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社説
2004.07.24
武器輸出 経団連は考え違いだ
武器の輸出を禁止してきた「武器輸出三原則」。日本経団連がその見直しを求めている。国からの受注減を輸出で埋めるのが狙いという。安易にすぎる。「三原則」は軽々に扱ってはならない。
行動する経団連なのだろう。このところ、分野を問わずにもの申したり、活動する積極姿勢が目立つ。
例えば政治献金再開への音頭取りがある。政党の政策につけた評点をもとに企業に献金を促したのは、まだ記憶に新しい。
与野党そろっての活発な動きに合わせた格好で、憲法問題を取り上げて議論を始めてもいる。
産業界の総本山・経団連である。
業界の声や要望の集約。全体の利益を勘案しながら、実現に向けて政治や行政にも働きかけていく。指南役であり、まとめ役としての当然の振る舞いといってよいだろう。
だからといって、今回の武器輸出三原則の見直しを求める提言は、そのまま見過ごすわけにはいかない。
提言は示す。国の装備予算の減少で防衛産業の撤退や縮小が心配である。ミサイル防衛などの共同開発に日本の企業が参加できなければ、技術力の低下も招きかねない。一律禁止でなく、国益に沿った形で輸出管理のあり方の再検討が必要だ、と。
ちょっと待ってほしい。
「三原則」が、一体、どんな経緯で生まれたものか。いま一度、真摯(しんし)に振り返ってみたらよい。
河野洋平衆院議長も即刻、経団連の姿勢を批判した。「もっと武器を輸出できるようにとの提言が出てくるのは安易に看過できない」。その通りだと思う。軽々しく見直しを口にする問題ではないはずだ。
平和外交の一つとして、佐藤内閣が共産圏、国際紛争当事国などへの武器輸出を禁じたのが三原則だ。その後、三木内閣が憲法の精神に則し「輸出を慎む」と踏み込み、事実上全面禁止となっているのである。
過去の歴史も踏まえた、この平和主義の三原則が、どれほどの信頼をもたらしてくれたか。産業界の受け続けた恩恵も、また計り知れまい。
武器は種類を問わず、人を殺す道具である。狭い企業論理から、その武器を輸出できるよう三原則の見直しを求める。テロリズムの脅威が増している中で、経団連が旗振り役になろうとは。考え違いも甚だしいといえよう。
防衛産業の将来をいうのなら、平和を背に培ってきた高い技術・品質の良さを生かして環境分野などへの転換を促していく。武器輸出を求める提言ではなく、それが経団連の役目であろう。与党内に見直し論もあると聞くだけに、なおさらである。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040724/col_____sha_____002.shtml