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9月15日付・読売社説(2)
[プーチン政権]「口実にも聞こえる“対テロ戦争”」
テロを口実に、独裁体制を目指すものではないのか。
ロシアのプーチン大統領が打ち出した、新たな政治体制改革案のことである。
これまで直接選挙で選ばれていた地方自治体の首長を、事実上、大統領による任命制とする。
プーチン大統領は、北オセチヤ共和国で起きた学校占拠事件の後、テロとの戦いのため連邦の統一性を強化する、としていた。改革案は、大統領の予告通り、中央集権の強化を狙ったものだろう。
一方、小選挙区比例代表並立制で実施してきた連邦下院選挙を、政党のリストに基づく比例代表制に一本化する。
ロシアの小選挙区では、政党の看板よりは地元の支持基盤を背景にした野党の有力者が選ばれることも、少なくなかった。新しいシステムの下では、こうした議員らの選出が困難になる。大統領与党が三分の二以上を占める下院で、その支配力をさらに強めたい思惑が見える。
一九九〇年代、エリツィン前政権が、連邦国会の構成などを定めた憲法を制定し、また自治体首長の選挙を実現して以来、最大の制度変革である。改革案を実現するため、今後、関連法案が下院に提出される予定だ。
大統領は、対テロ戦争における「すべてのレベルの権力機関の行動を統一させる必要性」を強調した。
確かに、学校占拠テロ事件への対応では、治安機関の不手際が目立った。
人質の救出体制が整えられ、統制のとれた行動がとられていれば、三百三十人以上という多数の犠牲者を出すことはなかったかもしれない。少なくとも、武装した市民たちを現場に近づけるような愚は、避けられたはずだ。
プーチン大統領が、ロシア治安機関の脆弱(ぜいじゃく)ぶりに言及し、その改編・強化の必要性を訴えたのは当然だった。
しかし、発表された政治体制改革案を見る限り、その狙いは、単に治安の強化にとどまらないようだ。
自らの手で指導者を選ぶことができなくなれば、非ロシア系民族の中央政府に対する不満が増幅する恐れもある。今回の改革案は、テロ撲滅のための有効策には必ずしもならないのではないか。
プーチン政権は、これまでにも国内を七つの連邦管区に分け、任命された大統領全権代表が地方へのにらみを利かせてきた。マスメディアに対する統制を強めるなど、その手法には民主主義と相容(い)れないところがあった。
対テロ戦線の強化に、日本としても異存はない。だが、独裁的な体制が隣国に生まれることは歓迎できない。
(2004/9/15/02:24 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040914ig91.htm