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社説
06月08日付
■レーガン氏――大きな遺産とその限界
レーガン元大統領の死を米国中が悲しみ、故人を懐かしんでいる。民主党のケリー上院議員も、11日の国葬が終わるまで大統領選の遊説を控える。「強い米国」の象徴としての存在感は、引退後15年を経てもそれほど大きいということだろう。
底抜けに明るい笑顔と、わかりやすい語り口。苦境にめげずに立ち向かおうとする姿勢。共和党ばかりか多くの民主党員をも引き込んだ人気を背に、80年代のレーガン政権がやったことは、まさしく革命的だった。
ソ連に対抗して大規模な軍備増強に乗り出した。ソ連の核ミサイルを撃ち落とす戦略防衛構想を進め、冷戦終結を引き寄せる要因の一つともなった。
国内では「小さな政府」を掲げ、減税と民間活力によるレーガノミクスを進めた。財政と貿易の巨大な赤字を残したことに評価は分かれたものの、この路線がその後のグローバリゼーションとあいまって、今日に至る米国の長い繁栄につながったことは間違いない。
日米関係も変えた。レーガン氏は当時の中曽根首相との「ロン・ヤス」関係をてこに、「運命共同体」と呼ばれるほどの協力態勢をつくりあげた。シーレーン防衛は、日本が軍事的に対ソ封じ込めの一翼を担うことを鮮明にしたものだった。それが、自衛隊の日本領域外の活動に道を開くことになる。
日本側は、軍事面での協力に貿易摩擦の緩和剤としての狙いも込めていた。西側の盟主である米国に寄り添っていれば、安全保障でも経済でも実利がある。そう強く意識されるようになったのは、レーガン時代からだろう。そうした意識は、ブッシュ大統領との蜜月を何より大事にする小泉首相にも生きている。
レーガン氏を師と仰ぐブッシュ氏は「強い米国」を掲げ、アフガニスタンやイラクで戦争をしてきた。だが、今日の世界が師の時代から大きく変容していることを軽んじてはいないか。
レーガン氏の時代、同盟の結束と強い盟主の存在は西側諸国が望むところだった。冷戦は危険ではあったが、今日の民族紛争や大量破壊兵器の拡散、国際テロよりもずっと管理しやすかった。
いま、唯一の超大国となった米国の身勝手な振る舞いに、欧州同盟国は眉をひそめる。イラク戦争をめぐって露呈した欧州との亀裂も、表面上は取りつくろえても、本当の融和は簡単ではない。
富める国と貧しい国の格差も広がり、戦争と減税が米国の財政赤字を膨らませる恐れを、米国民自身も感じている。
世界が米国に期待しているのは、腕力を振り回すことではない。その影響力を生かして、テロ対策や南北問題、地球環境の保全、大量破壊兵器の拡散防止などで国際協調の核となることだ。
日米も「ロン・ヤス」以来の流れに身を置いたままでいいか。世界によかれと考えるなら、米国への苦言も恐れない。それが同盟国に求められる時代だ。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040608.html