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イラク自衛隊:多国籍軍参加で日米同盟強化 指揮権が課題
政府が多国籍軍に自衛隊を参加させる方針を固めた背景には、日米同盟の強化に向けて実績を積み重ねようという政治的、軍事的な狙いがある。現在、有志連合の一員として行われている自衛隊の活動内容は、多国籍軍になっても変わることはないが、日米が国連決議に基づく多国籍軍という「同じ傘」に入ることで、日本はより積極的に米国の対イラク政策を後押しすることになるためだ。ただし、独自の指揮権が確保されるかどうかをめぐっては灰色の領域も残っている。
多国籍軍への参加をめぐって、政府は「武力の行使自体を目的、任務とする多国籍軍に参加することは憲法上許されない」(01年12月、津野修内閣法制局長官)との解釈を示してきた。憲法9条が海外での武力行使を禁じているためだ。
しかし、秋山收内閣法制局長官は1日の参院イラク武力攻撃事態特別委員会で「武力行使を行わず、活動が他国の武力の行使と一体化しない場合には、武力行使を伴う任務、伴わない任務の両方が与えられる多国籍軍に参加することは憲法上問題がない」と答弁。従来の見解と矛盾が生じないよう、人道復興支援などの任務に限定すれば参加は可能と論理的に整理したものだった。
すでに外務省はこうした法制局見解の条件を満たす国連安保理決議の内容になるよう、外交的な働きかけを続けていた。秋山長官の答弁は新決議案に日本が期待する内容が盛り込まれる見通しが立ったことを受けたものでもあるようだ。
一方で憲法に抵触しない参加形態にするには、多国籍軍に入っても、自衛隊が独自の指揮権を確保することが必要になる。防衛庁の守屋武昌事務次官は3日の記者会見で、多国籍軍へ参加する場合の条件として、(1)統合司令部の指揮下に入らない(2)武力行使を伴わない任務がある(3)イラク復興特別措置法の範囲内の活動(4)武力行使をしない−−の四つを示した。
政府内では多国籍軍の司令部の役割を「並列した立場にある参加各国の統制」と解釈することなどが検討されており、防衛庁幹部は日本独自の判断による撤退も可能と主張する。しかし、それをどのように担保するかは依然、不透明だ。【中川佳昭、南恵太】
毎日新聞 2004年6月7日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20040607k0000m010113000c.html