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社説
08月24日付
■米ヘリ墜落――首相はなぜ動かぬ
こんなやり方をされて、小泉首相は何とも思わないのだろうか。沖縄の米海兵隊普天間飛行場に隣接する大学構内に大型輸送ヘリが墜落した事故の処理のことだ。
日本側の現場検証を拒み、残骸(ざんがい)をさっさと片づけた米軍は、沖縄県の稲嶺知事や地元宜野湾市の伊波市長の強い抗議もどこ吹く風とばかりに、事故機と同型ヘリの飛行を再開した。
後部ローター部品の一部がなくなっていた。米軍は事故原因をこう説明した。ならば、同型機に同じ事故が起きても不思議はない。いったん飛行をやめ、原因究明と再発防止対策をしっかりやる、というのが当然だろう。それを「海兵隊をイラクに派遣するために必要だから」というだけで再開したのだから、日本政府もなめられたものである。
米側も表向きは低姿勢だった。米臨時代理大使は外務省に、事故原因の解明や安全の点検をするまでは同型機を飛行させないことなどを約束していた。
だが、言うこととやることが違う。事故に対する日本政府の反応がさほど厳しくないので、地元の反対を押し切っても大丈夫と踏んだのではないか。
市街地での事故を目の当たりにして、沖縄の人たちの不安は高まっている。同時に、地元の不信は、型どおりの対応しかしなかった小泉政権にも向けられているように思える。
ベトナム戦争さなかの68年、九州大学の構内に米戦闘機が墜落した。防衛庁長官は再発防止のための日米共同調査を要求するなど強い態度で臨んだ。米軍は戦闘機の夜間訓練を、原因が究明されるまで取りやめることを約束した。
77年に横浜市の住宅地に戦闘機が墜落し9人が死傷した事故では、神奈川県警や市消防局が米軍とともに合同で現場検証をした。日米地位協定に関する問題を協議するために両国政府間で作られている日米合同委員会や事故分科委員会も直ちに開かれた。
そうした過去の事例に比べると、今回の日本政府の態度はそっけなく、米側への遠慮ばかりが目につく。
小泉首相は、上京した知事や市長に会おうとしなかった。その口から米軍のやり方に対する不満や抗議も聞かれない。新聞の首相動静欄に載っているのは、映画鑑賞や観劇、秋の内閣改造などに向けた自民党幹部らとの密談ばかりだ。夏休み中だからといってすまされようか。
幸いにして負傷者こそいなかったが、一つ間違えれば、日米同盟を危うくしかねない事故だった。政権を揺るがす事態になったかも知れないのだ。
「米国との固いきずな」があるのなら、小泉首相は徹底した原因究明と公表、再発防止策の説明、それらが満たされるまでの間の飛行停止などを、はっきり求めるのが当然だろう。
五輪での日本選手の活躍に日本中が興奮する中で、こんどの事故がかすんでしまうなら、とんでもないことだ。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040824.html