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社説:国連イラク決議 実効ある国際協調をめざせ
国連安全保障理事会が8日、イラク主権移譲後の統治へ向けた決議1546を全会一致で採択したことで、民主化や復興支援を国際協調で進める具体的枠組みができ上がった。
新決議の要点は、占領終結とイラク人の完全な主権回復が明記され、月末の主権移譲を前に暫定政府とその後の統治プロセスが正式承認されたことにある。米英中心の多国籍軍の駐留継続や暫定政府の完全主権を保障し、民主化、復興などに国連が主導的役割を担うことが明示された。
争点となった多国籍軍の駐留期限や暫定政府の権限は(1)イラク政府がいつでも多国籍軍撤退を求める権限を持つ(2)多国籍軍の駐留は最長でも05年末の恒久政府樹立と共に終わる−−と定められた。イラク軍・治安部隊が多国籍軍の行動に加わるかどうかの決定権も暫定政府にある。
石油など天然資源をめぐる主権も完全に暫定政府に委ねられた。全体として米英や仏独露などが協調と互いの譲歩を重ね、暫定政府を構成するイラク人の要望も取り入れた内容に落ち着いた。
アナン国連事務総長は「国際社会の誠実な意思を結集したよい決議」と歓迎し、シーアイランドの主要国首脳会議(G8)直前に決議が得られたことで、ブッシュ米大統領はG8の場で各国首脳に協力を呼びかけ、議長総括に盛り込みたい構えだ。国内の支持低迷に悩む大統領にとっても貴重な外交成果となることだろう。
完ぺきとは言えないにせよ、国連とG8の場で主権移譲と統治プロセスが後押しされる意義は大きい。その意味でイラクに平和と安定、復興をもたらす協調的枠組みができたことを歓迎したい。
だが、新決議は今後へ向けた第一歩にすぎない。大切なことは、この枠組みにいかに実効性を持たせるかにある。武装抵抗やテロ攻撃は今後も激しさを増す恐れがあり、国民会議開催や自由選挙も住民の安全が満たされなければ実現は難しい。民生支援を担う国連イラク支援団(UNAMI)も現地復帰には程遠い状態で、一にも二にも治安回復が重要だ。
そのためには多国籍軍を統括する米英が占領政策の失敗を反省して、広範なイラク住民の理解と共感を得る努力が不可欠となる。
国際的協調の枠組みを形だけに終わらせず、さらに肉付けする努力を米英や仏独露を含む各国に求めたい。それがイラク人のためであり、イラク戦争をめぐって亀裂した世界の結束と協調を回復する正しい道だ。
G8直前に開かれた日米首脳会談で、小泉純一郎首相は自衛隊のイラク駐留を継続し、多国籍軍に事実上参加する方針を表明した。しかし、駐留継続と多国籍軍参加との関係は、米英主導の有志連合との関係と同様に必ずしも明確に説明されてこなかった。イラクの人道復興支援に協力することは大切だが、多国籍軍との関係は自衛隊員の安全にもかかわる重要な事項だ。国民と国会にきちんと位置づけを説明してもらいたい。
毎日新聞 2004年6月10日 1時12分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20040610k0000m070187000c.html