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社説
08月20日付
■イラク再建――選挙の準備は整うか
今年6月に採択された国連安保理決議が示すイラク再建の道筋はこうだ。
暫定政府の発足後、7月中に国民会議を開いて仮の議会にあたる諮問評議会の議員を選ぶ。来年1月に暫定議会の選挙を実施し、来年末に本格議会選挙、そして本格政府の誕生となる。
その最初の一歩である国民会議が、予定から半月遅れで開催された。米国を後ろ盾とする暫定政府に不満を持つ勢力が欠席したり、議員候補の人選の不透明さが露呈したりと、もめにもめた。それでも何とか決裂は避けられ、諮問評議会の議員を選出して閉幕した。
聖地ナジャフの聖廟(せいびょう)などを中心に米軍と激しい戦闘を続けてきたイスラム教シーア派の対米強硬派指導者サドル師も、土壇場で聖廟からの撤退を表明した。
だが、これで民主化のめどが立ったわけでも、国が安定へ向かう土台ができたわけでもない。次の重要な一歩である5カ月後の暫定議会選挙を、本当に実施できるのか。それがまず最大の難関だ。
選挙が国民の多くに納得され、正当なものと認められるには、投票の権利があまねく保障され、暴力や脅しがなく、自由意思で投票できなければならない。投票所の安全も欠かせない。結局、戦闘や衝突が沈静化に向かい、またテロも抑え込めるような治安の改善が、選挙の実施にとっても必須の条件となる。
米軍に率いられた大規模な多国籍軍が駐留し、国民の間に反米感情が広く存在するなかで、そんな環境が生み出せるかどうかは分からない。だが、その方向へと努力しなければ選挙は実施できず、イラクは混迷から抜け出せない。
大事なのは、武装闘争で占領や今の暫定政府に抵抗してきた強硬派を政治のプロセスに参加させることだ。
暫定政府はシーア派強硬派との和解を言いつつ、米軍による民兵組織の掃討を許してきた。これでは暴力の連鎖は断ち切れない。各勢力と対話を重ね、米軍にも自制を迫るよう強く求めたい。
治安をイラク人の手に早く戻す必要がある。多国籍軍にいつまでも依存していては、選挙を成功させようという国民合意も生まれにくい。
国連による支援活動なしに、選挙の準備は進まない。安保理決議は国連現地本部がテロに襲われた経験を踏まえ、国連要員を警護する部隊の創設をうたった。多国籍軍とは別の中立的な部隊なら、イラク人の理解を得られやすいからだ。
ところが、参加に名乗りをあげた国はない。イラク戦争への拒否反応がそれだけ深く残っているということだろう。
強引に戦端を開き、占領したブッシュ米政権の責任は問われ続けなければならないが、イラクの再建の失敗が世界全体にもたらす悪影響も深刻である。
イラク人を主役に国際社会全体がそれを助け、米軍の早期退場を促す。そうした再建の構図を、安保理の描いた構想を生かしながら作れないものか。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040820.html