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社説:
イラク暫定議会 国民の多様な声を反映させよ
イラク各地の代表約1200人を集めた国民会議が開かれ、「諮問評議会」のメンバー100人が選出された。諮問評議会は「暫定政府の諮問・監督機関」と位置付けられ、予算案や法案の承認や拒否、さらには大統領選出の権利を持つ。暫定議会の誕生といってもいい。
米英占領当局からの主権移譲を受けて設立された暫定政府に次いで、諮問評議会が成立したことで、暫定の行政府と立法府が並んで立つ形となった。
今後、イラクでは暫定国民議会選出の直接選挙が行われる。さらに新憲法採択後、正式な議会選挙が実施され、新政権が誕生する予定だ。まだ道のりは長い。
イラクは国内正常化と国家再建に向けて歩き始めたばかり。暫定政府と諮問評議会は目標に向けて全力をあげて歩まねばならない。
一歩はずれると、政治混乱と無秩序状態が待っている。内戦や破たん国家への転落という最悪の事態も考えられる。
国際社会も、苦難の道へと踏み出したイラクの動きを評価し、後押ししていかねばならない。
その一方で、諮問評議会の成立過程にも問題があった。まず、イラク全土で戦闘やテロ活動が続き、国民会議の議場への攻撃もあった。治安は悪く、政治安定からはほど遠い。
第二に、諮問評議会の選出にあたって招集した国民会議が必ずしも全国民を代表していなかったことがある。
そもそも国民会議の参加者の選出基準は不透明で、イスラム教スンニ派の有力組織の「イスラム聖職者協会」がボイコット。さらに、シーア派急進派のサドル師に率いられる人々も参加拒否した。
サドル派は国民会議への参加を拒否しただけでなく、シーア派の聖都ナジャフに立てこもり、連日米軍との戦闘を繰り広げた。会議でも、サドル派問題の取り扱いが大きな焦点になったほどだ。
第三に、諮問評議会のメンバーは選挙で選ぶとされていたのに、最後に事務局が提出した候補者名簿が無投票で決まった。イラク戦争後、米国の支援を受けて作られた旧統治評議会勢力が会議の主導権を握り、押し切った印象が強い。
さまざまな宗教と民族、さらには目標の違う政治集団を抱え込んで、イラク国内をまとめていくのは容易ではない。独裁政治とイラク戦争の混乱からまだ間もないイラクに、多くを望むのは無理なのかもしれない。それでもさまざまな疑問が残っている。
諮問評議会は成立したが、多くの国民の声が無視もしくは考慮されていない。国民の信頼も十分には勝ち得ていない。権力の正統性が不完全で、いまだに確立していないといえる。
アラウィ首相をはじめとする現イラク政権の指導者たちは、この不完全さと正統性の欠如を深く自覚し、イラク社会の多様な声を聞く努力をすべきだ。
その努力こそがイラク社会の統一と融和をもたらし、国家再建へとつながるはずである。
毎日新聞 2004年8月20日 1時14分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20040820k0000m070172000c.html