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社説
08月21日付
■石油高騰――イラク戦争の高いツケ
石油価格の上昇が続いている。需要が増えているうえ産油国側の政治不安が重なったためだ。世界的なカネ余りを背景に投機的な資金も入り込み、値上がりに拍車をかけた。
ベネズエラのチャベス大統領を罷免する国民投票が否決され、いっとき値を下げたものの、ロシアの石油大手ユコスの破綻(はたん)不安が蒸し返され、再び値を上げた。イラク情勢がいっこうに好転しないことも価格の波乱要因になっている。まさに政治相場だ。
価格がこれだけ急に上がると、70年代から80年代にかけて起きた二つの石油危機を思い起こしてしまう。いまのところ、当時のような買いだめによる日用品の不足や、インフレと不況が同時に来る「スタグフレーション」が迫っているわけではない。
とはいえ、注意信号はいくつも灯(とも)っている。世界的にガソリンや石油関連製品の価格が上昇している。いずれいろいろな商品やサービスの値上がりに波及し、それが各国経済の成長を抑えるとの見方も強まってきた。
米経済のかじ取り役である連邦準備制度理事会(FRB)も「最近の景気減速は石油価格の大幅な上昇による」と認めている。今後、物価の上昇が目立ってくれば、各国の中央銀行は利上げを迫られるだろう。そうなると、景気への不安から株安の連鎖を起こしかねない。
今の石油価格のうち、1バレルあたり5〜10ドル分はイラク情勢やテロの不安などの危険要因による上乗せ分(リスクプレミアム)と見られている。消費国は産油国に税金を払っているようなものだ。
最大の産油国であるサウジアラビアの政治体制に不安がある。イラクの石油をフセイン大統領の自由にさせたくない。米国によるイラク攻撃には、そんな背景があった、といわれている。
現実はといえば、石油パイプラインが絶えず武装勢力の攻撃を受けるなど、産業復興さえままならない。安定した供給源を得るどころか、石油価格を急騰させてしまったのだから、皮肉だ。
米国の原油輸入は1日約1千万バレル。リスクプレミアムを10ドルとすれば、毎日1億ドル(110億円)、年に365億ドル(約4兆円)の上乗せだ。日本の原油輸入は1日400万バレル強だから、毎日4千万ドル(約44億円)、年間では146億ドル(約1兆6千億円)にものぼる。
すべてがイラク要因とはいえないものの、世界経済がイラク戦争の高いツケを払わされていることは事実である。
日米欧の首脳たちは、石油価格の高騰が自分たちの足もとを崩し始めていることに、もっと目を向けるべきだ。
1975年にパリ郊外のランブイエで最初の会合をもった主要国首脳会議(サミット)は、第1次石油危機後の世界経済を立て直すのがその目的だった。経済の悪化はテロの温床となる。それを思えば、成長を維持する努力も「テロとの戦い」であるはずだ。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040821.html