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社説
06月07日付
■ブッシュ訪欧――解放と占領のはざまで
解放者と、占領者と。
米国の二つの顔が交錯する週末となった。
米国のブッシュ大統領はイタリアに続いてフランスを訪問、米英などの連合国軍のノルマンディー上陸60周年の記念式典に臨んだ。
ナチス・ドイツのフランス占領を終わらせ、連合国側の勝利を決定づける節目となった作戦だ。多くの米国の若者が犠牲となった。「解放者」米国を象徴する歴史の一こまだ。
米国はイラクにも「解放者」のつもりで侵攻したが、いま抑圧的な「占領者」とみなされ、大きな困難に直面している。情勢安定の道は険しく、欧州の協力を取り付ける必要に迫られている。ブッシュ大統領はノルマンディーの輝かしい過去を頼みにしたかったに違いない。
しかし、欧州は米国の二つの顔を見分けている。上陸記念日の前日、パリでブッシュ大統領と会談したシラク仏大統領は、米国の歴史的な役割に「フランスは忘れない」と謝意を表したが、イラク情勢については「かなり危うい」と指摘し、今月末の主権移譲が実質を伴い、本当に占領体制を終わらせるものでなければならない、と改めてクギをさした。
ファビウス元仏首相は、米シカゴ大学のシンポジウムで、「(ブッシュ氏は)フランス人が米国を好ましいと考える理由のまさに正反対の人物なのだ」とこきおろした。際立った意見ではなく、フランスでの対米観を要約している。
ブッシュ政権は、イラクへの主権移譲後もその影響力を維持することに固執している。批判を受けてますます意固地になっているのか、それとも、唯一の超大国になったために自らを相対化する視点を失ってしまったのだろうか。
折もおり、レーガン元米大統領が亡くなった。「強いアメリカ」を説き、ソ連を「悪の帝国」と呼んだ指導者だ。
ソ連でゴルバチョフ書記長が登場したことも奏功して、冷戦終結に決定的な役割を果たしたが、カリブ海の小国グレナダに軍事侵攻したり、ユネスコを脱退したりと、力を信奉する単独行動主義者でもあった。
そのレーガン氏に私淑したブッシュ氏がいま、テロとの戦いや中東政策を力で押し切ろうとしている。
イラク問題は米国問題でもある。欧州の指導者の多くはそう見る。
欧州連合(EU)が憲法すら共有しようと動き出した理由のひとつは、米国以外に強力な「極」が必要で、そのために結束をより強めなければならない、という判断だ。欧州の結束は米国の振る舞いに促された面もあるのだ。
ノルマンディーには、敵国だったドイツからもシュレーダー首相が初めて招かれた。仏独の和解の完成である。
欧州統合の柱である両国はイラク問題をめぐって「米国への異議」で足並みをそろえている。ブッシュ大統領は、今度の旅で、欧州という鏡に映る自分を見つめることができただろうか。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040607.html