだ。
http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A37911-2004Aug3

 5月末に発令されたオレンジ警報は、司法省のアシュクロフト長官が、他の
関連官庁に相談せずに勝手に発令したもので、テロ捜査などをめぐる自らに対
する批判をそらすため、司法長官が根拠なくテロ警報を発したのではないか、
と指摘された。
http://www.cbsnews.com/stories/2004/06/07/terror/main621523.shtml
http://www.commondreams.org/views04/0615-05.htm

 昨年クリスマス直前に発令されたオレンジ警報は、フランスなどからアメリ
カに飛んでくる旅客機がハイジャックされる恐れがあるとして発令され、パリ
でアメリカ行きの飛行機に乗り込もうとする数人の乗客がテロリスト容疑をか
けられた。だが、容疑者たちはテロとは関係ない子供や老人で、仏政府はアメ
リカの間違いを指摘した。米政府はそれを聞こうとせず、しばらく警報を解除
しなかったが、1週間ほどたってから、間違いだったことを認めた。

 このような粗悪なテロ警報の発令が目立つため、欧州などの諜報関係者の中
には、ブッシュ政権は人々の恐怖心をわざと掻き立て、それをブッシュ大統領
の再選など政治的な目的に使おうとしているのではないか、と疑う人が出てき
ている。
http://fairuse.1accesshost.com/news2/latimes251.html

 しかし、人々の恐怖心を煽るのが目的ならば、1週間たって根拠が間違いだ
ったとばれるような警報を発令することは、むしろ人々に政府に対する猜疑心
を抱かせてしまう。米当局が無能なのですぐばれるウソしかつけないのだ、と
考える人もいるかもしれないが、それぞれのテロ警報の出し方を詳細にみると、
フランス政府がすぐに間違いを指摘しているのに、それを押し切って警報を発
令するなど、無能と考えるよりも、わざとばれるようにウソ警報を出している
と考えたくなる。

▼テロ戦争を永遠化するために捜査を潰す

 テロ戦争に対する米政府の対処のしかたを見ていると、テロ戦争をなるべく
長く続けたいという意図が感じられる。「アメリカの言うことを聞かなければ、
悪の帝国ソ連の味方とみなす」といった善悪二元論でアメリカが世界に対する
支配を40年間続けたのが「冷戦」だったと考えることができるが、911後
のテロ戦争は「ソ連」を「アルカイダ」に変えただけの構造になっている。

 ソ連は40年間で疲弊し、アメリカの敵であることをやめた後に崩壊したが、
アルカイダは実態が不明なうえ、テロは大して金をかけずに実行できるため、
テロ組織をアメリカの諜報機関などが裏から少し支援してやれば、アルカイダ
は長期にわたって「世界的な強敵」として存在し続けることができる。

 最近、パキスタン政府が熱心にアルカイダの検挙を行っている。パキスタン
当局に逮捕された後、寝返ってパキスタン当局に協力するスパイとしてアルカ
イダの内部に戻り、内部情報をパキスタン当局に伝えてくる転向スパイも得る
ことができた。だが、米当局は8月初め、転向スパイをやっている人物の名前
をニューヨークタイムスにリークしてしまった。このケースなどは、アルカイ
ダを永遠の存在にしたいと考える米当局内の誰かが、本気でアルカイダを退治
しようとするパキスタン政府を妨害する目的で、転向スパイの名前をばらして
しまったのだと考えられる。
http://www.antiwar.com/cole/?articleid=3382

▼永遠のテロ戦争はとりやめ?

 911後しばらくたって、私はテロ戦争の本質とは上記のようなものではな
いかと考えるようになったのだが、その後の米当局のあまりにずさんなやり方
を見ていると、米政府はもっとスマートに「永遠のテロ戦争」を演出できるは
ずなのに、なぜわざと失敗してばれるような事態に陥るのか、という新たな疑
問が湧いてきた。

 そこから導き出される私の新たな仮説は「911事件の直後は、アメリカの
上層部は全体として、永遠のテロ戦争を遂行する方向で暗黙の合意が成立して
いたのだが、その後、このテロ戦争状態を利用してネオコンがイラク戦争とい
う予定外のプロジェクトを開始し、侵攻を実現した上、余勢をかってイランや
シリアまで政権転覆しようと動いているため、これ以上テロ戦争を続けるとネ
オコンにアメリカを潰されてしまうという懸念を強める勢力がアメリカ上層部
に広がり、テロ戦争の欺瞞をわざと米国民の目にさらして終結させようとする
密かな努力がなされているのではないか」というものである。

 911の当日の展開を見ると、幾重にもわたって防空体制が機能しなかった
ことが分かるが、これは米当局の中の誰かが意図的に防空体制を混乱させるこ
とに成功した結果起きたことだと思える。これは重大な犯罪行為なので、ふつ
うなら「誰が防空体制を混乱させたか」ということが追及されるべきなのだが、
超党派の911調査委員会などもその点はまったく触れていない。これを問題
にしているのは権力の外にいる人々だけである。アメリカの上層部全体で、
911事件のおかしな点には目をつぶるという暗黙の合意があると感じられる。

 上層部が談合していると感じられる911事件に比べ、イラク侵攻はクーデ
ター的な出来事である。侵攻が実現する前に、アメリカ上層部の中でかなりの
抵抗があった。湾岸戦争以来のイラクとの関係を詳しく知っているパパブッシ
ュやベーカー元国務長官らは、イラク侵攻に反対を表明したし、パウエル国務
長官やマイヤーズ統合参謀本部長らは、ウォルフォウィッツ国防副長官らネオ
コンと鋭く対立したことが分かっている。

 米政界の右派勢力の人々の大半は、イラク侵攻の開始前、侵攻に賛成する意
思を表明しているが、その後、イラク占領の泥沼化が長期化すると分かったた
め、今春ぐらいに「ネオコンに騙されていた」と表明する右派論客が相次いだ。
こうした展開からは、米政界の中に、それまで規定路線としてきた世界戦略を
変更した方が良いと考える勢力がいると感じられる。(イラク占領が泥沼化し
そうなのは開戦前後から分かっていたことなので「ネオコンに騙された」とい
う言い方には疑問もあるが)

 アメリカ上層部における権力闘争は、敵を欺くためなのか、誰と誰の戦いな
のかも分からないような状態の中で展開されているため、仮説以上の断言がで
きないのだが、911を機に長いテロ戦争を展開するという秘められた戦略が、
秘められた状態のまま変更されようとしているようにも感じられる。


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/e0914wtc.htm

★関連記事

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http://www.cnn.com/2004/WORLD/meast/09/02/binladen.wealth.ap/index.html

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http://www.wsws.org/articles/2003/jun2003/detr-j07.shtml

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http://www.antiwar.com/justin/?articleid=3271


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