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社説
07月26日付
■パレスチナ――国際社会は放置するな
「第2次大戦直後までの英国の委任統治がいちばんましだった。その後のエジプト支配とイスラエルの占領は、どちらもいやだったが、いまのアラファト体制はもっとだめだ」
パレスチナ自治区のガザで、ユダヤ人入植地と隣り合わせで農業を営むパレスチナ人の古老が朝日新聞の論説委員に語った言葉だ。この地の複雑な歴史事情がにじみ出ている。
05年末を目標とする独立国家パレスチナとイスラエルの共存体制の確立は、米国、欧州連合(EU)、ロシア、国連の4者が参画した「和平の行程表」で、イスラエルもパレスチナも基本的に承認したものだ。だが、現状は行程表に沿っているとは、とてもいえないのに、この問題はアラブを含めた国際社会から放置されている。
国連の緊急総会は、イスラエルがヨルダン川西岸の占領地で進めているパレスチナ人居住区との分離壁の建設中止と撤去を求める決議を採択した。先に国際司法裁判所が、分離壁の建設は国際法違反だと勧告したのを受けたものだ。
決議に法的な拘束力はなく、分離壁はテロ防止のためだと主張するイスラエルは無視する構えだ。
イスラエルの無法ぶりは相変わらずだが、イスラエル非難の声を強めるパレスチナ自治政府のアラファト議長らがパレスチナ住民を掌握しているとはいえないのが現状だ。
ガザでは、アラファト氏の傘下にある武装組織が、自治政府の腐敗と縁故人事に反対し、街頭デモをしたり、フランス人援助関係者を一時拉致したりするなどの抗議行動を起こした。アラファト体制が内部から崩れつつあることを象徴する事件である。
イスラエルのシャロン・リクード党党首(現首相)の挑発をきっかけにしたパレスチナの反イスラエル武装闘争は、4年近くにもなる。この間、パレスチナ住民にもたらされたのは、さらなる貧困と抑圧でしかなかった。その不満の矛先が、強硬な軍事作戦を続けるイスラエルだけでなく、統治責任を事実上、放棄したアラファト氏にも向き始めた。
パレスチナの内部紛争は、シャロン首相が進めるガザ自治区からのユダヤ人入植地と軍の撤退計画とも密接に絡んでいる。パレスチナの若い世代を中心に、指導部の腐敗体質を変えないと、ガザが無秩序状態になる、との危機感が広まっているのだ。
国際社会は、イスラエルのガザ撤退計画を基本的に支持している。67年の第3次中東戦争以来、アラブ・イスラエル対立の元凶となってきた占領地問題に、それなりの解決策をもたらすきっかけになるとの期待感があるからだ。
多国間協調を復活し、アラファト、シャロン両氏ににらみをきかせて、事態を改善の方向に動かさなくてはいけない。パレスチナ和平はイラクと同様、国際社会の緊急課題である。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040726.html