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進む『国全体の沖縄化』 『普天間』宙づりのまま
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040725/mng_____tokuho__000.shtml
一九九五年の米兵による少女暴行事件を機に噴き出した沖縄での反基地感情は翌年、「今後五−七年以内」の普天間飛行場(宜野湾市)返還という日米合意につながった。しかし、同県名護市への代替移設計画は宙づりになり、現在も住宅地での飛行訓練が続く。「憲法九条が日米同盟の妨げ」(アーミテージ米国務副長官)という言葉が語られる中、米軍再編の流れに基地の島オキナワの声は届くのか。 (早川由紀美、写真も)
「普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設は長期化が予想されており、フラストレーション(欲求不満)を感じている。移設に十六年もかかるというのはミステリーだ」
今月十三日、普天間飛行場の早期返還を求めて訪米していた宜野湾市の伊波洋一市長に対し、米国国防総省のジョン・ヒル日本部長はそう話したという。
一九九六年十二月、日米協議機関「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)は「今後五−七年以内に十分な代替施設が完成し運用可能となった後、普天間飛行場を返還する」という最終報告をまとめた。代替施設の候補地となった名護市では住民投票など紆余(うよ)曲折の経緯をたどったが、今後さらに最短十六年かかるというのが通説だ。環境影響評価(アセスメント)三−四年、本体完成九年半、施設移転などに二−三年というのが内訳だ。
珊瑚礁(さんごしょう)で知られる辺野古沖の建設予定地周辺には、国の天然記念物ジュゴンが生息しており、アセスの長期化が予想される。那覇防衛施設局はボーリング調査を四月から開始する予定だったが、反対する住民が三カ月以上座り込みを続け、延期されている。
「(返還が決まった)九六年当時よりむしろ普天間飛行場の飛行回数は増え、爆音もひどくなっている。昨年の当選以来、県、国に早期返還の要請を繰り返してきたが、辺野古沖移設を決めた閣議決定を金科玉条のごとく言い続けている」
伊波市長の訪米は、この状況に業を煮やしての「直訴」の意味合いがある。一方、米政府は現在、在韓米軍の三分の一を削減するなど、世界規模での米軍再編の協議中でもある。
冒頭の国防総省での会談は三十分の予定が一時間に延びた。「もともと基地の集積している沖縄県内に代替地を求めたところに無理があったのではないか」という伊波市長に対し、ヒル部長はこう答えたという。
「歓迎されないところには基地を置きたくないというのがラムズフェルド長官の考えだ」「日米協議では米軍だけではなく、自衛隊との関連も含め協議しており、当然、普天間飛行場問題もそこに絡んでくる」
同市長は米国防戦略に携わる一線の研究者らにも会った。クリントン前政権当時のSACOの担当者で、シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のアジア担当を務めるデレック・ミッチェル氏は「当時、移設は実現可能と思ったが、今後十六年かかると聞いて呆然(ぼうぜん)とした」と漏らし、こう続けたという。
「飛行場には三十年を過ぎた機体もある。設備も年々古くなり、運用に不安がある。事故が起きたら日米間の安全保障体制も危うくなる。普天間は時限爆弾を抱えたようなものだ」
シンクタンク「ブルッキングズ研究所」のマイケル・オハンロン上席研究員は「在韓米軍は朝鮮半島の安定のために駐留しており、撤退は簡単だが、在日米軍はグローバルな観点から日本に駐留しているので在沖米軍の撤退は考えにくい」。ただ一方で「私は戦術的には南九州や四国などへの移転に興味がある」とも明かしたという。
伊波市長は「国防総省などから、普天間問題は非公式に一年近く前から日米間で協議していると聞いた。来年戦後六十年という節目に、普天間をてこに沖縄の基地問題が解決につながることを期待したい。基地を抱える他の県内の首長にも変えられるときに変えていこうと呼び掛けている」と力を込める。
米軍再編では、今月十五日から米国で外務・防衛当局の日米審議官級協議が始まった。米側提示案では、沖縄の負担軽減策も盛り込んでいるものの、第一三空軍司令部(グアム)の東京・横田の第五空軍司令部への統合▽陸軍第一軍団司令部(米ワシントン州)のキャンプ座間(神奈川県)への移転−など、前方展開する空海陸三軍の司令部を日本に集中するという大胆な機能強化も示された。
そもそも米軍再編とは何なのか。「米政府が進めているフォーストランスフォーメーション(軍転換)には、二つの背景がある。一つは米国にとっての脅威がソ連から、テロなど非対称な脅威に変わった。これは9・11同時テロより前の、クリントン政権のときからの認識だ。もう一つは情報技術が飛躍的に進歩し、新しい戦争の形態を生み出す必要が生じた」。「在日米軍」などの著書があるNPO(特定非営利)法人「ピースデポ」代表の梅林宏道氏はこう説明する。
「理論的に進められていたものが、イラク戦争で必要に迫られた。昔のように多くの人員を使って戦争をするということは議会も認めないので、(ミサイル防衛など)ハイテクへの投資で効率を求めてきた。人員は海外から引き揚げれば減らせるという方向だ。イラク戦争では一時期徴兵制の復活の話も出てくるほど、やりくりが必要となりその方向性が説得力を持った。もっと合理的に必要なところに必要な部隊を送ろうという流れができた」
琉球大学法文学部の我部政明教授(外交政策論)は「ドイツ、韓国には目に見える脅威があったが、冷戦終結で脅威がなくなったというのが削減の理由だ。しかし、日本では五〇年代の後半からグローバルに展開していく出撃基地を事実上造ってきた。だから(在日米軍を)減らす理由はない」と語る。「日本に司令部を持ってくるのは日本の周辺地域を飛び越え、より広い地域を見るという意味だ。協議ではその役割を担えるかが、日本側に問われているのではないか」
梅林氏も日米安保条約の目的が「日本並びに極東」の平和と安全維持と定めた「極東条項」(六条)を挙げ、「すでにインド洋での展開やイラク派兵など安保を無視して何でもやっている。日米協議でもごりごりと押されている。今や安保条約を厳格に守ることが日本のフリーハンドを確保する道だ」と指摘する。
名護市の辺野古漁港近くで、座り込みを続けるヘリ基地反対協代表委員の大西照雄さんは「(米国は)岩国の基地強化など日本という国全体を沖縄化していく作業をきちっとやってきている」と警鐘を鳴らす。
「SACOの場合もそうだが、米国はただでは転ばない。転んだら冷静に見つめて、日本をどう最大の同盟国にしていくか考えている。沖縄問題は、日本問題なんです。沖縄は日本が流れていく方向の実験場のような気がする」