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特報
2004.07.10
もし改憲したら日本は…
自分勝手な予防戦争、行き着く先は世界の混乱
今回の参院選後、もしかしたら3年間、国民は選挙という形で国政を問うことはできなくなるかもしれない。その間に進められようとしているのが、憲法改正問題だ。とくに今回の自衛隊の多国籍軍参加は、背景に集団的自衛権の問題も絡み、日本の安全保障の転換点といわれるが、国会審議もなく決められた。
シミュレーションから日本の進む道を探ってみると−。
■アーミテージ報告で追随拍車
憲法九条改正問題で「イフ(もしも)」の観点から危惧(きぐ)を抱くのが、日米安全保障問題などに詳しい関西学院大学の豊下楢彦教授(国際政治論)だ。豊下教授は九条改正に基づいたシミュレーションをこう描く。
「もし、すでに九条が改正されており、自衛隊の武力行使が可能だったと仮定したら、昨年三月のイラク開戦で自衛隊はどうしていただろうか。間違いなく米英軍と一緒に開戦当初から戦闘に参加していたはずだ。当然、自衛隊は軍事行動でイラク人を殺傷し、また、自衛隊にも被害が出ていたことは想像に難くない」
豊下教授はその根拠として、こう話す。
「日米が軍事的に共同作戦を行う際、制約、障害になっているのが集団的自衛権だというのが、アーミテージ報告だった。もっと日本は英国のように貢献しなさい、という米国からの提示だ。これに基づいて九条改正の動きに拍車が掛かった。集団的自衛権が行使できるとなれば、当然、米国は名実ともに軍事作戦体制に自衛隊を組み込むことになる。もし、その段階で『いや、日本は主体的に判断するんだ』と主張すれば、それは米国からすれば、まさに裏切り行為と映る」
■日本の本音は米拒否できぬ
一九九九年三月、周辺事態法の審議の際、当時の小渕首相は「米国から要請があれば、日米同盟の本旨からして、つまり安保条約の本旨からして拒否することはあり得ない」と表明した。これについて、豊下教授は「とても正直な答弁だ。つまり、日本の国益と米国の国益、両国の政策目標は自動的に合致するから拒否することはできない、という、日本の戦後外交の路線そのままを言明したのではないかと思う」と分析する。
■9条改正はブレアの道
その上で、現在の日本の立場をこう規定する。
「日本はアジアにおける英国だ。つまり、分かりやすく表現すれば『九条改正は、ブレアの道を行く』という表明につながる」
ブレア英首相は、雇用の安定や福祉の確立などを売り物に政権に就いたが、外交では米国と連携してイラク戦争に突き進んだ。
六月末の主権移譲後も、英軍約九千人、米軍約十三万八千人を主力とする多国籍軍が駐留。英軍の死者数は開戦後、六十人を数える。(七日現在、米ブルッキングズ研究所調べ)
■もし参加なら10万人規模に
もし日本が、英軍のように派兵した場合の戦力について、軍事評論家神浦元彰氏はこう予想する。
「陸海空で約十万人規模が任務に当たることになるだろう。仮に陸上自衛隊で三万人の兵力が必要だとすれば、ほぼ同数が支援部隊として、その次の交代要員としても同数が準備や訓練に入るため、それだけで九万人規模になる」
「日本は弾道ミサイル迎撃のためのミサイル防衛(MD)システム導入を決めたが、イージス艦に搭載して弾道ミサイルを撃ち落とすスタンダードミサイル3(SM3)といった最新兵器で、カタールの米司令部を防衛するといった役割を担うことも想定される」
では、日本にとり日米安保条約とは何なのか。前出の豊下教授が解説する。
「安保条約の本質は、米軍の世界戦略のための基地提供だ。しかし、国民の70−80%は安保条約は日本の安全の前提だと思ってきた。だが、周辺事態法成立後は、むしろ米軍の世界戦略の中に自衛隊の戦力は組み込まれている。安保条約の性格が変わってしまった」
小泉首相はブッシュ大統領との会談で、イラク戦争を「大義の勝利」と絶賛した。では、イラク戦争とはそもそもどんな戦争だったのか。豊下教授は「予防戦争だった」と解説する。
ブッシュ大統領は開戦当初、安保理決議一四四一などに基づき戦争を行ったと言っていたが、今年の一般教書では米国の安全を守るためと強調。フセイン元大統領は大量破壊兵器を造る能力があった、だから攻撃したと主張した。
豊下教授は「つまり大量破壊兵器の製造能力と、指導者の本性、この二つで自衛権が発動できるということだ。この前例が、八一年のイスラエルによるイラクの原発攻撃だ。当時のイスラエルの論拠は、イラクはイスラエルに敵意を持っており、原発は完成間近である、だからこの攻撃は正当な自衛権の発動だというものだった。今、ブッシュ政権はこのイスラエル的自衛権に近づいている。この予防戦争の論理が行き着く先は、インドもパキスタンも中国も同じ論理を使いだすという、国際的なアナーキーの状態だ」と危惧する。
その上で、こう指摘する。「今、日本は九条は時代遅れで、国連憲章五一条の集団的自衛権を行使すべきだ、と議論している。しかし、米国は五一条は時代遅れで、予防戦争の論理になっている。日本で集団的自衛権が議論される場合、五一条のそれなのか、あるいは米国的、イスラエル的自衛権なのか、区別されていない」
小泉政権下での防衛政策の逸脱ぶりは、すでに「改憲後」よりも危険が大きいと批判するのは、金子勝・慶応大教授だ。
「首相は独断で自衛隊の多国籍軍参加を決めた。これは九条に違反し、自衛隊の活動地域を『非戦闘地域』に限ったイラク特措法をも飛び越えた。改憲しなくても既成事実をつくってしまう手法だ。まず既成事実化したうえで、法律が実態に合わないとの世論を受けて、大手を振って改憲に踏み出す。首相自らが法治主義を破壊し、今の日本は憲法がなくなった状態だ」
■派兵せず、したたかに渡り合え
その上で、ブッシュ政権の単独覇権主義に追随することと真の国際貢献とは異なると指摘する。
「米国の隣国のカナダとメキシコが良いモデルだ。米国とは北米自由貿易協定を結び、経済の結びつきも深いのに両国はイラクに派兵していない。カナダの保守主義者にも同盟国と協調して国益を追求する傾向は見られるが、それは自国の原則を曲げない範囲内と説明し、米国ともしたたかに外交ができる。欧州の多くも派兵せず、アラブ諸国に反感を持たれずにすんでいる。泥沼のブッシュ政権を支援するしかほかに方法がない、としか小泉政権が判断できなければ、日本を孤立させる恐れも大きい」
豊下教授が示すのも、日本の外交戦略への道だ。
「たとえば、中近東の不安定の根源となってきたイスラエルの核問題について、西欧のようなユダヤ人迫害の過去を持たない日本は堂々と発言する資格を持っている。そうすればアラブ社会の支持も得られるし、国益としても重要だ。中近東での日本の役割は、派兵ではなく、外交大国を目指すことだ。世界的な問題が米国のバイアスによってゆがめられている。日本がそれをただしていく、それこそが本当の意味での国際貢献になるだろう」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040710/mng_____tokuho__000.shtml