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超大国はいかにしてその威信を失墜したか 米国は古代ローマにも似た比類なき超大国か?
http://www.asyura2.com/0406/war58/msg/369.html
投稿者 TORA 日時 2004 年 8 月 10 日 14:39:21:CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu76.htm

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超大国はいかにしてその威信を失墜したか
米国は古代ローマにも似た比類なき超大国か?

2004年8月10日 火曜日

◆超大国はいかにしてその威信を失墜したか マイケル・リンド FT紙
http://www.fujiwaraoffice.co.jp/other/superpower.pdf

イラクにおける大失敗は、新保守派(ネオコン)の夢――多国間外交と国際条約にあれこれ制約されない、慈悲深いアメリカ帝国の実現――に対する不信と疑念をつのらせてしまった。しかし、ファルージャの瓦礫に埋もれ、虐待が行われたアブグレイブ刑務所の露と消えてしまったのは、ネオコンの夢ばかりではない。

多くの民主党員と中道派共和党員の何人かが別の選択肢として最近まで支持してきた路線は、多国間協調の安全保障機構を通じて米国が指導力を発揮することであったが、それもまた、ジョージ・W・ブッシュのイラク戦争による巻き添えを食いかねない。

冷戦終結以来、時に「人道的タカ派」とも「強硬国際派」とも称される新自由主義者(ネオリベラル)の多くは、米国の強大な軍事介入政策を支持してきた。しかしネオコンと違う点は、国連と北大西洋条約機構(NATO)の重視である。

世界の民主化という米国の大望を追求するには国連とNATO を通じて行わなければならない、決して無視してはならない、と主張する。第一次湾岸戦争とクリントン政権が主導したNATO のバルカン諸国への介入のあり方が、唯一の超大国アメリカと多国間協調とのバランスを模索するネオリベラルのめざす方向だった。

ネオコンがイラクなどの「ならず者」国家に焦点を合わせたのに対して、ネオリベラルはリベリアのような「破綻」国家において国際的な協調路線を強力に推し進める好機があると考えてきた。

米国の主導によってそこに国際保護領をつくり、治安と秩序をもたらして社会を再建するという。パレスチナについてこんな提案をした者もいる。イスラエル撤退からパレスチナ主権国家建国までのあいだ、国連とNATO による保護領をつくったらどうかと。

アメリカンパワーは国際協調によって正当性を認められたもののために奉仕する――このアイディアは実効が期待できる。アメリカの力はあっても正当性がないとか、正当性はあってもアメリカ抜きというのでは実効性に欠ける。ただ悲劇的なことに、米国にはもう、この戦略路線は残されていない。

ブッシュは自らのネオコン戦略を失敗に導き、さらに次期政権が採りうる国際協調路線の芽まで無意識のうちに摘んでしまった。理由は簡単。ネオリベラルも、ネオコンと同様、アメリカンパワーという神話を前提としていたからだ。

その神話には常に二つの構成要素がある。目に見える実体のあるものと、目に見えないモラル面だ。その実体あるものは、現政権によって愚かにもまず真っ先に破壊されてしまった。

1989年以降の論評に、米国は古代ローマにも似た比類なき超大国となったというのがある。誤った見方ではあるのに、どうやら米国も同盟国もまともに受け取ってしまった。そして皮肉なことに、米国の力を頼んだネオコンの夢を砕いたのは、ネオコンが主導したこの戦争だった。

同盟国の協力をもってしても、米国はいまだアフガニスタンやイラク全土に秩序を回復できていない。それをするための兵力に不足する国防総省(ペンタゴン)は民間企業と契約し、捕虜の尋問も含めて米軍が成すべき基本的な任務まで請け負わせたのだ。なにがローマ、なにが帝国か。

アメリカンパワーという神話にとってさらに重要なのはモラル面である。米国史の負の側面、たとえば先住民の取り扱いや奴隷制、差別といった事実を世界は決して忘れていない。にもかかわらず多くの人々の目に米国は、ファシスト国家や共産主義国家と対峙する、自由で民主的な超大国と映ってきた。その自由主義国家アメリカのイメージは今や、占領者アメリカ、虐待者アメリカのイメージに取って変わられた。

アブグレイブ刑務所の虐待行為は、もはや個別の事件として見過ごすわけにはいかない。ブッシュ政権がイラクやアフガニスタン、グアンタナモ湾、さらには米国の地において虐待を指示してきた、あるいは許可してきたという数々の証拠が集まっているからだ。

われわれがすでに知っている恐怖や、まだ知らない恐怖が明らかになったら、致命的な痛手を受けるのはネオコンのというよりネオリベラルの計画だろう。なぜなら、ネオコンは当事国や同盟国の賛同を得ようともせずに他国を侵略するが、ネオリベラルは、米軍は多国籍軍の一部として望まれるところに行くべきだというからだ。

だが、たとえ国連の多国籍軍やNATO の一員だとしても、米国の兵士に自分たちの国にいてほしいと望む国民がどこにいるだろう?また、どれほどの同盟国が自らも汚されるリスクを負ってまで米軍と手を結んでくれるだろう?しかも、国連やNATO の介入にあたって米軍が力仕事を負わなければ、ネオリベラルの展望する強力な国際戦略は不可能なのだ。

さらに、破綻国家の問題。これは1990 年代におけるネオリベラルの戦略課題であった。ワシントンは無政府状態から秩序を取り戻す術を知らない――そのことはイラクが証明してくれた。

ブッシュはアメリカンパワーの神話を気づかずに打ち壊してしまったが、その影響はまだ進歩的な国際主義者たちに出始めてはいない。タカ派ネオリベラルの多くは、ケリー候補が勝利すればヨーロッパやアラブ諸国、その他多くの国々は水に流してくれるだろうと期待している。そう願うしかない。

ブッシュとその一派に傷つけられたアメリカの評判を、新政権はかなり回復できるはずだ。しかし、アメリカのイメージを修復するには世代が交代するまで、いや、それ以上の長い歳月を要することだろう。

2004 年の春は、米国の歴史ばかりでなく世界の歴史における転換点となるかもしれない。最近までブッシュ批判の人々も、イラク戦争は不幸だがちっぽけな出来事にすぎない、そのあとには慈悲深い米国が長期間にわたって世界の覇権を握るのだと考えることができた。

だが、アメリカに対する「慈悲深くも絶大なパワーを持つ」という評価がいたく傷つけられてしまった今、米国が世界で果たし得る役回りは、ネオリベラルとネオコンの双方が追求してきたよりはるかに小さなものとならざるをえないだろう。ブッシュが再選されるとされないとにかかわらず、その遺産はすでに明らかだ。

(著者マイレル・リンドは、ニューアメリカ財団ホワイトヘッド・シニアフェロー、ならびに同財団の米国戦略プロジェクト・ディレクター)

◆マイケル・リンド(著) 「アメリカの内戦」 アマゾン
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4776201445/qid=1092104566/249-9566959-3709931

(私のコメント)
アメリカを現代のローマ帝国に見立てることは私も日頃から指摘してきましたが、マイケル・リンド氏が指摘するような見方からすると、アメリカは古代ローマ帝国と比べて統治能力がかなり劣る帝国だ。アフガニスタンやイラクの状況を見ても未だにテロ騒ぎが頻発してとても統治しているとはいえない。さらには13万の軍隊を長期間駐留させて置けるだけの能力にも陰りが出てきている。

湾岸戦争の頃はベトナムの敗戦の傷を補って、なんとか帝国としての権威が回復したかのように見えましたが、息子のブッシュ大統領がその権威を失墜させてしまった。イラクへの単独先制攻撃も歩兵による掃討作戦でその弱点を晒してしまった。本来ならば支配下の植民地軍にさせればいい役割をアメリカ軍がせねばならなかったところに失敗の原因がある。

アフガニスタンでは北部同盟が帝国の協力者として活用できたが、北部同盟自身が少数派の寄せ集めでとても統治には使えない事がわかってきた。イラクにおいてもシーア派勢力がアメリカに協力して統治できるはずだったが、スンニー派やクルド族の抵抗やシーア派の中でもアメリカにに反攻する勢力が出てきて、武装勢力とアメリカ軍との戦闘が伝えられている。

アメリカはソ連が存在していた頃は、ソ連を「悪の帝国」として自らを正当化する事が出来たが、ソ連が崩壊した後は自らを古代ローマ帝国の再来と位置づけて、アメリカンスタンダードがグローバルスタンダードだと言うほど逆上せ上がってしまった。アメリカの巨大な宣伝力を持ってすれば、世界中の国は意のままにアメリカの正当性を信じ込ませると思い込んでしまった。

アメリカ国内こそ国民を言論統制で操ることに成功したが、世界はアメリカを「慈悲深く絶大なパワーを持つ国」とは見なくなった。そんな神話を信じ込んでいるのは日本国民ぐらいだろう。日本の政界や官界にはアメリカの意を汲んだ宣伝マンが大勢いる。小泉首相自らが「アメリカ軍が日本を解放してくれた」とテキサスの牧場で言っている。世界がアメリカの正体に気付いているのに日本だけがなぜそうなのか。

日本はアメリカに押し付けられた憲法により、自ら軍隊を持つことは放棄した。国家が軍隊を持たずしてどうして日本が国家といえるのか。この事すら気付かずにアメリカが「慈悲深い絶大なパワー」を持つ国に守られれば日本は安泰とするアメリカの出先機関である自民党が日本を支配しているからだ。自民党こそCIAから金をもらい政権を執ることで自らの地位を築いてきたのだ。

マイケル・リンド氏はブッシュ大統領と同じテキサス出身ですが、ブッシュのような保守派もいれば、リンド氏のようなリベラル派もおり、アメリカは二つに分かれて対立している。しかしブッシュがアメリカの神話を打ち砕いたことにより、たとえケリーが大統領になったとしても以前のようなアメリカの国際協調路線にもとずく力の行使は出来なくなるだろう。

長期的に見ればアメリカはイラク戦争の敗戦に懲りて孤立主義的な政策にならざるを得なくなるだろう。アメリカを支えてきた強大な国力に陰がさしているからだ。強大な軍隊は強大な経済力があってこそ維持できる。しかしその前提が崩れればソ連のように経済の破滅が軍隊を壊滅的に崩壊させる原因になる。ソ連は戦わずして原子力潜水艦やミサイルを解体せざるを得なくなった。アメリカもいずれはB52や原子力空母を自らの手で解体するときが来るだろう。


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