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社説
06月18日付
■多国籍軍参加――国際貢献が歪んでいく
イラクに駐留する自衛隊の多国籍軍参加が、きょうの閣議で正式に決まる。
武力行使はしない。「非戦闘地域」に限る。イラク特措法の枠内で活動する。活動は日本の指揮下にある。この4点を守って人道復興支援をするのだ、と小泉首相は記者会見で強調した。
米英軍の占領は終わる。暫定政府もできた。その要請で多国籍軍が展開することを国連が認めた。この体制が安定と復興への一歩となるよう期待はしたい。
しかし、だから自衛隊が多国籍軍に入って活動を続けることは正しいという首相の理屈は、あまりに乱暴で粗雑だ。
多国籍軍の指揮は受けないと首相は言う。だが、国連決議には、多国籍軍は「統一された指揮」の下に置かれると書かれている。自衛隊は日本の指揮下だということを米英が了解したとされるが、運用でどう保証されるかは分からない。
「統一された指揮」を「統合された司令部」と言い換える政府の四苦八苦ぶりを見れば、無理は隠しようがない。
首相は、自衛隊がサマワで行っている給水などの人道復興支援活動ばかりを強調するが、航空自衛隊はクウェートとイラク国内を結んで米兵や補給物資を運んでいる。武力行使を伴う治安活動と密接な関係にあることは言うまでもない。
多国籍軍に参加すれば、この活動はより広範なものに広がりはしないか。首相の説明は「その国々との協力を考えながら」と、歯切れが悪いままだ。
多国籍軍への参加は、イラク派遣の根拠であるイラク特措法が必ずしも想定していなかった事態である。本来なら、国会の承認を得て行うべき政策変更だ。そこでは、ほぼ半年になる自衛隊の活動をイラク再建の全体的な文脈のなかで評価し直し、駐留を継続するかどうかも含めた議論がなされるべきだった。
ところが、首相はそうした手順を一切省き、しかも国会の閉幕を見計らっての閣議決定である。
対米関係への配慮から、自衛隊を何としても駐留させ続けたいということが先にありきだと言うしかない。
折もおり、米議会の調査委員会が、アルカイダとイラクの旧フセイン政権との協力関係を否定する結論を公表した。両者の関係を開戦理由の一つに掲げたブッシュ政権への痛撃である。しかも皮肉なことに、イラク戦争がアルカイダのテロを呼び込んでしまった。
戦争は世界にとって正しいことだったのか。国連決議は全会一致で採択されたが、仏ロ独をはじめ多くの国々が多国籍軍に距離を置いている。「ブッシュの戦争」への疑念がぬぐえないからだ。
たとえ誤った戦争の結果であっても、イラク再建への協力は必要だ。だがそれをするには、国内での正当な手続きと、支援のあり方についての国会と国民による厳しい吟味が欠かせない。このままなし崩しで多国籍軍参加では、日本の国際貢献がますます歪(ゆが)んでしまう。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040618.html