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社説
07月24日付
■中川議員――情けない外圧頼み
こうした騒ぎにつき合うのは気がめいるが、放ってはおけない。アーミテージ米国務副長官が自民党の中川秀直国対委員長に語ったとされる発言が、永田町をざわつかせている。
いわく「憲法9条は日米同盟の妨げの一つになっている」。いわく「軍事力の展開ができなければ国連安保理の常任理事国入りは難しい」。中川氏がワシントンでの会談後、記者団に紹介した。
日本は集団的自衛権を行使できるようにすべきだ。アーミテージ氏はかねてそう公言してきた。今回の発言もその延長線上だが、日本の常任理事国入り問題に絡めての発言は、公になっている限りでは初めてのことだろう。
アーミテージ氏は「日本が決めることだが」と前置きはしたが、直接9条を名指ししての憲法批判は何ともいただけない。いまだに「占領国」のつもりかと受け止めた日本人は少なくあるまい。
世界中で米国とともに戦えるようにするための憲法改正を国民の多くが望んでいるわけでないことも、知日派の彼ならよく知っているはずだ。
常任理事国入りにしても、熱心な外務省でさえ「軍事力の展開」ができるようにして実現したいとは言っていない。
94年に当時の河野外相が国連演説で初めて意欲を表明した時には、「憲法の禁ずる武力行使はしない」と条件を付していた。その後言い方は変わったが、考え方は同じだと説明されている。それが今も日本政府の立場だし、9条を改正してでも常任理事国になるべきだ、という世論もない。
もっとも、この件でアーミテージ氏を責めるのは筋違いかも知れない。むしろ問題は中川氏の振る舞いにある。
日本の政治家たちは盛んに「アーミテージ詣で」をする。握手し、選挙区向けの写真を撮り、もっぱら日本に対する期待や要求を聞く。中川氏も自分がアーミテージ氏に何を主張したのかを記者団に語っていない。そんなことはどうでもいいかのようだ。ならば、これは議員外交どころか、ただの御用聞きである。
中川氏にはもともと、アーミテージ氏から改憲を望む発言を引き出そうという狙いがあったのかも知れない。実際、アーミテージ氏の発言は、中川氏が国内の改憲論議を紹介する流れのなかで出た。それを報道させてみずからの「外交成果」としたい気持ちもあったに違いない。だが、そうであれば、これこそ情けない外圧頼みではないか。
「日米同盟の妨げ」発言には、さすがの小泉首相も「現行憲法のなかで良き同盟関係を形成している」と語った。常任理事国入り問題では、細田官房長官らが「平和憲法の下で国際貢献をし、常任理事国になる」と、火消しに躍起だ。
政府内には、中川氏が紹介したアーミテージ氏の発言は正確さを欠くという指摘もある。もしそうなら、国の重い課題をいかにも軽く扱う政治家らしからぬ姿勢がなおのこと問われる。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040724.html