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崩れた大義――首相は平気なのか(朝日新聞・社説)
http://www.asyura2.com/0406/war57/msg/700.html
投稿者 シジミ 日時 2004 年 7 月 17 日 07:21:44:eWn45SEFYZ1R.
 

http://www.asahi.com/paper/editorial.html

イラクへの侵攻にあたり、米英両国の首脳が掲げた戦争の大義に根拠がなかったことが決定的となった。

 英国の独立委員会が開戦から1年4カ月の調査を踏まえて報告書を発表し、旧フセイン政権は「配備可能な生物化学兵器は保有しておらず、使用する計画もなかった」と結論づけたのだ。

 「悪意はなかったとはいえ、報告が指摘したあらゆる誤りの責任を負う」。ブレア氏はそう述べて非を認めた。報告書の発表前に辞意を漏らし、閣僚たちに止められたと英BBCは報じている。

 米国でも、上院の特別委員会が中央情報局の情報は大半が誤りだったとする報告書を出したばかりだ。大量破壊兵器の存在はおろか、その開発計画、ブッシュ大統領が強調していたフセイン政権とアルカイダとの結びつきまで否定した。

 それでも、ブッシュ氏は「攻撃は正しかった」と言う。大量破壊兵器がなかったにしても、潜在的脅威を倒したのだからいいというのだ。だが、開戦前にこんな説明を聞かされていたら、世界はもっと強く戦争に反対したに違いない。

 確かに恐怖政治は終わった。暫定政府が発足し、曲がりなりにも復興に向けて歩み出した。国の再建のため、国際社会は前向きに協力していくべきだろう。

 だが、それは開戦の是非をうやむやにしていいことでは全くない。

 結果的にうそだった脅威を理由に戦争をし、その結果、1万人以上のイラクの民間人が命を奪われた。多国籍軍の側の死者も千人を超えた。テロの拡散や武装勢力による外国人人質事件を見ても、戦争の代償の大きさをつくづく思う。

 この戦争が国際法秩序に与えた痛手も、計り知れない。

 米英両首脳の責任の大きさは言うまでもないが、その決断に全面的な支持を与えた小泉首相の責任もきわめて重い。

 支持は正しかった、と首相は繰り返してきた。先の国会では「日本が戦争を始めたのではない」とさえ語った。まるでひとごとのようなこの言葉をイラク人犠牲者の遺族が聞いたら、日本という国をどう思うだろうか。

 思い起こそう。米英が開戦を承認する新たな決議案を国連安保理に出した際、賛成するよう非常任理事国を説得して回ったのが日本政府だった。小泉首相は開戦のおぜん立てに懸命だったのだ。

 首相に問いたい。米英が大量破壊兵器はなかったと認めざるを得なくなったいま、戦争支持の理由に兵器の存在を挙げ、開戦の正当性を内外に主張した自らの責任をどうとろうとしているのか。

 戦争への態度を決めるにあたっては、首相や外務省首脳が様々な情報を吟味し、慎重な状況判断を重ねたはずだ。

 臨時国会が近く始まる。各党はそうした経緯について究明すべきだし、首相は国民に説明しなければならない。

 それが国民と国際社会に対する首相の最低限の責任の取り方である。

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