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社説:米同時テロ報告 世界的視野で教訓生かせ
01年9月に起きた同時多発テロをなぜ防げなかったか。その教訓を今後どう生かすべきか。−−その答えを米国を挙げて検証した超党派の独立調査委員会の最終報告書がまとまった。
調査委は1年8カ月かけて現元閣僚らの公聴会証言や内外10カ国1000人の面接調査を重ねた。600ページ近い分厚い報告はそうした詳細な検証作業の集大成だ。
「世界を変えた」と言われた同時テロからやがて3年。事件の衝撃を風化させず、政府のとった対応をつぶさに点検し、国民に公開して将来の教訓を読み取ろうとした。そんな米国の姿勢には他国も学ぶべき点が少なくない。
「事件が起きてからの後知恵」と断りつつも、報告は(1)クリントン、ブッシュ両政権時代を通じたテロの脅威への認識不足(2)想像力の欠如(3)情報機関同士のタテ割りの弊害−−の3点をとくに強調しているのが特徴だ。
前政権下の98年にも「航空機ハイジャック計画」の兆候が伝えられ、同時テロ直前に犯人たちが入国した事実もつかんだ。それなのに、国外情報を集める中央情報局(CIA)と国内の内偵を担当する連邦捜査局(FBI)などのタテ割りの「壁」が連携捜査を阻んでいたという。
テロを未然に防ぐ好機が両政権下で「10回はあった」との指摘は確かに後知恵かもしれない。何よりも、「米国内で起きるはずがない」との安全神話が「想像力の欠如」につながり、大いなる油断を生んだのではなかろうか。
今後の重要な課題がテロの再発をいかに防ぐかにあることは言うまでもない。
報告は15の情報機関を統括管理する閣僚級の「国家情報長官」職の創設、テロ情報を集約する「国家テロ対策センター」新設、議会常設委員会新設など約40項目の改善勧告を行った。それでも、「誰が大統領であれ、大規模テロの再発がないとの確約はできない」とも警告している。
捜査当局と情報当局のタテ割り構造の一端には、もともと市民の自由を保障する発想があった。事件後、米政府・議会は捜査や内偵を容易にする「愛国者法」を制定し、「壁」の撤去が始まった。
だが、その代償として「市民や異教徒たちの自由が損なわれた」との懸念も根強い。テロ対策強化の利点と欠点の調整は、米政府にとっても市民にとっても悩ましいところに違いない。
報告は主に国内対策に目が向いているが、世界的視野でとらえた場合、それだけでテロがなくせるわけではもちろんない。アルカイダの首班とされるビンラディン氏の行方も不明のままだ。米国にとっては、国連や国際社会との協調を深め、中東・イスラム社会とも連携してテロを生む風土や土壌を改善する地道な努力が必要だ。
同時テロでは邦人24人も犠牲になった。最終報告から教訓を読み取り、今後に生かす努力は日本にとっても人ごとではない。日本政府にもそんな広い視点に立った協力を進めてもらいたい。
毎日新聞 2004年7月27日 0時56分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20040727k0000m070160000c.html