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【ソウル１２日＝夕刊フジ特電】テポドン地下施設で起き、軍の反乱か−。８日深夜から９日未明にかけ、北朝鮮北部の両江道（リャンガンド）金亨稷（キム・ヒョンジク）郡で起きた大爆発。死者１５０人を出した４月下旬の竜川（リョンチョン）の列車爆発事故の３倍の規模で、ダイナマイト１０００トン分という。当初流れた核実験の可能性はないが、建国５６周年記念日と一致したことや、独裁者・金正日（キム・ジョンイル）総書記の愛妻、高英姫（コ・ヨンヒ）夫人の死亡直後とも重なり、王朝３代目の後継問題もからむ軍部や不満分子による反乱やクーデター未遂、謀略との見方も出てきた。
【核実験はなし】
韓国の高濃縮ウラン実験やプルトニウム抽出も発覚しており、北の核開発に絡む６カ国協議の月内開催や、拉致問題の全面解決を目指す日朝政府間交渉が暗礁に乗り上げそうで、朝鮮半島情勢が一気に流動化する最悪のシナリオも出てきた。
【巨大なきのこ雲】
韓国の聯合ニュースによると、爆発は８日午後１１時半（日本時間同）と９日午前１時（同）ごろ、中国吉林省と国境を接する山岳地帯の両江道金亨稷郡で計２回起き、現場上空で直径３．５−４キロの巨大なきのこ雲が観測された。
爆発の痕跡は、米国の偵察衛星がとらえており、関係国が事実関係の確認を急いでいる。
同様の事故は０２年、咸鏡北道（ハムギョンプクド）のテポドン発射基地でエンジン噴射実験中に起きており、弾道ミサイルに弾頭を装着する際に起きたことも考えられる。
【軍事の要衝】
金亨稷郡は、海抜１３００−２０００メートル級の山々が連なる山岳地帯で平均海抜は９９０メートル。
朝鮮日報によると、金亨稷郡嶺底里の地下ミサイル基地は、９９年初めからミサイル坑道施設工事が始まった。発射口は１０カ所にのぼる。
９９−００年には、日本全土を射程に置く弾道ミサイル「ノドン」（射程１０００キロ）約２０基が配備されたほか、テポドン１号（同約２０００キロ）、米軍基地のあるグアムや米本土の一部を射程に置くテポドン２号（３５００−６０００キロ）の発射可能な基地が米偵察衛星で確認されている。
軍事施設の大半は中国に向いた斜面の地下に隠されており、中国上空を通過しなければ空襲は不可能。韓国が保有する射程１８０キロのミサイルも届かない「軍事的な要衝」となっている。
０２年１０月に北の核問題が再燃した際、韓国メディアがウラン濃縮施設が存在する可能性のある３カ所の１つに挙げた。
【不穏な情報】
当初浮上したのは、ミサイル基地など軍事施設での爆発事故や、竜川駅と同じ鉄道爆発事故。
竜川の事故では、輸出しようとしたミサイル部品や液体燃料の一部が列車に積載され、大爆発を引き起こした。
日朝関係筋は「今回の爆発は、爆発の規模や状況から武器庫や軍需工場など軍事的な爆発物と関連していることは明らかだ」と説明する。
現場付近に鉄道が通っているため、何らかの爆発物満載の列車が関係しているのではないかとの見方も捨て切れない。
竜川でいまだに金総書記を狙ったテロ説が消えないように、日朝関係筋は「今回も１００万人の朝鮮人民軍や朝鮮労働党などの不満分子によるクーデターや内紛をにおわせる不穏な情報も出てきている」という。
実際に最近、不満分子による軍事施設への攻撃が相次いでいる。
【反日の地】
金亨稷郡は８８年、金総書記の祖父で、故金日成（キム・イルソン）主席の父で漢方医だった金亨稷氏の名前をとって付けられた。同郡は木材集積地としても知られ、たんすや机など木製日用品の生産が主産業とされる。
両江道には、金総書記の実母で３１歳で亡くなった金正淑（キム・ジョンスク）、故金主席の叔父の金亨権（キム・ヒョンクォン）の名を冠した郡もあり、抗日革命闘争の象徴的な地としても知られる。
くしくも大爆発のあった９日は、「建国５６周年記念日」。軍部がこの日に併せ、反乱やクーデターや謀略を企てた可能性も捨てきれない。
北の軍部は、偶像化が進む高夫人による厚遇で統制がとれていたが、夫人の死去で息子２人の後継問題も絡み、金王朝の秩序が乱れているというのが一般的な見方だ。
夫人の生前にも、金亨稷郡の軍事施設でも、さまざまな内部クーデターが起きていたことが確認されているという。
【不気味な沈黙】
北は今回も一切のコメントを出していない。
朝鮮で食糧支援活動を続ける世界食糧計画（ＷＦＰ）平壌事務所によると、１３日現在、支援要請はない。竜川事故では事故直後に国際支援要請があったが、今回は国家機密の軍事基地と関連しているためとみられる。
両江道の大半は、配給モニタリングのための職員を派遣できない制限地域に指定されている。ＷＦＰ関係者は「北当局は理由を明示しないが、軍事施設などが集中しているためではないか」と受け止めている。
【中国も貝に】
「北の後見人」中国政府も談話を出さず、新華社通信など国営メディアも報じていない。
国境付近に大量の軍を配置する中国は「隣国の異変」を察知したとみられるが、詳細な情報収集を進め、北にも配慮しながら、６カ国協議に悪影響を与えないよう慎重に対応する構えだ。
北は米国の韓国寄りを非難し、韓国のウラン濃縮実験などを受けて「６カ国協議と連結せざるを得ない」と反発。高夫人死亡説や今回の大爆発などの国内事情も加わり、６カ国協議不参加の口実はそろった形だ。
１１月の米大統領選の動向も踏まえ、６カ国協議の先延ばしを図りたい北にとっては好都合だ。
日本政府も情報収集を急ぐが、北京に外遊中の川口順子外相は「何一つ、お話ししてできるものはない」といつものお寒い状況だ。
日朝政府間交渉では、拉致問題について横田めぐみさんら特定失踪者１０人の安否状況が北から報告されるとみられていただけに、再び暗雲が立ち込めている。
■コリア・レポート編集長、辺真一氏の話
「いまだに北朝鮮側から公式発表がなく、竜川の列車爆発事故と違い、民間の事件・事故ではない。軍事施設・基地での爆発の可能性が高い。
ミサイル基地なのか、弾薬庫などの誤爆なのかは断定できないが。（軍用の）ＴＮＴ火薬１０００トン分とされる。相当な量の爆発だが、これに似た事故は２年前に咸鏡北道（ハムギョンプクド）のテポドン発射基地でエンジン噴射実験中に起きている。このときも一切発表されず、復旧には１０カ月かかっている。
竜川の事故は真相が今もって不明でテロ説も消えていないが、竜川がテロとすればその関連性も考えられる。今回は建国６２周年記念日の数時間前だが、竜川のときも人民軍創建７２周年の３日前。世界の注目が北に集中している今、宣伝効果は抜群のはずである。
ただ、これだけの大爆発で、出ても不思議のない犯行声明がなく、テロの可能性も低いのではないか。事故にせよ、テロにせよ、こうしたことを防ぐ、あるいはチェックできない体制の脆弱（ぜいじゃく）さがモロに表れている。
徹底した管理・統制下にあるはずの軍の規律・モラルを含め、たがが緩んで乱れている証拠だ」
■軍事評論家・神浦元彰氏の話
「１２日付ニューヨーク・タイムズに、『北朝鮮で核実験の兆候がある』と米諜報（ちょうほう）機関がブッシュ大統領に報告したとある。今回は核でないことは明らかだが、何らかの爆発実験をしていた可能性もある。
爆発規模は１０００トンともいわれているが、ＴＮＴ火薬の量にして２０〜３０トン程度に過ぎないのではないか。おそらく高さ５０〜１００メートルのやぐらを組んで、何らかの爆発実験をしていたとも考えられる。
確信犯的に日本への脅しの効果も考えていたのではないか。日朝合意でミサイルの発射実験は封印されているが、ロケットを横倒しにして行う噴射実験なら、発射実験に当たらないという詭弁（きべん）で実行しようとしていたフシもある。
そのうち、『新型の巨大爆弾の実験に成功した』と言い出すかもしれない。いずれにしても、誰も住んでいない山の中でクーデターというのもあり得ないし、事故でもないだろう」
ZAKZAK 2004/09/13
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。