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社説
07月25日付
■経団連――日本の宝を捨てますか
日本経団連が、武器輸出3原則と宇宙の平和利用原則を見直すよう提言した。
国を超えた先端軍事技術の開発や共同利用が進んでいる。そんな時代に孤立していては、兵器の水準で立ち遅れる。安全保障にも支障をきたす。禁輸のルールを緩めるべき時だというのである。
日本を取り巻く脅威の変化や財政事情のせいで、自衛隊の兵器購入は先細りが続き、防衛産業の行く手は厳しい。そんな危機感もあるに違いない。
経団連は、過去にも2度にわたって3原則の見直しを提言したことがある。政府や自民党内でも、昨年のミサイル防衛導入の閣議決定を受けて、見直しの具体的な作業が進んでいる。提言の狙いは、そうした流れをさらに速めたいということだろう。
確かに、欧州のように先進国間の協力で軍事技術が開発され、共同で兵器を運用するという例が増えている。ミサイル防衛の日米共同開発も、このまま進めばいずれ部品の対米提供が課題となるが、いまのままではそれもできない。
しかし、だからといって、3原則を骨抜きにしていいだろうか。
初めて武器禁輸原則が確立してからすでに40年近い。この間、日本が世界から「平和国家」として信頼されてきたことの利益は、計り知れない。日本外交の顔が見えないと言われるなかで、少なくとも軍備管理や軍縮の分野で発言力を維持できているのは、武器を売ってもうける「普通の国」でないからだ。
武器禁輸がこれからもそうした国益を育んでいくことを軽視しては困る。河野衆院議長は、経団連の提言について「国際社会における日本の存在」を損なわせる、と評した。その通りではないか。
先端兵器の共同開発などに参加できなければ、民需品へも波及効果のある技術の獲得に乗り遅れるという懸念も、経済界にはある。しかし、これまでの行動原則をあえて変えることの不利益についても、よく考えてもらいたい。
また、ミサイル防衛はシステムがどれほど有効なものか、北朝鮮の核問題の進展とも絡み合わせながら考える必要がある。拙速は慎みたい。
経団連の内部には、いずれは先端技術以外の軍需品も幅広く輸出したいという思惑もあるようだ。
昨年1年間に世界中で投じられた軍事費の総計は8800億ドルで、10年前に比べて2割も増えている。「日本製」の兵器なら売れるかも知れないが、それこそ「死の商人」への道である。
経団連の奥田会長は、民間向けの商売でトヨタ自動車を世界有数の企業に育てた人だ。経団連には防衛企業も名を連ねているが、気兼ねすることはない。
奥田氏がまとめた企業行動憲章の序文には「会員企業は、優れた製品・サービスを、倫理的側面に十分配慮して創出する」とある。この理念を念頭に、日本の針路を考えてもらいたい。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040725.html