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核心
2004.06.15
『多国籍軍参加ありき』で政府解釈修正
小泉純一郎首相が主要国首脳会議(シーアイランド・サミット)開幕前の日米首脳会談で、ブッシュ米大統領に誓ったイラク多国籍軍への自衛隊参加問題。有事法制関連7法を採決した14日の参院イラク復興支援・有事法制特別委員会は、米国から帰国後、首相が国会で説明する初めての場となった。だが、首相の「大号令」を理屈付ける政府答弁は破たん寸前に。参加という「無理」を通すあまり、憲法を頂点とする「道理」は引っ込んだ。 (政治部・三浦耕喜)
■号 令
対米公約からまる五日を経て、首相が国民に向けて「参加」を口にした。この日の国会論議で首相は「当然、多国籍軍が形成されれば、その中で参加できる道を探っていきたい」との方針をあらためて明確にしたのだ。
政府・与党内の根回しすらないまま「海の向こう」(防衛庁幹部)で発せられた首相の大号令。憲法上の制約との関係について「説明不足」との批判を受けた首相が挙げた参加の根拠は、(1)今回の多国籍軍には人道・復興支援も含まれる(2)多国籍軍に参加しても自衛隊は日本の指揮下に入る―の二点だ。
日本は憲法解釈上、武力を行使できるのは国を守るための必要最小限の範囲で、他国のための武力行使である「集団的自衛権の行使」は封じられている。ならば、武力行使には関与せず、多国籍軍の指揮下にも入らなければ参加しても問題はない―。首相はそう整理しようとした。
■理 屈
だが号令を理屈付ける政府の答弁は迷走した。
例えば、多国籍軍への「参加」をめぐる解釈。従来、政府は「参加とは多国籍軍の指揮下に入り、一員として行動すること」と定義。参加自体が違憲と断じていた。
だが、この日の論議では、秋山収内閣法制局長官が「広い意味での参加もある」との新解釈を提示。指揮下に入らない形での参加なら合憲とした。「参加=指揮下」とした従来の政府解釈とも、「統一された指揮下」で活動するとした多国籍軍の国連安保理決議ともつじつまが合わない。
多国籍軍の任務についての解釈も「ヒヤヒヤもの」(防衛庁幹部)。今月一日、秋山長官は「わが国が武力行使しないことが確保されれば、武力行使を伴う任務と、伴わない任務の両方が与えられている多国籍軍への参加は憲法上問題ない」としていた。
だが、従来の政府解釈は「目的・任務が武力行使を伴えば違憲」というもの。十四日の質問で「任務が複数あっても、その一つに武力行使があれば許されないのでは」と突っ込まれると、秋山長官はあっさり「その通り」。「国ごとに任務が切り分けられ、武力行使を伴わない業務に限定できれば…」と、「切り分け論」に転じた。
■批 判
多国籍軍参加の首相方針に、政府として明確な論理付けができない状態に、委員会では与野党双方から批判が上がった。
民主党の斎藤勁氏は「結論ありきで、後から理屈をくっつけているからだ」と指摘。自民党の田村公平氏も「私の頭が悪いせいか、よく分からない」とチクリ。「上級法と違う形で、その都度、解釈を重ねてきたのが今の自衛隊だ」と、場当たり的な対応を非難した。
拡大解釈を積み重ね、「ガラス細工」と呼ばれるほど繊細な論理でつくられた日本の安全保障政策。後先を考えない首相の号令の正当性は、破たん寸前であることがあらわになったが、野党の追及不足も手伝って、この日の審議は一回の中断もなく進行。多国籍軍参加をめぐる疑問は晴れずに終わった。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040615/mng_____kakushin000.shtml