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社説:主権移譲 イラク国民の信頼勝ち取れ
イラクの米英占領統治が28日終了し、イラクへの主権移譲が行われた。ブレマー文民行政官は帰米した。予定より2日早めた突然の決定で、過激派テロ対策が背後に見え隠れする。テロにおびえる暫定政府の現実に前途の険しさを見る思いだ。
今後、イラク暫定政府は国内各層の代表を集めた国民会議を招集し、直接選挙の実施手続きに入る。来年1月末までに選挙を実施し、移行議会や移行政府を設立する。さらに、新憲法制定作業を進め、新憲法承認の国民投票、新憲法下の選挙を実施し、来年末までに新政権を発足させる予定だ。
イラクの多数の人々が、自分たちの国家をつくり、混乱と暴力から抜け出ることを希望し、期待していることは間違いない。
もちろん、国家再生への道は容易ではない。イラク各地では連日のように爆弾テロや誘拐事件が発生し、暫定政府の動きを阻止しようとしている。
特に、アルカイダなど国際イスラム原理主義組織の暗躍や国内過激派勢力との連携活動が目立っており、危機的状況を知らせる赤信号が点滅し、警報が鳴っている。
つまり、イラクの現状は主権移譲を心から祝福するような雰囲気にはなく、騒然とした状況にある。
すでに、アラウィ首相は非常事態宣言もあり得ると発言している。一歩間違えれば、内戦や破たん国家への道を転げ落ちる可能性さえある。
前途多難のイラク暫定政府に望みたいことは三つある。
まず、「イラク国民の信頼を勝ち取れ」。暫定政府は亡命イラク人が指導部の多数を占め、必ずしも一般国民を代表しているとはいえない。選挙の洗礼を受けるまでは、権力の正統性の問題はついてまわるだろう。国民の信頼が揺らげば、直ちに、政権不安につながっていく。
第二に、「イラク国家・社会の統一を目指せ」。イラクの人々は西洋的国民国家の経験がほとんどない。国民意識よりも部族集団の利害やシーア派、スンニ派の宗教帰属意識が優先する社会だ。クルド人のように民族意識で固まる場合もある。各集団ごとの権力闘争が激化すると、社会の統一は難しく、新しい国家の建設は不可能になる。
そして、最後に、「暴力テロを絶て」と訴えたい。各地で展開される爆弾テロ事件の背景には、イスラム過激派の黒い影がちらつく。イラク全土がこれらテロ集団の支配下に入るならば、世界にとっても深刻な脅威となる。
イラク戦争の是非を巡り生じた米欧の亀裂も、一応和解へと動き出している。国際社会はイラクへの主権移譲を国連を通じて承認した。今後は、占領軍に代わり、多国籍軍がイラクの治安維持の支援を展開する。
もちろん、暫定政府のあり方や、そもそもイラク戦争を始めたブッシュ米政権への批判や不満はあるかもしれない。それでも、自ら歩き始めたイラクを世界は支えねばならない。
毎日新聞 2004年6月29日 0時44分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20040629k0000m070142000c.html