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(回答先: 【曽我さん一家「再会」問題】日本政府がジェンキンス氏の身柄引渡しを合法的に拒絶し得るための法理(2) 投稿者 iraq_peace_maker 日時 2004 年 7 月 31 日 11:51:57)
「北朝鮮・チベット・中国人権ウォッチ」http://humanrights.blogtribe.org/ より転載。
(以下、徒然掲示板 http://6547.teacup.com/sinken/bbs への投稿文を転載】
【ジェンキンス氏の訴追問題は日本政府がイニシアチブを発揮する形で解決するしかない(M)】
産経新聞の報道より引用。
「ジェンキンス氏、米情報艦拿捕に協力か 68年、北で聴取時通訳など」(7/30 産経)
「拉致被害者の曽我ひとみさん(四五)の夫で元米兵、ジェンキンスさん(六四)について、米軍当局が、脱走直後に訴追した四つの罪のほかに、一九六八年に起きた北朝鮮による米海軍の情報収集艦「プエブロ」号拿捕(だほ)事件に直接、間接的に協力していた可能性があるとの見方を示していることが二十九日、分かった。
米軍筋によると、プエブロ号の乗組員が抑留された際、ジェンキンスさんは北朝鮮当局による米兵の取り調べの通訳や、調書、関係書類の翻訳などにかかわったり、プエブロ号の船体調査に協力した可能性が指摘されている。
ジェンキンスさんは近く米軍の独立法務官と面会し「司法取引」に応じる公算が大きくなっているが、米軍側がプエブロ号事件についても追及すれば、今後の処遇に微妙に影響する可能性もある。米軍関係者はジェンキンスさんについて、「あらゆる観点からの取り調べの可能性を否定しない」と話している。
プエブロ号拿捕事件では、同艦が通信傍受などの諜報(ちょうほう)を管理する米国家安全保障局(NSA)の活用する艦だったことが判明し、北朝鮮側は同艦の暗号解読機能などを分析、米軍の偵察活動に打撃を与えた。事件があった一九六〇年代後半は、偵察活動中の米軍機やヘリコプターの撃墜が相次ぎ、米軍に多数の死傷者が出るなど、米朝の緊張関係が高まっていた。(以下略)」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040730-00000001-san-pol
確かこの事件ではプエブロ号の艦長は「北」に軍事機密情報を漏らした容疑で訴追され掛かったものの、結局「世論の反対」を理由に軍法会議を免れたんですよね。
この事実を踏まえて、仮に米軍がジェンキンス氏と司法取引を行うと考えているならば、この事件へのジェンキンス氏への関与を逆手に利用して、「彼はこんな重大犯罪にも関与していた。だから、事件に関する情報の提供を条件に彼と司法取引することは『国益』にも叶う」云々の論理で脱走兵に厳しい米国の保守層(ex.退役軍人会)の反発を切り抜けようとしていると考えることもできます。
何しろこの事件では艦長の訴追免除という「前例」もある訳で、彼の事件への関与も北朝鮮という全体主義国家で生き抜くためにやむを得ない事だったという一種の「緊急避難」的な選択だと位置付ければ、彼への司法取引は十分に正当性がある−との「論理」も導き出せるかもと思います。
ただし、逆にこの事件はジェンキンス氏の訴追免除を拒絶し得る決定的論拠しても使えます。プエブロ号の艦長は「北」によって拿捕されたものの、ジェンキンス氏は自発的に「北」に渡った脱走兵ということになっていますから、自発的脱走という側面に重心を置いてジェンキンス氏の行為を忖度すると、同事件への関与も彼の「北」への積極的協力意思のなせる技である−と捉えることもできます。この場合、彼は軍法会議に掛けられ、相当重い処分が下される可能性が考えられます。
日本のマスコミ報道ではジェンキンス氏が司法取引を条件に法的処分が免除されるという論が既に規定事実のように報じられていますが、このように、彼の身柄は依然として不安定な立場であるのですね。かなりの数の脱走兵が軽い処分で済んだベトナム戦争と異なり、イラク戦争においては休暇で米国に帰国後に原隊復帰を拒否した軍人に対しても軍法会議で有期刑が下されています(ジェンキンス氏のように「戦地」で脱走したのとは事情が異なる)。まして彼の場合、米国では「反共防衛戦争」と位置付けられている朝鮮での軍事オペレーションでの脱走容疑ですから、この問題が米国内で大きく報道されれば米国内での彼への風当たりは相当強いものとなり、彼に同情する世論などまず生まれないと考えて良いかと思います。
なお、「彼が脱走したかどうかなど未だ分からない」と指摘する向きがありますが(私がアフガン板でこの問題を議論した際にもそう切り返された)、彼が裁きを受ける場は飽くまで軍法会議なのであって、決して一般の刑事裁判手続きではないことを十分に考慮する必要があります。なお、参考までに↓のサイトを紹介しますが、私は↓サイトに指摘されている現状認識と大筋で同じ見解を有しているものです。
「軍法会議のいい加減さ!」
http://homepage3.nifty.com/senshowun/page038.html
<日本だって、戦前の頃は脱走兵は「銃殺」に処せられても文句は言えなかったのですよ。>
ところで、
> 朝鮮半島国連軍の指揮命令は、米国大統領(直接的には、朝鮮半島派遣軍司令官)にゆだねられているのだが、脱走兵の処罰も朝鮮半島派遣軍司令官(多分、横田基地の司令官)がやれるのだろうか?(Kotetuさん)
についてですが、「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」(以下、国連軍地位協定と表記)は以下のような規定を設けています。
・16条1項(a)号
「派遣国の軍当局は、当該派遣国の軍法に服するすべての者に対し、当該派遣国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。」
・16条2項(a)号
「派遣国の軍当局は、当該派遣国の軍法に服する者に対し、当該派遣国の法令によつて罰することができる罪で日本国の法令によつては罰することができないもの(当該派遣国の安全に関する罪を含む。)について、専属的裁判権を行使する権利を有する。」
・16条5項(a)号
「日本国の当局及び派遣国の軍当局は、日本国の領域内における国際連合の軍隊の構成員、軍属又は家族の逮捕及び前諸項の規定に従つて裁判権を行使すべき当局へのこれらの者の引渡について、相互に援助しなければならない。」
http://www.naigai-group.co.jp/un_en_jpn.html
これらの規定は国連軍に兵士を派遣している国(アメリカ合衆国)の当局には自国の軍法に基づいて兵士を裁く権利を有すること、そして日本政府は身柄引渡しについて派遣国に協力をせねばならない旨を定めていると解することもできます。
報道によれば、ジェンキンス氏は既に所属が在韓米軍から在日米軍に変更されたそうです。
・「ジェンキンス氏、在日米軍に移籍 軍法会議手続きのため」(朝日新聞 7/28)
「細田官房長官は28日午前の記者会見で、北朝鮮による拉致被害者曽我ひとみさんの夫で脱走米兵とされるジェンキンスさんについて、米軍がジェンキンスさんの来日にあたって、所属部隊を在韓米軍から在日米軍に移していたことを明らかにした。来日した18日付で移籍させたという。
細田長官はその理由について、「日本で(ジェンキンスさんの身柄の)引き渡し請求をする前提として、在日米軍所属にしたということではないか」と述べた。政府関係者によると、移籍は今後の軍法会議の手続きを在日米軍司令部で進めるためという。 」
http://www.asahi.com/national/update/0728/018.html
これは日米地位協定に基づく身柄引き渡しを考慮してのものですが、事件発生から数十年過ぎて今更在日米軍に所属変更するという手続きに聊か無理がある面は否めませんが、彼が在日米軍所属であり、かつ現に日本国内に滞在している以上、仮に米軍当局が彼を国連軍兵士と看做しても国連軍地位協定に基づいて日本政府に身柄引渡しを要求し、米軍が裁判権を行使すること自体は可能であると解することもできると思います。
なお、琉球新報の報道によると、日本政府は日米地位協定による身柄引渡しについて「公務で日本に滞在するか、休暇命令を持って来日する米軍人や軍属でなければ、協定の対象にならない」(*注1)という解釈指針を作成しているようですが、これは逆に解釈すれば彼が在日米軍所属であれば日本政府には彼の身柄を引渡す義務が生まれると解することもできます。
従って、米軍当局が国連軍地位協定および日米地位協定の何れかに基づいて彼の身柄引渡しを請求すること、かつ彼に対して裁判権を行使することには一応法的正当性があると考えることは可能です。というか、おそらく日米両政府はそういう解釈の下に立ってジェンキンス氏の問題に臨んでいるのでしょう。
(*注1)
・「ジェンキンスさん身柄問題「脱走兵は引き渡さず」増補版に明記」(7/22 琉球新報)
「地位協定第1条と、「―考え方」増補版の同条解釈によると、日米安保条約の目的達成のために公務で日本に滞在するか、休暇命令を持って来日する米軍人や軍属でなければ、協定の対象にならない。「米国の公の意思」で来日しない限り、協定上の米軍構成員でないとの解釈だ。これによれば、ジェンキンスさんが協定の対象にならないのは明らかで、日本政府は引き渡し要求を拒否できる論拠を持つ。このため、ジェンキンスさんを「国連軍」の構成員とみなし、国連軍の地位に関する協定を利用したり、在日米軍に転勤させる手法が検討されているが、いずれも無理がある。」
http://www.ryukyushimpo.co.jp/news01/2004/2004_07/040722c.html
(*注2)
・日米地位協定
http://list.room.ne.jp/~lawtext/1960T007.html
「ジェンキンス氏は脱走兵では無い、拉致されたのではないか?」と指摘する向きもありますが、私はこの種の「真相究明」的アプローチは彼の救援には余り役立たないと考えています。
というのは、米国の軍や政府要人のコメントには厳罰を求める向きのコメントから「温情」の可能性に示唆するコメントなど、彼への「処分」に関しては多種多彩なのですが、彼を「脱走兵」とみなしているという点についてはほぼ全ての要人が一致しています。米軍・政府内部にジェンキンス氏「拉致」説の疑いを持っている者がいるなら、一人位は「彼が本当に脱走兵であるかは取り調べてみないと分からない」といった類のコメントを発する者がいてもいいはずなのに、それは無い。
ということは、先に触れた軍法会議の政治性の考慮すると、真相はどうであれ、少なくとも軍法会議というフィールドでジェンキンス氏の「脱走兵」認定を覆すことはかなり無理がある、「ジェンキンス軍曹=脱走兵」というベグトルで事態は推移していると考えるべきではないかと私は思っています。これは飽くまで推測ですが、米軍当局やCIAはジェンキンス氏を「脱走兵」と認定するに足りる確証を持っているのかもしれませんしね、まだ一般にはその旨明らかにしていないだけで。
彼の救援を目標に据えるならば、今のところは「真相究明」路線よりも彼は飽くまで「脱走兵」であるとの前提に立ったうえで救援策を練ったほうが良いと考えます。「真相究明」は彼の訴追問題が一段落してから取り組めば良いのではないでしょうか。
この問題、私は前から主張しているように彼に政治難民としての認定を与えるなり、あるいはいっそのこと彼に日本国籍を与えるなりして(*注3)、日本政府がイニシアチブを取る形で彼の訴追を法的に回避した方が手っ取り早いと考えています。まあ多少ゴリ押しの感はありますが、米国政府がかような問題を長引かせて日米関係を膠着化させるとも思えないし、ここはゴリ押しで押し通すべきではないかと思っています。
(*注3)
ちなみに、「週刊アカシックレコード」の佐々木敏氏は国籍法9条に基づいてジェンキンス氏に日本国籍を付与する論を提案しています。
・「曽我ひとみさんの夫、来日前に帰化?−週刊アカシックレコード」
http://www.akashic-record.com/y2004/jenkns.html
・国籍法
http://www.moj.go.jp/MINJI/kokusekiho.html
9条
「日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。」
5条
「1 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
2 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。」
≪参考≫ 【曽我さん一家「再会」問題】日本政府がジェンキンス氏の身柄引渡しを合法的に拒絶し得るための法理(M)
http://humanrights.blogtribe.org/category-abdb52f373acc797e583f15b5e106923.html
北朝鮮・チベット・中国人権ウォッチ−ジェンキンス氏の訴追問題
http://humanrights.blogtribe.org/category-abdb52f373acc797e583f15b5e106923.html