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(回答先: ポーター・ゴス検索 投稿者 愚民党 日時 2004 年 8 月 12 日 01:34:32)
NSAの一時障害が露呈する、秘密諜報能力の下降。
新技術に追い抜かれた保安機関。専門家は予算削減と官僚主義による弊害が原因と。
By BOB DROGIN, Times Staff Writer
メリーランド州フォートミード……NSAのマイケル・ヘイデン大尉が、狂ったような電話を受けたのは1月24日、食後にテレビを観ているときであった。アメリカの地球的規模の盗聴システムが突然、つんぼになってしまったのだ。NSAのメインコンピューター・ネットワーク……外国大使館の通信、世界中のミサイル基地や電話を盗聴し、通信を復号化する何エーカーもの地下施設は、はじめてのクラッシュを経験した。そしてだれもその理由を知らなかった。三日後、NSAのスパイマスターは部下にぞっとするような警告を与えた。「システムがダウンしたことは機密扱いだと言っただろう」。ヘイデンは思い出した。「敵はわれわれの諜報能力が不能となったことを知る由もないのだ」。
1月28日早朝にシステムが再起動されるまで、このニュースが外部に漏れなかったことに彼は安堵した。専門家チームはこの四日間の故障についてまだ調査中であるものの、「ネットワークの性能を限界まで発揮する」ソフトウェア「アノマリー」を非難した。
しかし、この世界でもっとも強力なスーパーコンピューター群の一時停止は、そのままアメリカ最大かつもっとも機密性の高い諜報機関が直面している、大きな問題のなによりの証拠であった。NSAは情報革命における主導……そしておそらくその方法を喪失したことを物語っていた。「NSAはかつて世界で最高のコンピューターを有していた」。この最近の危機を説明してきたある高官は語る。「いまでは、NSAはそれらのコンピューターを稼動することさえできない。どういうことかわかるかね?四日間ものオフライン状況に甘んじる現代の企業を知っているか?NSAは苦闘しているのだ」。
諜報の専門家はNSAの苦悩を、冷戦以降に予算と人員が削減されたこと、標的がより強固になったこと、通信傍受への対策、そしてなにより重要なのは、電子メールの時代にテレックス技術にどっぷりつかった、保守的で頑固な官僚であると非難する。「彼らの得意分野はもはや通用しなくなった」とNSAの元上級職員は不平をこぼす。「新しい世界に適応するのは、彼らにとってはトラウマのようなものだった……現状を維持し、生き残ることがすなわち彼らのできるすべてなのだ」。
ポーター・J・ゴス下院議員(フロリダ州、共和党)、諜報に関する小委員会の議長は率直である。
「本当だ。つぎはぎ、つぎはぎ、つぎはぎだらけなのだ。われわれはもはや過去やってきたのと同じ能力を持ち得ないのだ」。
ある程度までいうならば、NSAは自らの成功の犠牲者である。初期のコンピューターと電子通信を調査することで、この機関は諜報活動の新しい時代の寵児となった。10年ほど前にはほとんど存在しなかったデジタル電話、ファックス、電子メールなどの技術がうみだす毎日のデータの洪水で、NSAはいまおぼれかけているのだ。
「実際のところ、1980年代後半まで、アメリカの信号諜報は他の世界から抜きに出ていた」。1991年から1993年までCIA長官をつとめたロバート・M・ゲイツは語る。「しかしハイテクの爆発で、政府機関は変化のペースについて行くことができなくなったのだ」。
光ファイバーと苦闘するNSA:
光ファイバーを考えてみよう。冷戦時代、NSAはソ連やワルシャワ条約加盟国その他の政府や軍を詮索するため、海底の銅線ケーブルや超短波無線リレー基地からの電子的放射を傍受することに優れていた。
現在、私企業は地球を何百万マイルもの高容量光ファイバーケーブルで取り巻いており、これは古い通信技術に取って代わろうとしている。この新しいケーブルは膨大な量のテレビ、ファックス、電話やその他の信号を光の速度で伝達し、またこれは盗聴するのがいっそう困難なのである。「NSAは光ファイバーにとことん手を焼いている」。上院スタッフメンバーは言う。「彼らはどこから手をつけていいのかわからないでいる」。
しかし誰もがこの意見に同意するわけではない。NSAについて書かれた唯一の書物、「謎の宮殿(The Puzzle Palace)」の著者ジェームズ・バンフォード(James Bamford)は、NSAは光ファイバーの脅威について大袈裟な姿勢を見せており、それによってアメリカの敵を混乱させ、議会からより強い同情を買おうとしているのだと語る。
「こんにちのNSAにとっての興味は光ファイバーではない」。バンフォードは語る。「北朝鮮は光ファイバー化されていない。コソボもソマリアも同様だ。実際には、重要な情報はかつてないほど空中に放射されているのだ」。
いずれにせよ、救いの手は伸びてくる。12月、ジミー・カーターはアメリカの最も先進的なスパイ潜水艦とするために、海軍の電子ボートの改修に8億8,700万ドルの契約を裁定した。
消息筋によれば、2004年の完成の暁には、このシーウルフ級潜水艦は海底光ケーブルを盗聴するための最高機密の「ポッド」を設置、補修することが可能となる。海軍はこの改良を「監視、地雷戦争、特殊戦争、弾頭補修とより先進的な通信」のためのものであると発表している。
しかし、NSAは暗号化技術の独占状態を喪失したままである。解読はまず不可能と考えられる暗号ソフトがこんにち、インターネット上に流通している。CIAの発表によれば、ヘズボラ、ハマスとオサマ・ビン・ラベンの組織など、いくつかのテロリストグループが暗号化技術を使用している。
「これは本当に挑戦的なことだ」。ワシントンにある独立した非営利組織、国家保安書庫(National Security Archive)を運営しNSAを追跡しているジェフリー・T・リチャードソンは語る。
また別の問題が生じるのだ。標的がうまく逃げおおせる場所がより増えてしまうのである。
ソ連の崩壊以後、NSAはセルビアや北朝鮮などの極悪な政治体制と同様、超国家的なテロリスト、麻薬密売組織、組織犯罪や犯罪者の雲をつかむようなネットワークを追跡してきた。
「彼らが合わすべき、ドラッグと犯罪の焦点はより大きくなった」と語るのは、ワシントンにあるアメリカ科学者連合の諜報専門家、ジョン・パイクだ。「それゆえ、彼らはより大きな干し草の山から、より小さな針を探しているのだ」。
同時に、NSAはしばしばsigintという用語で知られる信号諜報(signal intelligence)を収集している……それは上手くいったとしても紛らわしいものだ、とNSAの通信傍受について定期的に研究している、ある諜報機関の高官は語る。
「sigintがうまくいくのは稀だ」とこの高官は語る。「たいていの場合、それは非常に断片的だ。傍受できるのは、何かについての小さな一部分だ。自分が何を傍受しているのかさえ分からないことも多々ある」。
ふたたび、救いの手はのびる。議会は今後5年から7年のあいだに、数十億ドルの小型低高度スパイ衛星システムを構築するための予算を承認した。この新しい「鳥」は、2002年から開始された、NSAが地球上のローカルな通信やレーダーを傍受するのに役立つはずである。
不特定多数のアメリカ人にとって、NSAは1952年の秘密政令(secret executive order)以後に創立されたアメリカの諜報の礎である。長いこと、冗談めかして"No Such Agency,"(そんな組織は存在しない)として知られ、現在もなお匿名性を指向している。
ボルティモアとワシントンの中間の、高い樹木の背後にある巨大なマジックミラーの集合建築物と、衛星パラボラアンテナを指し示す交通標識は存在していない。
正確な数字は秘密だが、NSAはおよそ35,000人もの、世界中の人々を雇っているといわれている。
それは冷戦時の半分だが、しかしそれでも、人間に関する諜報を扱うCIAの二倍の大きさである。 NSAの年間予算は50億ドルと推測されている。しかし、信号諜報への全体的な出費はおよそ100億ドル、あるいはアメリカの13の諜報機関へ議会が承認した予算の3分の1以上である。
成功と失敗がNSAを形づくる:
先月の、ヘイデンはNSAの「神秘性のいくばくかを拭い去る」希望があることをスピーチした。 「テレビで放映されているにもかかわらず、われわれの機関はエイリアンの解剖も、衛星を使って誰かの車を追跡することもなければ、暗殺部隊を有しているわけでもない」。彼はアメリカン大学の学生にそう語った。NSAの成功は十分だ: 数年間をかけて、NSAは船の中のキューバ指導者たちの会話や、リムジン車内のクレムリンの指導者たちの会話を聞いてきた。 彼らはオーストラリア駐在中国大使館を、コロンビアのカリ・ドラッグカルテルの電話を盗聴し、パンナムジェット爆破容疑者のリビア人を特定した。 彼らは軍司令部や貿易会議さえも盗聴した。
「もし座りながら、他人の基本交渉プランと、それにつづく三つの次候補プランを入手したなら、かなりいい線をいっているということだ」。前レーガン政権時のホワイトハウスの諜報担当官はこう語った。 「それはNSAがわれわれに与えたものなのだ……。 信じられないほどの良質の情報がつねに流れてきた」。だが、失敗は無視できないものである。 インドが1998年5月に一連の核実験のテストを準備していることを警告できなかったNSAは、さんざん非難された。インドの宿敵パキスタンはただちに自国の核兵器をテストし、インド亜大陸は世界でもっとも危険な発火点となった。
しかし現在、NSAは聞いている。
1998年のテストからすぐに、この核を保有する両国政府と軍の、何千もの通信回線と周波数を盗聴するため、オリオン衛星が軌道に乗った。
NSAはヨーロッパから最も手厳しい非難を受けた。先月、欧州議会は公聴会にてNSAと、諜報能力を悪用していると言われている、NSAに協力している英語圏諸国を弾劾した。NSAがアメリカの企業を手助けするために、秘密の通信傍受を行っているという申し立てに対して、批判が集中した。
欧州議会は部分的には正しい。NSAが私企業に情報を提供する権限はないのである。しかし情報機関の高官は、NSAが傍受した情報は、贈収賄やその他の不正行為でアメリカの企業を出し抜こうとする海外企業を「密告する」ために使用されたのだ、と語る。
例えば1990年初頭、インドネシアがある長距離通信契約について競争入札をもとめた。「われわれはごまかされていたのです。すでに日本が取り引きに割り込んでいました」。高官は回顧する。「われわれはこの問題について、インドネシアに回答を求めました。結果として、アメリカの企業がこの契約の一部をとることになりました」。
インタビューで、ヘイデンは五月以来、彼を非難する人々から受けている、二つの主要な苦情に対して神経をすり減らしていた。「ひとつは、われわれが全知の存在であり、あらゆる人々の電子メールをすべて読んでいる」ということです、と彼は語る。「もう一つは、われわれが無能だ、ということです。どちらも間違いなんです」。
だが、ヘイデンはNSAは改革が絶望的に必要であることは認めている。「NSAは信じられないほど孤立した機関です。まわりには高い壁がはりめぐらされています。秘密を内部にとどめておくためです。でもそれは、新鮮なアイディアを遮断してもいるんです」。
職員との意思疎通:
反撃のために、ヘイデンはNSAの行動様式と使命に変化を与えるという野心的な計画をうちあげた。彼は暗号技術に新しい目的を設定し、部課を再編し、意思決定の能率化をはかった。秘密を守るべき機関にとっておそらく最も注目すべきことに、彼はNSAの秘密任務に携わる職員と意志の疎通をはかったのだ。
毎週月曜日、ヘイデンはNSA職員のための、NSA内専用テレビ番組に出演する。彼は、連邦議会での彼の証言について議論し、NSAのオペレーション・センターからひとりで、またヨーロッパから電話で出演した。
彼はまた、世界中にちらばるNSA職員にむけて秘密の電子メール新聞を発行する。最近の"dirgrams"、ディレクターのメッセージは、「トランスフォーメーション・オフィス」がどのように現代化を監督しているかを説明し、新しい戦略プランへのフィードバックを求めている。
「職員たちはすでに11,000回以上、返信ボタンをクリックしていますよ」。ヘイデンはにやにやしながら言う。「彼らが私にメールを送るよりむしり、彼らが信号諜報にいそしむかと思ったんですがね。でも、私は全部に目を通しています」。
そうして、1月27日早朝、ヘイデンはNSA全体の上層部に緊急ミーティングに招集した。それは彼が「2000年の大停電」と呼ぶ事件の三日目であった。ブリザードのためオフィスは二日間閉鎖されたため、多くのスタッフは、あらゆるコンピューターが停止した、ということを知っただけだった。
何百もの言語学者、数学者、技術者たちがメイン・ビルディング内のフリードマン講堂に詰め掛けた。また数千ものほかの職員が、NSA所内全体に行きわたっている、所内専用テレビのモニターを観ていた。
ヘイデンは彼が知っていることを説明した。衛星その他のシステムはまだ生諜報データを収集しつづけている。しかしそれらを選別し分析するコンピューターが復帰しない限り、アメリカの国家セキュリティは類例があまりないほどの危険にさらされる。
反応は水を打ったように静かだった。「心の動きまで音に聞こえるような気がしましたよ」とヘイデンは語った。
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http://www.infovlad.net/underground/asia/japan/dossier/echelon/nsa_blackout.html