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7月17日付・読売社説(2)
[比イラク撤退]「テロリストに屈することの誤り」
極めて憂慮すべき事態だ。
フィリピンのアルバート外相は、イラク駐留部隊四十三人のうち、隊長を含む十一人を十六日中に出国させ、残りの隊員も近く帰国させると発表した。
フィリピン人運転手を拉致した武装グループは、「七月末までにフィリピン軍部隊を撤退させなければ、人質を殺害する」と迫っていた。実際に、フィリピン軍部隊が、要求期限前に全面撤退すれば部隊派遣国で、テロ集団の要求に屈した初のケースとなる。
人命の重さを逆手にとる人質事件の手口はこのところ巧妙さを増している。今回の拘束事件は、このワナにはまったのだろうか。
フィリピンには、テロの標的になりやすい要素が多分にあった。
第一は、イラク派兵への国内の根強い反対だ。親米路線をとるアロヨ大統領は、それを押し切って部隊を派遣した。
第二が、事件発生時の部隊数はわずか五十一人、しかも八月末には撤退の予定だった点だ。テロリストの目には、要求に応じやすい国と映っただろう。
第三には、イラク国内の米軍基地で、運転手、コックなどとして働く約四千人の民間人労働者の存在もある。彼らの安全が脅かされれば、基地運営に重大な支障が出るだけでなく、動揺はフィリピン国内にまで波及する。
こうした事情を熟知したうえで、武装集団は運転手を拘束したのだろう。武装グループの要求は、日を追って狡猾(こうかつ)さを増している。
今月七日に中東のテレビを通じ犯行を公表したテログループは、当初の「七十二時間以内の撤退」から「七月二十日」さらに「七月末」へと期限を延ばしながら圧力をかけ続け、フィリピン側は「段階的撤退」へと追い込まれた。
フィリピン内の反応も複雑だ。「誘拐犯に屈すれば、フィリピン人全員が誘拐の対象になる」「部隊が駐留している限り、フィリピン人労働者が人質になる」と有力紙の主張も割れた。
アロヨ大統領にとって「苦渋の決断」となった今回の繰り上げ撤退は、国際社会のテロ対策に重大な障害となりかねない。米国が重ねて警告しているように「テロリストに誤ったメッセージを送る」ことになるからだ。これは米国に限らず、国際社会が共有する懸念である。
今回の事件を機に、武装グループが勢いづき、部隊派遣国に、動揺が広がるようなことがあってはならない。イラク暫定政府の再建への努力を、日本を含む国際社会が後押しする必要が、いっそう高まっている。
(2004/7/17/03:00 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040716ig91.htm