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「ロボットカーレースと無人戦闘部隊」について
西園寺鉄司
『論談』(http://www.rondan.co.jp/)内、目安箱より保存のため筆者転載。
先日(2004年5月16日)、NHKスペシャル『疾走・ロボットカーレース』を見た。 米国内外の大学研究室や電子系企業が、米国防総省国防高等研究計画庁(DARPA)が主催するレース大会への参加を念頭に人工知能で走行する無人車両(ロボットカー)を開発し、大会における走行タイムを競う、という内容であった。 しかし、DARPAが大会を主催する本当の目的はロボットカーの技術的発達とその技術の軍事利用であり、大会にロボットカーを送り出している研究室及び企業も、それを承知で開発しているとのことであった。
無人の兵器といえば、無人偵察機RQ-1プレデターはすでに実戦配備されており、スパイ活動に従事している(ミサイルも搭載可能で、イエメンでアルカイダのスパイを殺害、イラクではテレビ局を破壊した実績あり)。 また、無人戦闘機X-45(実質は爆撃機)が現在開発中であり、2010年頃に実戦投入される予定とのことだが、この無人戦闘機には3000ポンドの爆弾を搭載する能力があり、製造コスト一機は20億円程度になる予定とのこと(自衛隊の基地に配備されているF2戦闘機は一機130億円)である。
無人車両については上記のように様々な研究室・企業で開発が行われているが、カーネギー・メロン大学の『米国ロボット工学コンソーシアム(NREC)』はDARPAから550 万ドルの助成金を受け、無人戦闘車両を開発中とのことである。 この兵器は6輪車両であり、走行中に障害物と衝突して仰向けにひっくり返っても再び走り出せるシステムを搭載している。
「もっとも基本的な任務としては、荷を運ぶラバのように物資を補給したり、武器を装備しないで偵察を行ったり、といった非戦闘的な作業をこなす。 さらに機能を強化すれば、戦場の兵士たちへの直接支援や、武装しての偵察行動もできるだろう。 (NREC責任者、ジョン・ベアズ氏)」。 この車両(6輪不整地走行車両「Spinner」)のイメージ映像を見たが、ガトリング砲を搭載して砂漠の悪路をひっくり返りながら疾走している映像であった。 中東を意識して、砂漠でも走行可能なよう研究中とのこと。
なお、これらの無人兵器で部隊を編成するという計画も進行している。 米海軍研究局のアレン・モシュフェグ氏は『自律的インテリジェント・ネットワーク及びシステム』プロジェクトを指揮し、2020年までに陸海空それぞれで自律的に動き回る無人移動兵器を一つにまとめ、大規模な戦闘部隊として機能させることを目指している。
仮に、無人の戦闘部隊が実戦配備されたとしたら、どのような状況が現実化するのだろうか。 これらの兵器の開発は「戦争で死んでいく兵士を減らす」目的で行われており、実戦配備が行われれば、米国政府は自軍兵士の血をほとんど流すことなく戦争を行うことが出来るようにりそうである。 しかし、この米国政府にとっての「都合のいい論理」による無人戦闘部隊の配備は、第三者である私の目には、恐ろしい危険性を秘めているように映る。
あなたには、子供の頃に喧嘩をした経験があるだろうか。 素手での一対一(いわゆる、対マン素手ゴロ)の喧嘩である。 喧嘩相手を殴ると、殴られた方は痛がる。 そして、大概は我慢して殴り返してくる。 殴るのは痛くないが、殴られると頬などに痛みを感じる。 子供の喧嘩はその繰り返しだが、殴られて痛みを感じると、自分が殴った際に相手は痛かったのだな、と気が付く。 そういう経験をして、子供は成長していく。 自分が苦痛を体験することにより、人の痛みも理解できるようになるのである。
しかし、近頃は武器を持って集団で人を襲うような輩が増えてきたようで悲しい限りである。 若者がホームレスを集団で襲ったり、女性を集団でレイプするような事件も頻繁に発生している。 そう、対等な力を持った相手とは争わないで、自分より弱い相手を見つけて卑劣な方法で攻撃する、倫理・道徳観が欠如していると考えられる若者がとても増加しているように感じるのだ。
そういう若者達は、自分自身が苦痛を受けることは回避し、楽をしていい思いをしたいという「都合のいい論理」に従って行動をしている。 相手の迷惑などにはお構いなしなのである。 若いうちからからそういう考え方をしていると、他人の苦痛を理解できない、命の重みを感じることができない、精神的に問題がある大人に成長してしまわないだろうか。
原始時代の初めは、大人の人間もライオンや猿山のボスザルの縄張り争い同様、争い事があると素手で一騎打ちをしていたのではないかと想像するが、周知のように人間は道具を発明したため、武器を使用しての戦争・殺人が始まることとなる。 そして、文明の発達に伴い、武器も次第に高性能なものが開発・使用されるようになり、現在では、効率的に多くの人間を殺すことができる武器や兵器が地上に溢れている。 現代人は、素手で相手を殴る力とは桁違いの力を得たのだ。
そして、その力が強くなるのに比例して、「人の苦痛に対して無理解・無感動」な人間が増えていったと想像することができる。 桁違いの力による攻撃の痛みを理解することは困難(現代兵器は、攻撃を受けた人間が死亡するくらい破壊力があるので痛みを経験・共有することができない)であり、攻撃する側に感覚の麻痺があるのではないか。 それは、イラクの拠点へミサイル攻撃をしている映像を見て「ゲームの画面のようだ」と感じてしまう感覚に近い。 そして、「人の苦痛に対して無理解・無感動」な状態の極みが、無人戦闘部隊の実戦投入により現実化されると私は考える。
近未来。 米国の軍産複合体は、10年に一度は戦争を引き起こさないと利益を上げられない構造が依然続いており、石油を産出する異教徒の国に難癖を付け先制攻撃を敢行。 数時間後、無人戦闘機は敵国内制空権を確保。 長距離ミサイルと無人爆撃機が敵国主要拠点に猛烈な攻撃を加える。 その後、大型輸送機で無人戦闘車両を敵国内にパラシュート投下。 人工知能を持った無人戦闘車両が目標拠点周辺の敵軍兵士および住民に対し攻撃を加え、拠点の敵軍兵士を殲滅後、米軍兵士は血を一滴も流さずに拠点を占領。
以上、現時点ではフィクションの域を出ないが、米国政府にとっては理想的な戦争の形であるように思われる。 しかし、それは第三者の視点から見たら、非常に危険な戦略でもある。 ロボットが人間を殺す状況の現実化により、自国民と同じ人間に違いない敵国民の命の重みに対する認識が、将来の米国政府および国民にますます欠落していくことを危惧する限りである。
[参考]
東亞日報[[オピニオン]無人航空機]
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=100000&biid=2002110724258
WIRED NEWS[無人偵察機を殺人マシンに変える米国防総省の計画]
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/technology/story/20040402301.html
WIRED NEWS[ロボット戦闘部隊がやってくる]
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/technology/story/20020902301.html
WIRED NEWS[抜群の走破能力を誇るロボット戦闘車輌が開発中]
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/technology/story/20020826302.html
近未来最先端軍事テクノロジー[無人攻撃兵器]
http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/hypams04/uav.html
機械博物館[世界のロボット]
http://homepage3.nifty.com/tompei/WorldRobots1.htm
[西園寺鉄司・過去のレポート集]
「創価学会、カルトの証明」
http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/1211.html
「乱交の氾濫および過激な性教育の弊害」について
http://www.asyura2.com/0401/bd33/msg/1040.html
「ストレス過剰の影響を受け続ける現代人の現状と将来性」について
http://www.asyura2.com/0401/health8/msg/343.html
「現状として表面化しない催眠術の悪用行為」について
http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/1146.html