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http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040707/mng_____kakushin000.shtml
『日米連合軍』へ着々
創設50年 防衛白書は“自衛隊改造計画”
初めて集団的自衛権の行使容認論に触れた今年の防衛白書。イラクへの自衛隊派遣の意義を強調する一方、自衛隊の組織や装備の在り方を根本から見直し、テロや海外での活動に適した体制づくりを盛り込むなど、白書はさながら「自衛隊改造計画」だ。白書を読み込むと、将来の自衛隊の姿が浮かび上がる。 (政治部・三浦耕喜)
■イラク
今年の白書は、イラクで活動する自衛隊員の声であふれている。「イラク国民と日本の安全に貢献していることに日々充実」「わが子に仕事を理解させる絶好の機会」。隊員たちは口々にやりがいを語る。
白書はさらに、日本が世界第二位の経済大国であり、石油の九割近くを中東に依存するデータを提示。ブッシュ米大統領やアナン国連事務総長、イラク人指導者らの感謝の言葉を列記しながら、日本の責務と国益、そして憲法前文の理念にも自衛隊派遣はかなっていると強調している。
■海外活動定着 現場の声が後押し
これらの実績を挙げた上で、白書が問題提起するのが「今後の自衛隊の在り方」だ。その眼目は、弾道ミサイルやテロなど「新たな脅威」に対応すると共に、海外での活動に適した組織へと自衛隊を変えることだ。
これまで、自衛隊は憲法九条の制約から「国を守る必要最小限の基盤的防衛力」を整えるとする「基盤的防衛力整備構想」に基づいて組織されてきた。活動範囲も「日本周辺まで」が一応の前提であり、航続距離の長い輸送機や長期の航海に耐える輸送艦を持たなかった。
その点、今回の白書は、同構想が「今後も有効かは基本から議論が必要」(石破茂防衛庁長官)として見直しを提起。海外活動が定着した自衛隊の現状に、同構想が合わなくなった、との問題意識を提示している。
それを裏付ける現場の声も白書は載せた。イラク支援で空輸任務に当たる隊員は言う。「救難サバイバル教育、各種予防接種などを短期間に行わねばならず、大変苦労した」。今の自衛隊にとって海外活動はあくまで「付随的任務」で、普段から専門の訓練を行うわけにいかない。
そのため、白書は海外活動の専門部隊の設置、航空輸送力の確保などを提唱。海外活動を自衛隊の本来任務に格上げする自衛隊法改正にも言及した。海外への展開能力を伸ばそうとする狙いは明らかだ。
■有志連合
海外へ翼を広げる自衛隊が目指す姿は何か。伏線は、今回の白書で初めて触れた集団的自衛権の行使容認論にある。
集団的自衛権とは、自国が攻撃されていないにもかかわらず、他国を守るために武力を行使することだ。日本は憲法解釈上、自国を守る以外に武力は用いないことを国是としており、この行使は禁じられている。
だが、自衛隊が海外で米軍など他国の部隊と行動を共にする場面が増える中、この制約は、各国との信頼関係を損なわせる原因となりかねない。傍らの友軍が攻撃されても、自衛隊は共に反撃できないためだ。
今回の白書は、既に自衛隊が米軍を軸にした「コアリション(有志連合)」に組み込まれ、責任を共有している実態も示す。米フロリダ州タンパの米中央軍司令部には、六十カ国以上の軍とテロ対策の連絡調整に当たる連絡官が派遣されている。白書はこの隊員を取り上げ「二十一世紀はコアリションの時代。日本の代表として、テロ撲滅のため(各国と)共に歩めるのは望外の喜び」と語らせている。
集団的自衛権をめぐり、行使の「否定」から「論議」に踏み込んだ今年の防衛白書。だが、自衛隊の現場は、その半歩先を進んでいることも白書は物語っている。